中秋の名月あれこれ

【大紀元日本10月5日】古くから日本には、旧暦の8月15日の満月を「中秋の名月」と呼んで鑑賞する習慣がある。一年には「春夏秋冬」の四季があるが、旧暦では3カ月毎に季節を分けて考えていた。「一、二、三月」は春、「四、五、六月」は夏、「七、八、九月」は秋、「十、十一、十二月」は冬というようにである。

また、それぞれの季節を「初、中、晩」に細分して呼ぶことがあり、その方式に当てはめると、「八月」は「秋」の「中」、つまり「中秋」ということになる。各月の半ばである15日は大体において満月となるため、旧暦の8月15日を「中秋の名月」と呼んでいる。今年2006年は10月6日がこの日にあたる。

毎月旧暦の15日頃に満月が見られるが、秋や冬は空気が乾燥して月が鮮やかに見える。特に秋は湿度が低く夜もそれほど寒くないため、「中秋の名月」はお月見を楽しむにはちょうど良いわけである。

中国と日本には月を愛でるという習慣が古くからあり、日本では縄文時代ごろに始まったと言われている。平安時代ごろ中国から月見の祭事が伝わると、貴族などの間で観月の宴や舟から水面に揺れる月を見て楽しむ舟遊びなどが行われ、歌を詠んだり酒を飲んだりして楽しんでいた。

現在の日本では、お月見の夜に、月が見える場所に祭壇を作りススキを飾り、月見団子、里芋、枝豆、栗などを盛り、御酒を供えて月を眺めるというのが一般的なようだ。収穫の作業が夜まで続くようなときに、明るく照らしてくれる満月に感謝し、豊作を祈願したのである。

お供え物の里芋は、米が伝わる前の日本の主要作物であり、無事に収穫を終えたことへの感謝である。ススキは、切り口が鋭いことから魔除けの力があるとされ、供えた後、家の軒先につるしておくと、一年間病気をしないと言われている。また、稲がススキのように丈夫に育つようにという願いを込めて、水田に挿したりもした。中国では団子ではなく月餅を作ってお供えするそうである。

ところで、十五夜の月ではウサギが餅つきをしているとよくいわれるが、この「もちつき」は満月という意味の「望月」にかけて言われているものである。

その十五夜に関連した話として有名なのが『竹取物語』。最後の一節は次の通りである。

「かぐや姫は『自分は別世界のものであり、8月15日に帰らねばならぬ』といった。帝は勇ましい軍勢を送ったが、当日の子の刻頃、空から人が降りてきて、かぐや姫を連れ去った。軍勢も翁も嫗も抵抗できなかった。彼女は罪を償うために地上に下った月の都の住人だったのだ。別れの時、姫は帝に不死の薬を送った。帝はそれを駿河にある日本で一番高い山で焼くように命じた。それ以来その山は「不死の山」(後の富士山)と言われるようになった」。

子供のころに読んだこの物語を思い返しながら美しい名月をながめれば、気ぜわしい毎日を過ごしている現代人にとって、心を和ませることのできる良い機会になるだろう。

(大鬼)
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