中国の不動産バブルはどれだけ持ちこたえることができるのか?

【大紀元4月16日】中国の不動産市場は、この数週間、中国経済に関する最もホットな話題となっている。中共最高の喉・舌である新華社は、4月3日に“評論員文章”を発表した。そのタイトルは《マクロ調整を強化し、住宅価格を安定させる》で、かりに価格をコントロールできなくなった場合、“関連する責任者の責任を追及すべきである”ことが述べられていた。これ以前の3月26日、中国国務院は既に、不動産の危機に関する最新の警告を発し、各級政府が必要な措置をとり、不動産価格を安定させることを求めていた。こうした措置は、急激な価格上昇を抑制する“恵み”を意図したものであったが、かえって民衆の疑念を惹起する結果となった。怒り心頭の民衆と明らかな対照をなすのが、笑みのこぼれる銀行家と泰然と構える不動産事業者である。北京、西安、深せん、広州等の地においては、不動産価格は依然として堅調な上昇を続けている。

全国の不動産市場のうち、上海市場は再び大衆の注目の的となった。その原因は三つある。第一に、上海市場は既に全国不動産市場をリードする市場となっており、また全国の市況をはかるバロメータとなっているが、上海市場は、既に1997年に不動産バブルが崩壊した香港の様相を呈している。すなわち、住宅価格が上昇の一途をたどる一方で、賃貸料金が下落を続けている。第二に、上海の不動産価格は現地住民の負担能力を大きく上回る一方で、外資が不断に流入して上海の物件を購入している。第三に、上海市政府は、不動産投資を抑制するため、住宅のキャピタルゲインに対する5.5%の取引税の課税、住宅購入時における頭金の割合の引き上げといった新たな措置を実施しているが、不動産ブームは依然として燻燃状態にある。

歪んだ上海不動産市場

上海の住宅価格が高騰する一方で賃貸収益率が下落を続ける背景は、長年にわたって数サイクルの投機が展開されたことにより、需給関係に深刻な歪みが生じたことである。

上海市場の今回のサイクルは、1998年に始まった。1998年の平均住宅販売価格は3026元/㎡であったが、2004年末の価格は5500元/㎡に達していた。このうち、分譲住宅の平均価格は8124元で、静安、長寧、徐匯、虹口等6つの中心地区の平均価格は10000元/㎡を超えている。

資料によると、2003年と2004年の2年間、上海市の住宅価格の上昇率は、ともに30%を超えている。

こうした住宅価格の上昇プロセスにおいて、市場の需給、政府の推進策及び投機者による頻繁な価格の吊り上げが重要な役割を果たしている。上海市不動産資源管理局は、6つの特定案件について物件を差し押さえた。その容疑は、ディベロッパーが架空の購買者を仕立てて偽りの契約にサインし、住宅価格を吊り上げていたことである。これはモノを左手から右手に移す遊びのようなもので、立て続けに契約のサイン→取り消しを繰り返す中で、価格を徐々に吊り上げていくのである。あるプロジェクトでは、合計で16の物件があったが、これら物件に係る契約の取り消しが累計で96回も行われ、契約取り消し率は600%に達した。また、契約における家主の名前が“李某”、“凌某”、“関某”、ひいてはK、E、Fといったアルファベットの記載しかなかった。これまで、ディベロッパーの様々な集会で話題に上っていたのは“売り惜しみ”の話題であった。上海市政府やメディアも、上海住宅市場は平穏かつ健全に発展しているともてはやしてきた

不動産市場をバブル化を占う重要な指標は二つある。一つが当地の住宅価格と家計年収の比率であり、二つ目が、毎月の借り入れコストと賃貸収入の比率である。

国際的に用いられている住宅価格と収入の比率は、現在の価格が合理的であるかを調べるのに有効である。上海市の不動産を例にとると、当該価格-収入比は世界最高になる。中国社会科学院の研究員の統計によると、上海における80㎡の住宅価格は、一般家庭の可処分収入の27.5倍となっている。一方、他国の数字を見ると、ドイツの場合は11.4:1,イギリスは10.3:1、フランスは7.7:1、最も豊かなアメリカは6.4:1、しばしば非難される日本は11:1となっている。

