程暁農:中国株式市場の暴騰、金融危機の可能性

【大紀元日本2月20日】上海株式市場株価指数が2900元の大台を突破した際に、シティーバンク、HSBC、クレディ・スイスなどの国際大手銀行の経済アナリストは、各国の投資者に中国大陸の株式市場に注意を促した。また、一部のエコノミストは、1997年に起きたアジア金融危機は再び中国で起こるのではないかとの懸念を示している。

最近、中国株式市場の急激な変動について、大紀元は米誌『現代中国研究』の程暁農編集長にインタビューを行なった。程編集長は、最近中国株式市場の暴騰が新たな金融危機を招く可能性があるとの見方は信頼できると話した。程編集長は、国内株式市場の暴騰を生じたのは株式市場に上場した企業の業績が改善され好調となったという理由からではなく、ホットマネーによる投機活動が株価の暴騰を招いた原因であると述べ、このような合理性を欠く株価の暴騰はリスクが多く、金融危機を招きかねないと示した。

程暁農編集長は1985年中国人民大学にて経済学修士号を獲得してから、中国の全人大(全国人民代表大会)常務委員会弁公庁研究室と中国経済体制改革研究所に勤務し、経済体制改革研究所総合研究室主任や副研究員を務めた。1989年、程編集長はドイツ経済研究所やゲッチンゲン大学、米国のプリンストン大学に客員教授として迎えられ、その後プリンストン大学の社会学博士号を獲得。

以下は今回インタビューの詳細内容である。

中国国内株式市場の暴騰は非常にリスキー

記者:1月22日、中国上海株市場株価指数は3・6%も上昇し、2,933・19元に達して、また深セン株価指数も4・2%上昇し、700・20元に達し、両株価指数は共に歴史最高値を更新しました。上場企業の中に、特に、中国工商銀行の株価が7割も急上昇しました。この状況に関して、多くのエコノミストは1997年に起きたアジア金融危機は中国で再び発生すると懸念を示していますが、程編集長はどのように考えているのでしょうか?

程編集長:私は、先ほど話したエコノミストたちの分析は信頼できると考えています。

記者:できれば、具体的に分析していただけますか。

程編集長:1997年アジア金融危機が発生してから、そのようなバブル経済によって生じた一時的な経済繁栄、またそれによってもたらされた株式市場、不動産市場、投機活動及びギャンブル業界などの異常な繁栄に対して、各国政府はよく認識できました。しかし、中国においては、1997年当時政府の極めて厳しい金融管理規制によって、日本や東南アジア諸国のような深刻な経済危機が現れなかったため、中国の人々はバブル経済の本質に関してあまり認識できていないと言えます。

実際のところ、80年代中後期に台湾で同じようなバブル経済危機が生じたことがあります。当時の台湾の状況は今の中国とまったく同じです。台湾は中国大陸よりはるかに小さいのですが、当時1000億米ドル以上の外貨準備高を抱えました。政府は台湾ドルの為替レートの安定化を保つため、中央銀行を通じて政府の定めた為替レートで他国の通貨を大量に購入した結果、過剰なマネーサプライが発生しました。しかし、当時台湾経済自体がこのような膨大な資金を吸収できないため、資本市場はホットマネーであふれていました。そのとき、台湾では「銭淹脚目」(チェン・イェン・ジャオ・ム)という言葉が流行っていました。つまり、脚が埋もれるほどお金が急に大量に増えたという意味です。これによって、台湾の株式市場や不動産市場が暴騰し、投機活動が広まり、宝くじも流行りました。しかしながら、金融機関における不良債権は増える一方でした。その後、台湾では金融危機の兆候が少しずつ現れました。でも、台湾政府は比較早い段階で状況を察し妥当な措置を採ったため、経済全体には大きなダメージを与えなかったです。

記者:では、当時日本及び東南アジア諸国の状況を教えていただけますか。

程編集長:90年代のアジア金融危機は日本に大きな衝撃を与えました。90年代中期から、日本経済には量的に過剰となったマネーサプライ、または円安によって、株式市場や住宅市場においてバブルが生じた。日本金融危機が現れるまで、世界各国のエコノミストや投資家は日本経済に好感を持っていました。しかし、一瞬にして、日本経済がダメになりました。その後、日本は10年間という緩慢かつ痛みを伴う自己調整を経て、ようやく深刻な経済景気停滞を抜け出すことができました。東南アジア諸国、たとえば、タイの経済はそのような経済危機によって非常に深刻な打撃を受けました。

中国の今現在の状況については、国土が非常に広いため、もしバブル経済や潜在的な金融危機の兆候が現れるとしたら、打撃を受ける経済規模は非常に大きいだろうと思います。たとえば、現在中国の外貨準備高規模はおよそアジア金融危機発生当時台湾の外貨準備高の10倍以上です。そのマネーサプライも当時台湾と比べれば10倍以上となっています。一方、中国ではこれらの資金を吸収できる産業は多くないため、これらの資金はホットマネーとして株式市場や住宅市場に流れていくしかなかったのです。以前、膨大なホットマネーが住宅市場に流れ込んだため、住宅市場のバブル化が急速に進んだのです。中国政府は過熱化しすぎた住宅市場を沈静化するために、一連の経済措置を実施しました。

