失踪した中国人銅先物トレーダーが逮捕された
【大紀元日本11月22日】「中国経済観察家」新聞21日の報道によると、ロンドン金属取引所(LME)で大量の空売り注文を出し、失踪した中国人銅先物トレーダー劉其兵(リュウ チビン)は、すでに先月に中国公安部に逮捕されたという。消息通によると、劉氏がロンドン金属取引所(LME)で大量の空売りを建てたため、中国政府に少なくとも数億ドルの損失を生じさせたという。今回の事件は1996年以来、LMEで最も大きな損失事件となり、銅先物市場は不安につつまれている。
「中国経済観察家」新聞は、劉氏は「授権されていない取引に関わった」疑いで逮捕されたと報道しているが、詳細な情報を提供していない。
フォーブス誌によれば、劉氏の出した銅先物売り注文は10-60万トンと推測されているという。また、一部のトレーダーの話では、劉氏の出した銅の売り注文は10-20万トンぐらいだという。中国国家物質備蓄局はLMEが定めたルールに従い、12月21日の納会日にまでに、銅の現物を渡さなければならないのだという。国際銅価格は年初以来すでに30%以上上昇しているため、劉氏の出した売り注文は中国政府に数億ドルの損失をもたらす予測。
市場関係者は、最近、中国政府は銅先物市場で頻繁に売買しているという。中国国家物質備蓄局は先週水曜日、2万トンの銅を売ったばかりで、しかも、市場関係者に中国政府が今現在130万トンの銅の在庫を持っていると話した。
中国メディアは同件を、1997年に、株洲冶金廠進出口公司が国外取引による亜鉛の先物を空売りした違法行為により、13億人民元の損失を生じさせた事件に例えている。ウォールストリートジャーナルによれば、同業界の多くのアナリストは、中国は先物取引市場の信用を損なわないように、今回も8年前の事件と同様にこっそり穴埋めする処置を取ると見ており、最終的には銅価格の大幅下落を引き起こすであろうと分析している。
しかし、劉の逮捕が報道される前、中国国家物質備蓄局は劉氏の存在を否定している。当備蓄局の幹部である王会民氏は、トレーダーがLMEで空売り注文を出したことをも否定している。王氏は「私はリュウ・チビンという名前を聞いたことがない。LMEで空売り注文を出したことも聞いたことがない。国家備蓄局にはトレーダーがいません」と話している。しかし、BBCニュースの報道によると、中国国家備蓄局は劉氏に自宅から出ないように命じたという。
空売り、あるいはショートポジションとは、投資家が将来においてある商品の価格が下落すると予想すれば、価格が下がる前に先に商品を売って、価格が下がったら、商品を買い戻して、その間の差額を利喰いするということだ。しかし、もし、価格が下落するのではなく、逆に上昇するとしたら、投資家は高い価格で買い戻さなければならないので、損失が生じる。
トレーダーの間では、中国国家物質備蓄局の言動に不信感を持ち、特に備蓄局の王氏の話した内容に対して、当局は責任を避けているのではないかと指摘している。中国国家備蓄局のこれらの発言が銅の価格を下落させることができるとすれば、当備蓄局の損失が減少するだろうという。
市場は中国当局が損失を補うために、新たな注文を出すのではないかと予想したために、14日のニューヨーク先物市場では銅先物価格は歴史的高値をつけた。
近年、中国政府は国際エネルギーや天然資源市場で頻繁に売買するようになった。しかし、監督管理制度が整っておらず、また、国際金融派生商品市場での取引経験を欠くために、時に巨額の損失を出したという話を聞くという。
去年年末、シンガポール証券取引所に上場した中国航油(China Aviation Oil、CAO)の元CEOの陳久霖氏は石油デリバティブ市場に投機取引を行い、総額5億5千万ドルの損失をしたため、シンガポールで逮捕された。CAOのシンガポール子会社はその損失を支払えないために破産し、しかもシンガポール高等裁判所に保護を求めたという。