ある分析によると、1997年に香港の不動産バブルが爆発する前、毎月の借り入れコストと家賃の比率は2.2:1であった。現在、中国四大都市のうち3つの都市の比率は1.3:1であるが、上海は2:1の水準にまで達している。この数字が意味するところは、上海の不動産が危険な段階に達しているということである。

ポジティブ論者とネガティブ論者の大激論

上海不動産のバブル化をめぐり、これまで、ポジティブ論者とネガティブ論者との間で激論が交わされてきたが、その議論は百年一日の如く二極化の様相を呈している。市場が引き続きポジティブと見る者は、“春天派”と呼ばれている。このグループの多くは、不動産業の利益が絡む政府部門の官僚、不動産ディベロッパー、仲介業者、不動産投資家及び上海現地のメディアである。彼らのほとんどは、上海の住宅価格は、あと約15%~20%上昇すると考えている。一方、この対局にあって市場をネガティブと見なす者は“冬天派”と呼ばれている。このグループの多くは上海以外の新聞メディア、投資銀行や金融業界の職員、社会科学院系の不動産研究者である。彼らは、悲観的に、上海の住宅価格は今年・来年にかけて20%~30%下落すると考えている。

今年以降、上海現地の“主流”となっている考え方は次のとおりである:現在の上海不動産は、バブル形成の過程にある。その含意は、現在の市場は、高度のバブル化とは一段離れた位置にあり、なおも価格上昇の余地があるということである。

しかし、上海不動産市場に携わっている者は、皆“春天派”と“冬天派”の中間的立場をとり、上海市場における“バブルの法則”を導出している:第一に、上海市場のバブルが膨張する時間の長さ、バブルの硬さは一般の想像をはるかに超えている。第二に、バブルが爆発するその日が来た時、ただ自分が最後の持ち手にならないようにするしかない。

実際のところ、問題は一つしかない:不動産のバトンリレーの参加者がレースを継続してバトンを渡し続けることができるのか? その分析に際しては、次のことを調べる必要がある:上海住宅市場の主な買い手は誰なのか?また、彼らが不動産を購入する動機は何か?

国際的な投機家が足を踏み入れる

上海現地では、“上海は全国人民、ひいては全世界の人民の上海である”とよく言われる。これは、他国を含む全国の富豪が上海を訪れて投機を仕掛け、住宅価格の高騰をもたらしている状況を楽観的に言い表したものである。しかし、ここ数ヶ月においては、新たな言い方が上海で流行している:“2004年以後、上海の不動産市場は外国人のものになっている”。

2002年より、上海の不動産仲介会社が接触する外国人顧客の数が徐々に増え始めた。上海の住宅価格が虹の懸かるような勢いで上昇する過程において、上海の物件があるところ、全国、ひいては全世界がやってきては飲み込もうとする爆発的な局面を迎えた。まずは温州、香港、台湾、シンガポール、韓国の不動産投機団が進出し、次いで国際的不動産投機ファンドが相次いで上海へと進軍した。そして、上海不動産の盛大な宴は高潮期を迎えた。

中国国内における“春天派”“冬天派”の上海住宅市場をめぐる議論がいかに激しくとも、海外の購入者から見れば、上海市場はかつてない“強気相場”であり、市場に参入しさえすれば、すぐさま利益をむさぼることができた。2004年11月以前は、投機の目的に二重性があった。その一つは、人民元切り上げに対する期待であった。その後、上海の住宅価格が日進月歩で上昇したことにより、外資にとって人民元切り上げに対する期待は二の次となり、今度は上海中心地区の住宅価格が持続的に上昇することを期待するようになった。

冒険ファンドの新たな楽園

国際不動産ファンドは、2003年より上海不動産市場に注目し始めた。それ以前は、ずっと様子見の状態であった。2003年7月、モルガンスタンレーは上海廬湾区の“錦麟天地雅苑”プロジェクトに投資し、短期間のうちに予想した収益率を30%上回る収益をあげた。この成功例に外資ファンド勢は大いに興奮し、大量の直接投資案件がひしめき合うように進出してきた。

その後、最初に甘い汁を吸った海外のファンド会社はより大きな金脈-不良債権処理における土地資産(土地使用権)であった。この処理には、スキルと実力が求められた。2003年末、華融資産管理会社は、モルガンスタンレーとゴールドマン・サックスに対して驚異的な規模の土地不良資産を譲渡した。その後、スイス銀行、リーマンブラザーズ、シティバンクグループを含む海外ファンドが前後してこうした売買に参入した。

