不良債権比率の下落に反してリスクは増大 国有銀行改革は困難を極める

【大紀元3月18日】(大紀元記者 謝倫 総合報道)山積する不良債権、自己資本比率の低下に直面し、中国国有銀行は上場を通じて資金を吸い上げ、困難から脱却する計画をたてている。国内A株市場が疲弊していることから、国有銀行は先を争うように海外資本市場への上場に狙いを定めている。

上場する銀行は不良債権比率10%を上回ってはならず、自己資本資本比率8%を下回ってはならないという国際ルールに鑑み、国有銀行は近年、あらゆる手立てで、不良債権を短期間の内に(見かけ上)大幅に下げた。国有銀行の日益に綺麗になる財務諸表を見て、銀行のこうした不良債権の処理の手法は、銀行の質を実質的に全く高めないばかりか、将来のリスクをますます増大させ、金融危機を引き起こすのではないかと憂うる専門家もいる。

不良債権の驚異的な下落速度

近年、4大国有銀行は威勢の好い計画を策定し、不良債権比率の削減を業務の重点としている。その掛け声と共に不良債権は急激に下落しており、その速さには舌を巻くものがあった。

中国銀行は、2004年に不良債権比率が11.16%下落した。2003年末に16. 28%であったものが、2004年末には5.12%となった。

中国建設銀行は、6ヶ月の期間の間に、不良債権比率が2003年末の9%以上から、2004年上半期の3.08%へと下落した。

中国工商銀行は、2003年末の不良債権比率が21.24%であったが、審査による帳消し、転売等の方法を用い、不良債権比率を2004年末の19.1%前後へと、一気に下落させた。

以上の数字から明らかなことは、国有銀行の不良債権比率の減少は、そのほとんどが不良資産の稀釈、切離し、帳消し(原語:核銷=審査に基づく帳消し。以下、帳消し)といったルートに依存しており、銀行経営・管理の実質的な改善が全くなされていないということである。

不良債権減少ルートその1-稀釈

中国の《財経時報》の報道によると、国有銀行はみな、貸出の総額を引き上げることで相対的に不良債権比率を減少させている。しかし、実質的には、新たな不良債権が継続的に発生しており、多くの国有銀行が同じ手法を用いることで、銀行間に非合理的な数値の変化が生じ、かつ銀行の長期的な収益に影響を与えている。

報道によると、国有銀行は多額の手形割引と貸し出しによって不良債権比率の分母である貸出額を増加させている。顧客を引き付け、できるだけ早く上場するため、各銀行は割引率の低下を惜しまず、経済効率を顧みない。

*(訳注)原文は「手形発行」になっていますが、下記URLを参考に「手形割引」に改めました。

http://business.sohu.com/29/36/article211273629.shtml

また、政府保証のある長期的なインフラ建設プロジェクトについて、そのプロジェクトが儲かろうが儲かるまいが、その融資には国有銀行が有難がって飛びついてくる。なぜなら、この類の融資は、貸出額を増加させるだけでなく、融資期間が長いことから、短期的には不良債権が発生しないため、現時点の不良債権比率の減少に資するからである。

報道では、上海リニア・プロジェクトを例として取り上げられていた。そこである専門家が計算の後に断定したのは、例えリニアを24時間運転し、かつ客が満員でも、元本を回収するのは困難であるということであった。しかし、それでも各銀行は殺到して融資をするのである。

昨年、国有銀行は劣後債を大規模に発行した。ウオールストリートジャーナルのアナリストによると、中国銀行は国有以外の銀行が上記劣後債を購入することを認めたが、これは国際的な慣例に合致しない。なぜなら、国際ルール上の認識では、銀行が他の銀行の劣後債を保有することは、自身のバランスシートを傷つけてしまう可能性があるからである。彼の見解によると、こうした措置は、国有銀行は、資本金を補充するために、如何なる代価を支払うことをも惜しんでいないことを示している。

*(訳注)劣後債:原語は次級債券

不良債権減少ルートその2 - 切離しと帳消し

国有商業銀行の株式会社は、会社の債務を切り離してグループ持株会社(原語:集団総公司、直訳はグループ本社)に移し、株式会社の不良債権比率を上場できるレベルにまで下げようとする。また、四大国有銀行のグループ持株会社は、同様にして不良債権を切り離して国家資産管理会社に移す。不良債権は実質的に消滅しておらず、単に移転されたにすぎない。人民網の慧豊コラムは最近、こうしたやり方の隠れた弊害は極めて大きいと警告した。なぜなら、不良債権が事実上全く消滅しておらず、被るべき損失は、最終的に国民全体で引き受けなければならないからである。さらに、グループが株式会社のコントロール権を掌握し、株式会社はその関係を逃れられなくなる。作者によると、これがおそらく、多くの国有企業が上場を果たした後に大株主に資金を侵害され、利益を剥奪される原因となっている。

このほか、1999年に財政部が4つの国家資産管理会社を設立し、四大国有銀行から切り離した1.4兆元の不良債権を引き受けた。その1年前の1998年、財政部は2700億元の特別国債を発行し、四大国有商業銀行に資本注入を行った。2003年、中国政府は外貨準備を用いて中国銀行と中国建設銀行に450億ドルの資本注入を行った。両銀行に注入した資本金は、不良債権の損失の帳消しに充てられた。ここ数年の中で四大国有銀行が帳消しにした損失は2兆元にも及ぶ。

応急措置にして抜本措置にあらず 銀行の不良債権は金融のブラックホールに

金融の専門家 呉敬漣は、2004年の国際金融年会の発言において次のように指摘した。国有企業の不良債権比率の減少は、半分以上が貸出金額の大幅な増加によるものであり、新規融資のうち、長期融資の比重増加のペースが極めて速く、そのうちどれだけが不良債権になるのかを判断するのは困難である。2年後、中国は外資系の銀行に人民元業務の全てを開放する。その時新規の貯蓄が外資系銀行に分散していけば、国内の銀行は、不良債権を稀釈する手段を持つことができず、金融危機を誘発する可能性が高まる。

中国経営報が今年始めの報道で示したのは、転売・帳消しといった要因を除外すると、いくつかの国有銀行について、不良債権は増加こそすれ、全く減少していなかったということであった。金融界の業界関係者の指摘によると、マクロ調整以後、一部の大型投資プロジェクトが整理されており、これらのプロジェクトが見合わせまたは取消になれば、新たな不良債権を形成することになる。銀行の不良債権は表面的な現象に過ぎない。不良債権が高止まりする制度的要因が解決されなければ、不良債権の切離しを繰り返しても何の役にも立たないばかりか、かえって金融のブラックホールになりかねない。

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