仙人たちの修行の道・呂洞賓が受けた十回の試練

【大紀元日本12月29日】中国八仙人のひとり呂洞賓(りょどうひん)は、唐代、山西省蒲坂県永楽鎮の人で、海州刺史呂譲の子と伝えられている。幼少より聡明で、科挙に行く途中に、仙人の鍾離権(しょうりけん)に出会い、修行の道に誘われたが、出世の夢を捨てられず断った。

その日、鍾離権と一緒に宿泊した呂洞賓は夢を見た。夢の中で、彼は科挙に及第して出世し、二度、裕福な家庭の娘と結婚し、たくさんの子供をもうけた。さらに40年後、丞相という国の重役になり、10年の間最高の国家権力を手にした。しかし、その後、うっかり罪を犯して、家財をすべて没収され、家族は離散し、一人で荒野をさまようことになった。

夢から覚めた呂洞賓が口を開かぬうちに、鍾離権は「先の夢に、浮き沈みと栄辱のすべてが示されたであろう。50年は一瞬であり、得るとも喜びに値せず、失うとも悲しむ必要もなく、世人の一生はまるで一つの夢に過ぎない」と語った。この話を聞いた呂洞賓は、はっと悟り、鍾離権について修行することを決心した。その後、呂洞賓は修道の道で女色、利害、栄辱、生死などのさまざまな試練を受けたといわれている。

試練その1

呂洞賓がしばらく家を不在にして帰宅したところ、家族が全員病に倒れ、亡くなっているのを目にした。彼は動揺することなく、穏やかに死者を埋葬しようとしたところ、死んでいた家族はまた生き返った。

試練その2 

呂洞賓が市場で物を売っているとき、客と交渉して商品の値段が決まったが、買手はその値段の半分しか払わなかった。これに対して呂洞賓は、何も言わずに商品を買手に渡した。

試練その3

ある日、家の前に1人の乞食が来たとき、呂洞賓はすぐに適当な額の金銭や物を渡したが、乞食は感謝するどころか、物が足りないと言って呂洞賓を罵った。これに対して、呂洞賓は笑顔で謝った。

試練その4

呂洞賓が山中で羊を放牧していたとき、空腹のトラが駆けてきて羊の群れを追いかけた。呂洞賓は羊の群れとトラの間に立ち、羊を守ろうとしたところ、トラはそこから離れた。

試練その5

呂洞賓が山中の山小屋で修行していると、一人の18歳ぐらいの絶世の美女が小屋を訪れ、実家に帰る途中で道に迷い、日も暮れ足も疲れたので小屋で休ませてほしいと言った。呂洞賓は承諾した。夜になると、この女性はあの手この手で呂洞賓につきまとい、一緒に寝るよう求めた。呂洞賓は心を動かすことなく固く断った。この女性は3日間呂洞賓につきまとったあと、立ち去った。

試練その6

呂洞賓が遠方に出かけて家に帰った時、家の財物はすべて盗賊に盗られ、食糧さえも無くなっていた。呂洞賓は怒ることもせず、自ら耕作をはじめた。ある日、畑を耕していると、数十枚の金貨を掘り出した。しかし、呂洞賓は一枚も取らずに、そのまま金貨を埋めた。

試練その7

呂洞賓が街で銅器を買って帰ると、その銅は全部金だと分かった。呂洞賓はすぐ銅器を売っている人を見つけて返した。

試練その8

ある瘋癲のような道士が、市場で薬を売っており、「この薬を飲んだらすぐ亡くなり、転生して得道できる」と話していた。10数日を経ても、その薬を買う客はいなかった。呂洞賓がこの道士の薬を買うと、道士は「速やかに死の支度をするが良い」と話した。呂洞賓はこの薬を飲んだが、何も起こらなかった。

試練その9

呂洞賓が客船に乗って河を渡っていると、河の水が急に氾濫し、風も波も急に激しくなった。乗客はみな恐怖に陥ったが、呂洞賓は穏やかに座ったままで、全く様子を変えなかった。

試練その10

呂洞賓が密室で一人で修行していたところ、突然、目の前に無数の化け物が現れ、殴りかかって彼を殺そうとした。身体が血だらけの一人の鬼みたいなものは、「あなたは前世で私を殺した。今日その借りを返してくれ」と泣きながら、呂洞賓を責めた。呂洞賓は「人を殺したならば、命で償わなければならない」と話し、刀を探しに行って自殺してその命で返そうとした。すると急に、空中に大声が響き渡り、化け物たちは一瞬のうちにすべて消えた。

その後、鍾離権が現れて、「私はあなたを10回試したが、あなたはすべて心を動じさせることなく乗り越える事が出来た。必ずや仙人に成就することができるだろう」と話した。その後400年間、呂洞賓は世の中に現れたり消えたりした。宋徽宗は政和年間に、呂洞賓を「好道真人」と封じた。

(従真)
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