中国不動産市場への影響から見て、海外の購買者と当時の温州不動産投機団が異なっているというわけでは決してない。彼らの目的は、不動産に投資するのではなく、“投機”によって利益を得ることであった。こうした投機によって価格が爆発的に上昇したほか、不動産市場が急速にバブル化していった。

ファンドの運用周期は一般に5年であるため、不動産ファンドのほとんどは、素早く資金を入れて素早く利益を獲得することを望んでいた。このため、直接投資であれ不良資産の処理であれ、ファンドマネージャは皆住宅市場に注目していた。2004年末になると、これらの海外ファンドはテナントビル・オフィスビルを評価し始めた。彼らは、5年前後の期間のうちに、保有する資産を国内で販売するか、他の海外ファンドに転売することについて自信を持っていた。

ING中国地区資産管理チーフマネージャーの江浩思は、中国メディアの取材に対し、かなり高い収益率が外資にとって極めて大きな誘惑になっていることを認めた。アメリカにおける不動産ファンドの平均収益率は6.7%であり、日本、シンガポールは4%であるが、上海においては、年間20%~50%の純収益率を獲得することができる。

しかし、これらの外資は、上海の不動産を長期間保有することは全く考えていない。アメリカ・ロックフェラーグループの傘下であるクッシュマン&ウェイクフィールドのマネージャーは次のように評価している:“上海不動産市場の95%が投機的である”。投機に参加する海外ファンドの多くはオフショア投資会社の身分で参加しており、直接ファンドの名義を使って中国で登記をしているものは全く存在しない。その意味するところは、投資がつまずいた場合、流入した資金が速やかに撤退するということである。

現在、どれだけの外資が中国の不動産への投機を行っているのかについては、明確には分からない。国家統計局の数字によると、2004年において中国不動産業に流入した外資直接投資のおおよその資金規模は次のとおりである:契約上の利用金額は134.9億ドル、実際の使用金額は59.5億ドルである。前者の伸びは48.08%で、後者の伸びは13.55%である。しかし、この統計は全てを網羅しているわけではなく、漏れが存在する。

高い住宅価格に対する大きな懸念

かくも高額な収益が意味するところは、不動産業が3~5年の間に20年分の収益を前借りしたということである。事実上、上海もまた、このバブルを今後長きに渡って背負い続けることはできない。国際的な不動産の周期に関する研究によると、その周期は最長で7~8年で、うち5年間が発展期で、2年間が低迷期である。今回のサイクルにおいて、上海の成長は、既に7年を超えている。中国経済のソフト・ランディング、成長の緩和という背景の下で、上海の不動産は必ず周期的な調整を迎えることになる。冬天派は、この理論に基づき、次のように指摘している:上海の住宅価格は今年・来年にかけて下落し、その下げ幅は20%~30%となる。

不動産の“一枝独秀”的な成長は多くの問題をもたらしている。第一に、高地価がビジネスの障壁となり、上海のその他産業の発展を阻害している。住宅価格の高騰等ビジネスのコストが原因で、昨年には100社余りの企業が浦東から撤退し、蘇州に移っていった。これによって“人材の高地、資金の高地、ビジネスの盆地を築く”という目標を実現する術は無くなった。第二に、不動産は不動産であってこれを外地あるいは海外に運ぶことはできない。このため、不動産の価値は、全て当地の購買力を基礎としている。現地人の購買力が価格に追いつけないならば、それは住宅価格におけるバブルの部分が極めて大きいことを意味している。

不動産の将来利得の前借り

上海における不動産業の状況は、中国の不動産を観察するためのショーウィンドウの一つにすぎない。この20年余りにおける中国経済の発展において、不動産業の功績は最も大きかった。中国不動産における利益獲得ゲームにおいては、政府の手中にある土地の価値が地方の財政収入、都市の発展水準や官僚の成績を決める。ディベロッパーは“土地の稀少性論”を価格上昇の理論的基礎とした。政府が不動産市場において合従連衡を画策し、国際遊休資本が機に乗じて流入する中で、各地において不動産の盛大な宴が次々と発生し、ディベロッパーや投機人は不動産の価値上昇によってかなりの利益を得た。政府は、不動産業の猛烈な発展を通じて巨大な恩恵を受けた。江蘇、浙江、上海の3地方の財政収入のうち、不動産業と建設業(関連産業を除く)の占める割合は、ともに30%前後であった。最近における研究者の指摘によると、2003年における北京市の不動産投資は1202億元に達し、社会総投資の56%を占めている。

