【現代音楽家の作品】「室内交響曲第1番」作品9
【大紀元日本6月25日】「室内交響曲第1番」作品9は、十二音作曲法で有名なアルノルト・シェーンベルクが後期ロマン派音楽からの脱却を図ろうとした頃の作品です。
アルノルト・シェーンベルク(1874-1951年)は、オーストリアの作曲家です。子供の頃からバイオリンやチェロを学んでいましたが、父親が亡くなったため、銀行に勤めます。しかしその銀行も倒産したため、彼は音楽で生計を立てる決意をします。ワーグナーとブラームスの影響を受けたこともあり、初期の作品は「浄夜」作品4など後期ロマン派のような音楽を作曲しますが、後に調性の限界を打破すべく、様々な作曲技法を繰り出し、「ピエロ・リュネール」作品21などの無調音楽を発表します。この頃は自らの音楽活動はもちろん、作曲法の教育にも熱心に取り組み、ベルクやウェーベルンなどの弟子とともに活動するようになります。そして1920年頃に、十二音作曲法を使った作品を発表し始め、本格的に十二音作曲法を取り入れた作品を作りだしました。
しかし1933年、ナチスの台頭とともにユダヤ人であるシェーンベルクはドイツやオーストリアから排斥され、アメリカへ亡命し、大学の音楽の授業の講師や、個人的な作曲指導を行って生計を立てながら「ナポレオン・ボナパルトへの頌歌」作品41などの作品を発表しました。
「室内交響曲第1番」作品9は、「芸術としての音楽における自分の役割」に生涯こだわり続けたシェーンベルクらしい、とにかく「こだわりの逸品」です。「交響曲」と冠する曲にもかかわらず、管楽器10本に対して弦楽器が5台という、管楽器が弦楽器よりも多い編成は、各楽器の多彩な音色を際立たせるためのこだわりです。個性が強い楽器たちが独自に旋律を展開する中盤の奇妙な一体感、そしてその中で突如現れる瞬間的和声の絶妙なブレンド感は、あ・うんの呼吸で協調できる神仏たちの思考を思わせます。旋律や和声の進行の中に半音階多用による無調音楽が見受けられる一方、テーマとバリエーションという古典的(クラシック)な様式美でしっかりとまとめられた作品でもあり、この後シェーンベルクが繰り出す無調音楽や十二音技法などの様々な作曲技法が生み出される母体のような曲です。