何清漣:外資は中国に何をもたらしたか?
【大紀元日本6月21日】1979年に中国が対外開放政策を実施して以来、26年が経過した。2004年の国連貿易・経済発展会議において発表された「世界投資報告」が明らかにしたところによると、中国は既に米国を超え、海外からの直接投資が最も多い国家となっている。この26年間、外資は中国経済の発展に何をもたらしたのか?新唐人テレビ局中国語放送番組「透視中国」は、5月27日に、米国在住の著名な中国経済学者・何清漣氏を招き、その詳細について話を伺った。以下は、番組から転記した内容である。
(訳注※インタビュー形式で進められるテレビ番組で、林丹が司会を務めた)
林丹(司会):中国と西洋諸国の学者間には、2つの考え方が流行しています。1つが、「外資は中国経済の発展を促進することができ、更には中国の民主化を促進できる」というもの。もう一つが、「外資は中国に対して国際的なゲームのルールに従って物事を行うことを強い、更には中国の腐敗を減少させる」というもの。欧米の一部の財団は、こうした聞こえの良いうたい文句を用い、自国の政府に対して中国への投資を開放し、中国の人権状況を批判しないよう遊説しています。また、かなりの西側の国はそれを元に対中政策を築きました。今日の「透視中国」の「経済広角」のコーナーでは、著名な経済学者である何清漣氏を迎えて、中国社会・政治経済の変化から、外資が中国に対し一体どのような影響をもたらしたのかを議論していきます。
何清漣:外資の影響について、私は2つの角度から評価すべきであると考えています。まず、外資は確かに中国に対してポジティブな影響をもたらしました。中国政府に巨額の税収をもたらし、中国にとって非常に重要な税収の基礎となりました。
また、中国に先進的なマネジメントや技術をもたらし、多くのホワイトカラーは外資を通じて欧米の管理制度に接することができました。
もう一つは、中国人に大量の就業機会を与えました。欧米企業がホワイトカラーのポストの問題を解決する一方、香港、台湾企業は低質労働力のブルーカラーのポストの問題を解決しました。外資企業でホワイトカラーの仕事をしている人は、既に200万人に達しているということです。これは200万世帯の家庭が受益していることに等しく、実際のところ、こうした人々が中国の高消費を支える主要グループを形成しているのです。
この他、こうした海外の投資者は、中国での利益が非常に大きいことから、自国において一つの巨大な親中団体となりました。彼らは、自国の政府に対して中国と良い関係を持つように説得し、その結果、中国政府に対する外交圧力が相当減少しました。
利益VS理念
何清漣:こうして投資が増加するにつれて、外資は、ますます中国の人権や、中国の専制が引き起こす様々な問題に関心を払わなくなっていきました。これは顕著な例ですが、ドイツの専門家に到っては、自国政府に対して中国政府と良好な関係を結び、中国政府を批判しないよう提案までしています。米国の中国に対する態度は、これまで、レッド・チームの考えとブルーチームの考えがありました。ブルーチームの思想は、イデオロギーの違いを強調することで、人権を強調するといったものです。レッド・チームは、こうした違いを無視し、中国と交流して経済的な利益を主張するものです。クリントンの時期はレッド・チームが優勢でした。ブッシュの時期はブルーチームが台頭し始めていますが、イラク問題のため、テロ対策で中国との連合を行わなければならず、中国の支持を得ることが必要となっています。したがって、ブルーチーム勢力の台頭ぶりはそれほどのものではありません。
