政治動員が効かず 中国の民間消費は理性回帰

2026/02/23 更新: 2026/02/23

中国共産党(中共)は長年にわたり、民族主義的な感情を利用して国民を煽動し、社会に広がる不満を外部に転嫁してきた。以前、こうした感情は街頭抗議や外国製品のボイコットなどにつながった。しかし、現在では日中関係が冷え込んでいるにもかかわらず、市場データと実際の消費行動は、中国の民間消費における実用主義が当局の政治的動員を上回りつつあることを示している。

昨年11月、高市早苗首相の国会答弁後、日中関係は急速に冷え込んだ。その後、中共は貿易制限を実施し、中国人観光客に対し日本への渡航を控えるよう注意喚起した。統計によると、昨年12月の中国から日本への渡航者数は約33万人で、前年比約45%の減少となった。しかし、このボイコットの動きは長続きしなかった。宿泊管理プラットフォーム「トリプラ」の集計では、2月15日から23日までの中国人による日本のホテル予約件数は、昨年の旧正月期間(1月28日〜2月4日)に比べて57%増加した。

飲食や文化消費の分野でも、日本ブランドの成長は続いている。AP通信によると、回転寿司チェーンのスシローは2021年に中国市場へ進出して以来、拡大をし続けており、昨年12月に上海で開店した新店舗には多くの顧客が列に並び、活況を呈した。

北京の店舗で30分以上待った23歳の大学生イディス・シャオさんは、「味がとても良く、食材の品質にも信頼が持てる」と語った。

シャオさんは、日本の漫画「ちいかわ」のファンでもあります。中日関係は自身の消費習慣にはほとんど影響しないとし、「それは指導者たちの発言にすぎない。国民の態度の変化を意味するものではない」と述べた。

米中関係でも、関税や台湾問題などで摩擦が続いていますが、ディズニー映画『ズートピア2』は中国国内で44億元(約920億円)を超える興行収入を記録し、ハリウッド映画として中国史上最高の興行となった。

ファッション分野においても、米ブランドのラルフ・ローレンは中国での売上成長率が欧州および北米市場を上回っている。

市場調査会社「中国市場研究グループ」の創業者兼マネージングディレクターであるレイン氏は、「中国人はもはや中国ブランドだからという理由だけで購入することはなくなっている」と分析している。

米国経済学者、黃大衛氏も、都市の中間層や若年層の消費の核にあるのは、機能性とコストパフォーマンスであり、民族感情ではないと指摘している。市場のフィードバックが蓄積し、経済の減速や消費格差の拡大が進む中、民族主義的なスローガンを実際の購買力に結びつけることは難しくなっているという。

米経済学者の黃大衛氏は、「いわゆる民族ブランドは登場当初こそ民族主義を大いに利用したが、品質と価格のバランスが極めて悪く、たとえば小米やファーウェイといった企業は批判を受け入れず、批判すればアカウント削除や投稿封鎖、場合によっては逮捕されることさえある。このような状況は、消費者にむしろ国産ブランドを買うことへの抵抗感や不信感を生じさせている。経済が深刻に低迷し、将来が不透明な中で愛国消費を掲げるのは、もはや時代にそぐわない」と指摘した。

2012年の尖閣諸島をめぐる対立の際には、中国各地で反日デモが発生した。日本車が破壊され、一部の日本料理店も被害を受けた。2021年には新疆綿問題をめぐり、ナイキなど西側ブランドに対する不買の動きも起きた。しかし、こうした事件が民間消費に及ぼす影響は年々薄れつつある。

台湾華人民主書院協会の曾建元理事は、「かつて中国では社会的統制が比較的緩く、人々は民族的感情を通じて街頭で主張することができ、当局も黙認していた」と分析している。しかし現在は監視体制が厳格化し、許可を得ない抗議行動は処罰の対象となるため、民衆は自然と慎重になっているという。

台湾華人民主書院理事の曾建元氏は「許可なく街頭で抗議したり、店舗を破壊したりすれば、必ず処分を受ける。もし当局が処分しないのであれば、それは当局が動員・操作していることを裏付けることになる。人々は、当局に合わせて動いても何の意味もないと感じている。むしろ結局は責任を押し付けられる存在になりかねない」と指摘した。

米サウスカロライナ大学エイケン校の謝田教授は、中国の中間層や若者の消費判断が商品の品質と価値へと回帰していると指摘した。経済の低迷が一因であるものの、それ以上に過去10年で中共の党文化が個人の思考に及ぼす影響が大幅に弱まったことが大きいということだ。

米国サウスカロライナ大学エイケン校 謝田教授は、「過去10年ほどは、まるで見えざる手が、中共の赤いプロパガンダを少しずつ消し去っているようだ。党文化の宣伝が効果を失いつつあるなかで、人々は本性を表し、高品質で使いやすい商品を選ぶようになる。特に自分でお金を使う際、人々は中共の宣伝や虚構の愛国主義に動かされて商品を選ぶことはない」と述べた。

民間の理性と市場の力が静かに中国の消費構造を変えつつある。これはすなわち、中共のプロパガンダがもはや人々の日常生活を思い通りに左右できなくなっているという現実を示している。

 

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