何清漣:「中産階級が中国を民主社会に導く」は謬論

【大紀元日本9月7日】中国経済学者・何清漣氏(アメリカ在住)が7月22日、ワシントンナショナル記者クラブで開催されたセミナー「九評の引き起こした脱党ブーム」で、経済発展により生まれた多くの中産階級が、中国を民主社会へ導くであろうという質問に対し、そうした見方は中国共産党が国際世論に対する表向きの発展理論であり、実際には謬論であるという見解を述べた。

何氏は発言の中に、「こうした見方は改革初期から二十年あまりの間ずっと言われてきたことで、自分自身も80年代に大学で学んでいた際にこれを堅く信じていた。しかし、後の数年間に研究と観察をしたところ、この考え方は中国には適用できないことが分かった」と述べた。

同氏の見解によると、中国の中産階級には、他の国々とは3つの異なる特殊性がある。つまり、▽中産階級の財産が政治権力に依存している▽中産階級にグループ意識がなく、独立したイデオロギーを生み出すことができない▽中産階級に公共的事項の取り決めに参加するルートと能力が無い。中産階級が現状の政治権力への依存が続ける限り、彼らには独立に利益を訴求する術がなく、社会公共事項に参加するルートを獲得する術もなく、社会に政治的影響を及ぼすのは更に不可能である、と何氏が主張した。

同氏は3つの方面から当該見解を論証した。

1.政治権力に対する依存

中国中産階級の発生と成長は、政治権力と密接な関係がある。現在、現代化のショーウィンドーである大都市のほか、省都には、ハイテク産業、新興産業がある。それら企業のホワイトカラーたちが政治権力とは若干の距離を持っているが、他の一般階層の中産階級は、基本的に政府の労働者や国有独占企業の成員である。全国的にみて、これらの中産階級は大多数である。一部の技術エリートを含め、これらの中産階級は、一般的には地方政府職員との個人的な結びつきに依存しており、こうすることによって初めて彼らの経営に利潤が保証されるのである。この点については、不動産業を見れば非常に明白である。

2.グループ意識の欠如

「中産階級」という言葉は西側社会のもので、とりわけ社会学の分野においては一つの経済的概念のみならず、政治的及び社会的なインプリケーションをも含んでいる。経済上一定の基準値を超えることが必要となるが、これは指標の一つにすぎず、中産階級にはグループ意識が必要となる。しかし、権力に対する依存のため、中国の中産階級は独立したイデオロギーを作り出すことができず、グループ意識もない。彼らは、訴求すべき共同利益が何であるのかが分からないのである。

3.公共事項に参加するルート及び能力の欠如

中共政府は、中産階級にいかなる公共事項への参加ルートも与えていない。彼らは自らの組織を作ることができず、こうした組織を通じて社会公共的事項について発言することはできない。

香港の中産階級が基本法23条に反対した時、弁護士組合、教職員組合、新聞業職員の組合等が存在したが、これらはみな中産階級の組織であった。組合を含めて誰もが発言でき、NGOがこうした人々をまとめ、彼らのグループの訴求利益を表明したのである。しかし、香港の中産階級とは異なり、中国の中産階級には、こうしたルート及び能力は明らかに存在しない。

中共による《社団法》の改正後、結社の自由が更に厳禁となった。ルート、能力、またはグループ意識が欠如の中産階級は、結社する願望さえも持っていない。

何清漣氏が最後のまとめとして述べたところによると、グループ意識と社会公共的事項への参加能力の有無は、ある階層に関する考察の不可欠な要素である。単に経済上の収入が一定の水準に達していてもグループ意識の覚醒がなければ、中国の中産階級意識が成熟したとはいえない。

(記者・鹿霜、郭若)

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