もう一つは、外国人の贈賄の手法についてですが、これは、我々中国人も思いもよらなかったことです。外資に贈賄の手法とは、移民、グリーンカードの取得であり、腐敗官僚の家族が海外に居住するための便利を提供することで、腐敗官僚に対し、政治退出メカニズムに類するものを提供しました。この退出メカニズムは、中国にとって決して良いことではありません。なぜなら、こうした腐敗官僚が、自分の腐敗行為の負の影響を全く考慮しなくてもよくなるからです。なぜでしょうか?彼らには最後の安全ラインが確保されているため、利益をぎりぎりまで確保した時点で海外に基地があるため、安全に撤退できるからなのです。中国では、以前言われていたように政府と民衆の関係というものには、舟水理論があり、即ち水可載舟、亦可覆舟(水は舟を浮かべることができるが、また舟を覆すこともできる)というものです。すなわち、民衆に対して過酷な掠奪を行えばその報復を受けることになるという理屈です。中国の官僚は、この舟水理論のことを考慮しなくてもよくなっています。なぜなら、政治退出メカニズムがあるからです。このため、彼らは中国人民と共に汚染された政治、生態環境を引き受けなくてもよく、また、彼らの腐敗や政治的な闇のために満身創痍となった中国社会を引き受けなくてもよいのです。
二つの神話の崩壊
何清漣:外資の中国進出について、中国政府はある期待を持っていましたし、中国の知識界はもうひとつの期待を持っていました。中国政府の期待はほぼ満たされたと言ってよいでしょう。なぜなら、外資は中国の経済発展の半分を支えており、GDPへの貢献率は40%に達しています。また、政府の税収の多くもこの貢献に依存しています。
もう一つの期待について言いますと、当時、外資が中国に進出することで、中国経済の自由化が促進され、更には中国政治の民主化を促進するという神話がありました。しかし、この期待は実現しませんでした。以前、私はVOA(Voice Of America)において友人と討論をしました。彼は、外資が大量に進出することによって、少なくとも中国の腐敗が改善されると考えていました。多国籍企業が、中国に対して国際的なゲームの規則に従って振舞うことを強い、やがて腐敗を減少させると彼は述べましたが、私は彼を論駁しました。私が述べたことは、それは正しくなく、事実無根であって、世界各国の経験からして彼の言い分を支持できないということでした。インド、メキシコ、ブラジルといった国々はWTOのメンバーですが、なぜ、多国籍企業はこれらの国に出かけていって彼らの腐敗を改め、これを減少させることができなかったのでしょうか?国際的な経験から言って、これは支持できることではありません。
また、中国自身の経験からもこれは支持できないことでした。中国に進出して来た大量の外資は、中国の腐敗的なゲームのルールを改めず、むしろ中国の制度環境に順応していきました。当時の外資は主として香港・台湾資本であり、全て中国人に握られており、中国人が天性の腐敗的な傾向を持っているからと、彼は説明しましたが、私は同意できませんでした。
今年、非常に面白い文章がありました。その内容は、外資の中国における贈賄の問題でした。文章には数字的根拠が記されており、中国が過去10年に50万件の腐敗案件を調査したところ、そのうち60%が外資企業と関係があったというのです。例えば、フランスの設計士アンドリューは中国国立劇場のプロジェクトを受注しましたが、このプロジェクトは、中国国内でもまた大きな非難を受けました。また、彼の会社の者が、彼を中国で告発しましたが、その容疑は不当な贈賄手段でこのプロジェクトの工程の一部を受注したということでした。
こうした外資企業の贈賄の中で、最も抜きん出ているのが電気通信産業です。特に贈賄が成功したのはモトローラでした。《WHO LOST NEW CHINA》の作者は高級主管でしたが、彼が中国における経験を語る場面で、モトローラの高級主管が彼に対し、モトローラが如何に賄賂を使って市場を開拓していったのかを述べた内容が記されています。贈賄のコストはいくらなのでしょうか?彼らが明らかにした数字によると、契約金額の10%ということでした。
中国は、外資がお金儲けできる天国であるかのようにうまく宣伝することができました。しかし、中国は法律に則った経営者にとっては地獄であり、犯罪的経営者にとっては天国であると言うべきです。中国でお金儲けをしようとする場合、腐敗・贈賄行為をしなければ市場に参入できないのです。
“郷に入りて郷に従う”なのか?それとも “世俗に同調する”なのか?