一体どれだけの人がメリットを享受したのか?これは次の2つの指標を見れば分かる。一つが、中国の富豪トップ40の大多数が不動産業に携わっていること、二つ目が、大きな腐敗事件の主犯の多くが土地使用権の売却と関係があるということである。残された問題は、こうした不均衡な発展をしている不動産業が中国に何をもたらすかということである。

地租(土地使用料)は、全社会が創造する剰余価値の一形態である。社会における総生産物の価値は、地租、利子、税収、利潤等4つの部分で構成される。今回の新たな囲い込み運動の中で、中国の各級政府は、土地使用権の売却を通じ、50~70年間の使用料に相当する一過性の収入を獲得した。この異常な利潤は、各級政府が前借りをして国民収入を上回るインフラ建設を行うことを促進した。これこそが、中国における都市建設ブームがこの数年間衰えていない原因である。この手法のもう一つの結果として、政府が多額の地租収入を徴収することによって利子・利潤を浸食し、企業の経営コストを引き上げ(地価の上昇と不動産価値の上昇)、企業の生存と発展に深刻な影響を及ぼしている。

金融機関の高リスク

中国の政府機関は年を追う毎に膨張しており、財政収入の大部分の来源は土地使用権の払い下げである。政府が3~5年のうちに、50年~70年分の土地使用料収入を使い果たすことで、都市インフラの建設に投入される資金が、必然的に、経済成長によってもたらされる資金量を大きく上回ることになる。これこそが、中国の経済構造の不均衡、銀行の不良債権の増加、経済におけるバブル形成の重要な原因である。

不動産投機のフローの背後で、巨額の銀行融資に係るリスクが絶えず発生している。2004年を例にとると、上海における新規融資の76%が不動産業に流れている。正常な状況において、銀行融資は、合理的な産業別ポートフォリオに基づいて実行されるべきである。こうした中国の不均衡な融資構造は、銀行業の安全にとって非常に大きな脅威となっている。人民銀行上海支店は警告を発し、不動産市場のリスクが銀行の融資へと移行している可能性を指摘した。

銀行と不動産業の不正常な融資関係の原因は、中国の国有銀行体制である。現在、中国の商業銀行は不動産の発展を支える上で巨大な影響を及ぼすとともに、その発展をコントロールする責任を担っている。現状から見るに、中国の商業銀行は、不動産業を支援する際には骨身を惜しまないが、抑制すべき時になるとかえって妙案をひねり出すことができない。こうした状況を生む根本的な原因は、商業銀行における長期的利益と短期的利益のトレードオフである。

住宅ローンはこれまで、銀行にとっての優良資産であり、全力で支援していくべきものと見なされてきたが、それには二つの理由がある。第一に、中国の銀行システムは、依然として規模の拡大の時代にあり、各銀行の本店が支店に下達する目標(ノルマ)が常軌を逸しており、かつこの目標が官僚の地位と直接紐づけられてきた。第二に、銀行の幹部が任期制であり、無期限の責任追及をすることができないが、不動産向け融資のリスクは、一般に若干の年月を経ないと顕在化しない。したがって、銀行の上層部も、こうした融資構造に問題があることを知ってはいるが、本人の任期中に問題が発覚さえしなければ、誰もが見て見ぬふりをするのである。結局、運の悪い少数の官僚だけがそのツケを払って責任をとるのである。

中国経済の“繁栄”は、実のところ、不動産業と政府財政による大量の公共プロジェクトの上に成り立っている。中国政府が実施している“住宅価格の安定”のための施策は、単に“バブル”を安定させ、これを長期的に持続させ、短期の内に破裂させないための施策にすぎない。しかし、中国経済は、遠い将来の不動産業の利潤を前借りして消費してしまった。その後になって、代償を負担せずして不動産のソフト・ランディング(経済のソフト・ランディングを含む)をしたいと考えるのは、単なる独りよがりの考えにすぎない。

《TAIWAN NEWS 財政文化週刊》、2005年4月14日(第181期)

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