何清漣:しかし、中国にやって来た外資が、贈賄を通じて初めて中国市場を開拓できるというのは、公の秘密です。この数年間、こうした事例が不断に明らかになっています。ウォルマートは、現地官僚への贈賄に関連したことが暴露されました。その官僚とは、雲南省対外経済貿易合作庁庁長で、彼の妻が彼に代わってウォルマートからの賄賂を受け取ったのです。
本年4月8日、米国電気通信産業の巨頭であるルーセントは高級主管4人を解雇しましたが、彼らに対しては、中国で不適当な贈賄行為を行ったとの指摘がありました。しかし、この事件が発生して以来、中国の新聞の多くが事件に対して次のような疑義を呈しました。ルーセントのこうした行為は、自分の腕を切り落とすようなものである。以後中国で贈賄をするのか?それともしないのか?もししないならば、恐らく市場はない。しかし、贈賄をすれば、高級主管を再度処分しなければならない。これでは、後任の高級主管にとっては勤めようがない。
米国の“反海外腐敗法”に見られるように、賄賂は米国の法律に違反します。欧州の他の国家にも類似した規定があります。しかし、彼らが後に気づいたことは、贈賄行為や“レントシーキング(訳注・特権を利用して、口利き料を取ること)”活動を展開しなければ、競争上、他の企業と比べて不公平な位置に立たされてしまうということであり、彼らは多くのチャンスを逃してしまいました。したがって、最初にこの腐敗の原則を受け入れたのは、日本、韓国といった東南アジアの文化的血縁を持った国家でした。その後、欧米資本は、一部のいわゆる中国通の説得のもと、この原則を次第に認識していったのです。
米国の多国籍企業が最も好んで招聘するタイプの人は、中国に政治的なバックグランドがある留学生、とくに高級幹部の子弟です。彼らこそ、外資企業が最も好んで雇う高級ホワイトカラーなのです。雇用した後、彼らを中国に戻して市場を開拓させます。こうした人々は、第一に、中国の制度環境を知っています。第二に、最も重要なことですが、彼らには広範な人脈関係があります。彼らは、どう人脈を利用して贈賄を行えばよいのか、いかに最小のコストで最大の利潤を上げることができるのかを知っています。こうした贈賄コストは、最終的に企業の製品の利潤の中に転嫁され、最終的には消費者が負担することになります。したがって、企業もまた、中国におけるゲームのルール、すなわち“如欲取之、必先予之”(これを取ろうとするならば、まず先にこれに与えよの意)を理解していました。与える時は私人に与え、取り返す時は公のものから取り返すのです。しかし、このコストは全て私たち消費者の頭上に降りかかってきます。このため、中国の携帯電話の通話料は世界で最も高く、発信者、受信者の双方が通話料を徴収されているのです。したがって、現在に到って、皆がこうしたやり方を学び取っているばかりでなく、良心の呵責もないのです。なぜなら、彼らは、中国人自身もこのルールを認めているのだから、自分がなぜ中国人を変える必要があるのか、と考えているのです。
私がシカゴにいた時、ある中国の留学生がとある事件について話してくれました。彼は、自分が侮辱された思いがしたと言いました。私が理由を聞くと、彼が自動車免許の試験を受けに行き、1回目の試験に失敗したとき、米国人の同級生が彼にこう言いました。中国人は贈賄に長けているでしょ?試験官を買収すればいいでしょ?彼は、同級生が自分を侮辱していると感じたと言いました。私は、それが完全に侮辱であるとも言えないと答えました。なぜなら、中国人は確かに腐敗に長けているとの印象を人に与えています。この点については、中国に投資した外資企業の人が自国に戻って友人に経験を語ることによってこうした印象が形成されていったのです。しかし、これは確かに事実です。したがって、私たちは、自分が侮辱されたと言うよりも、私たちでこうしたイメージを改善していくほうがましです。このような悪事はしないという範を私たちから始めるのです。
現在の外商は大抵中国でのゲーム規則を認め、しかも彼らの贈賄手法は以前の香港、台湾資本よりずっと巧みです。香港、台湾資本はお金を提供したり、台湾、香港への旅行を招待するとか、そのぐらいのものですが、現在の外資は贈賄の手法としては、グリーンカードの提供とか、腐敗官僚の家族が海外へ移民するための便利を提供することなど、贈賄の対象はさらに上層部にあり、多くは中央の部長クラスの高官です。
現在の中国は、党と国が一体になった社会であり、共産党はあらゆる現代の科学技術的手段を、彼らの統治を強化するための手段として使用しています。中国がWTOに加盟した後に国際的なグループが中国政府に対し、国際的な慣例に従って行動することを強い、やがて中国の政治体制、政府の行為のあり方を変えていくと皆が考えていました。しかし、これは既に皆の目に明らかになったことですが、国際的なビジネスグループは、中国政府の行為を変えたわけではありません。彼らが中国でお金儲けをする場合、中国のこうした腐敗的な制度環境に必ず順応すること、つまり、官僚に如何に賄賂を渡すのかということを学び取らなければならないのです。
悪人を助けて悪事を犯す金盾工程(Golden Shield Project)
何清漣:もう一つの神話は、ハイテクネットワークの応用で情報の自由な流通が促され、中国のメディア体制の改革が進み、後に政治が民主化されるというものでしたが、この神話も崩壊しました。当初、中国政府は非常に恐れていました。しかし、後に彼らが発見したことは、こうした投資を利用してネットワークを統制しても全く構わないということでした。このため、彼らは世界最大のファイアウォールの構築を開始しました。また、国際的な大企業と協力し、彼らのソフトウェアを購入して巨大な監視・統制システムを作り上げました。これを、金盾工程(Golden Shield Project)といいます。このシステムは、見ること、聴くこと、考えることが可能です。見ることとは、撮影システムのことです。聴くこととは、音声の統制システムのほか、ネットワーク上の如何なるユーザをもトレースできるということです。現在、ネットで発言した人を全て捜査・逮捕することができるのはなぜでしょうか?それは、このシステムの一部が起動しているからです。このシステムは2008年に完成します。私は、このシステムが完成した後、中国が世界最大の警察国家になると考えています。
このネット監視・統制に必要な技術は何に依拠しているのでしょうか?海外には、米国のシスコ、カナダのサンといった有名なハイテク企業が数多くありますが、これらの多国籍大企業が協力しているのです。彼らは、中国に対して技術を提供しますが、その中で、無料でウィルスや、フィルタリングに関する技術を提供するなどしています。
しかし、中国に来た時点において、外資は中国の経済発展を手助けすると言います。経済の市場化、最終的には、経済の市場化を通じ、中国政治の民主化を促進すると言います。中国を手助けし、政府の統制を受けない情報の流通ルートを構築するのだと言います。しかし、中国に来た後、彼らは皆その約束を破棄します。その結果、彼らは、中国が巨大なネットワークを監視することに手を貸しているのです。中国政府によって購入された技術は、中国の民主の促進ではなく、人民の監視に使用されることを彼らは知っています。ある人は、彼らにこう尋ねました。なぜこのようなことを行う必要があるのか?彼らは威勢よくこう答えました。それは、私たちがやらなくても他の企業がやるのです。こうして、彼らは自らを免罪しようとするのです。
しかし、中国にやって来て、以上のような状況になじめなかった人もいます。例えば、ゴードン・チャンは、「やがて中国の崩壊が始まる」という本を書きました。この他に、ゴッドマンは「WHO LOST NEW CHINA」を書きました。この本には、理想に燃えた典型的な西洋人の青年が、中国にやって来て投資を行った経験が書かれています。彼は、中国経済の市場化、中国政治の民主化を促進しようという理想を抱き、中国人民を手助けしようと考えていました。結果として彼が発見したことは、現実が想像とは全く逆であったということでした。外資は、むしろ中国が民主を鎮圧する手助けをしていたのです。この点について、少数の良識者は反省していますが、大多数は郷に入りて郷に従っていきました。したがって、外資の中国進出が中国経済の自由化、更には中国政治の民主化を促進するという神話は、この点から見て、基本的に崩壊していると私は考えています。
林丹:米国のインターネット研究家であるグリーグ・ウォートンは、2001年に「中国における金盾工程」という研究報告を発表しました。報告において、彼は一部の西側多国籍企業の「不道徳な」行為を批判しました。これらの企業は、その技術を使って中国政府が人民を統制し、自由を封殺する手助けをしたのです。彼らは、意識的、あるいは無意識的に、中国政府による人権侵犯の共犯者となっていたのです。
ウォートンは、北京天安門事件後、中共が西側の監視技術を利用して大捜査・逮捕を行った話を列挙しています。シーメンス、Plesseyが製造し、世界銀行が設置費用を支出したカメラは、1989年の数ヶ月間において、天安門広場で発生したあらゆる出来事を記録しており、これが、「六四(天安門事件)」後の大捜査・逮捕において重要な証拠となりました。ウォートンは警告してこう述べています。「政府はこのことをはっきり認識すべきである。科学技術は中立的でなく、カメレオンのようなもので、環境に従って色を変えていくものなのです」。
最近、非常に有名な企業・シスコが米国で起訴されました。裁判の結果は何であれ、人々に警鐘を鳴らしていることに疑いはありません。いかなる国家の人民の自由に対する危害であれ、必ずや全世界の人民の自由に影響が及ぶものなのです。