これによって、住宅市場では一応落ち着いてきましたが、それらの資金がまた株式市場に流れてしまったため、株式市場の暴騰をもたらしました。私は、最近の中国株式市場の暴騰はそれらの行く場所のないホットマネーと大きく関係していると思います。株価の暴騰はホットマネーを使い投機活動を行なった結果で、上場企業の収益や業績と無関係です。つまり、上場企業の業績は改善されておらず、投資家がこの間に絶えず大量に株を買ったことによって株価が急上昇したのです。これは非常に危ないと思います。

ホットマネーはどこから来たのか

記者:ホットマネーはどこから来たのでしょうか。

程編集長:大別して4つの方面からホットマネーが入ってきています。一つ目は輸出企業です。中国政府の外貨管理当局は輸出企業の外貨収入を取得した後に市場へ量的にそれに相応する資金を投入しました。二つ目は、海外華僑個人或いは企業が大量の資金を中国に移し、中国での投機活動を増したためです。このように、人民元の切り上げを狙い、海外から大量な投機資金が中国に流入し、投資家たちは強気となった住宅市場や株式市場で大いに儲けようとしました。三つ目は外国企業による投機活動の増加です。今、中国に進出している外国企業は単に産業活動、つまり中国で現地法人を設立したり或いはサービス産業に参入したりしているだけではないです。一部の外国企業は中国金融市場で投機活動を行なっています。たとえば、ある外国企業が中国で比較的安い価格で商業用住宅を購入し、価格が上昇してから転売する、これにより大きな利益を獲得したのです。最近、住宅市場は以前のようにそれほど激しく変動しないため、これらの資金は株式市場に流れ込んだのです。四つ目は中国金融機関からの資金です。中国株式市場において一部の投資資金は各銀行からの資金だと私は考えます。今中国の各銀行は経営状態が良くなく、融資する価値のある産業が多くないのです。一方では、人々が銀行で預かっている貯金残高はますます増えています。このような状況の下で、銀行はこれからどのように利益を出すのかと頭を抱えて悩んでいます。だから、株式市場が強気相場になっていくのをみて、銀行経営者が一部の資金を取り出し、株式市場に注ぎ込みました。もちろん、これは違法行為です。しかし、多くの中国の銀行はこのようなリスクを完全に無視して、株式市場で儲けようとしています。また、何ヶ月、半年或いは一年後に、これらの違法行為を暴露する報道が多くなると私も確信しています。もし、株式市場が急激に下落すれば、多くの銀行関係者が処分されるでしょう。

株価の暴落を引き起こす要因

記者:株価の暴落を引き起こす要因は何があるのでしょうか。

程編集長:これは投資家の心理変化によります。投資家たちは上場企業の業績改善という理由で中国の株式市場に投資したわけではないのです。彼らは今大量に株を買っているのは、将来高値が付いた後に転売して、莫大な利益を手に入れるためです。実は、これはトランプゲームの「ババ抜き」と非常に似ています。要らない或いは良くないものを次の人に渡していき、その中から利益を獲得する、このような過程は投機活動でよくあります。もし、ある一部の投資家、或いは相場に自信をなくして、その「ババ」をもらうことを拒めば、「ババ抜き」ゲームが終了し、株価が大きく下落します。

記者:このようなゲームはどれぐらい続くのでしょうか。

程編集長:これは何とも言えないですね。これはある種の心理戦です。つまり、あなたが私を騙せば、私があなたを騙すというような過程です。まず、他人を騙す人はその人が騙されるのを望んでいます。騙されている人がこのまま騙されてもいいとさえ思えば、このゲームは終わることになるでしょう。しかし、今中国株式市場の暴騰は正常ではないことをまず認識しなければならないのです。早かれ遅かれ暴落するでしょう。他の国ではこのような暴騰を見たことがないです。この暴騰を正常だと主張する専門家すらいます。だから、これが海外の報道機関が今中国株式市場の現状を冷静に分析している理由だと私は思います。

記者:ある一部の専門家は、中国は国際社会から圧力を受けて近い将来に人民元の切り上げを再実施すると認識しています。だから、海外の一部の投資機関が利益を獲得するため莫大な資金を中国に流入させたのです。これが株式市場の株価が暴騰させた主な原因だと言われています。程編集長はどう思われますか。

程編集長:中国政府は長い間、人民元相場の変動を厳しく制限してきました。これで、人民元の切り上げへの観測と期待によって、投資家たちの投機活動が頻繁になったわけです。先ほど、私がホットマネーの話に触れたときに、海外投資者たちが莫大な投資資金を中国に持ちこんだといいましたね。彼たちは人民元切り上げ後の株式市場や上昇した人民元を転売することにより膨大な利益を得ようとしました。このような人はきっとたくさんいると思います。しかし、株価の急騰は外国投資家或いは投資機関のせいにしてはいけないと思います。外国投資家の投資量はそれほど多くないのです。事実上、株式市場で売買している投資家の多くは中国本土の投資家です。中国人は不都合が生じると外国人のせいにする習慣があります。でも、実際のところ、株価の暴騰は中国人投資家が大量に株を購入したことによって招かれたのです。

株式市場におけるホットマネーの多くは中国国営銀行からのもの

記者:最近中国に流れ込んだホットマネーの内、海外投資家からの資金はそれほど多くないということですが、ならば、これは中国国内の問題となるのではないでしょうか?

程編集長:海外投資家は中国の株式市場をあまり知らないと思います。だから、彼らはどの株に投資すればよいのかがわからないのです。そのため、彼らは中国の住宅市場に投資することが多いです。もし、海外の投資家が中国の株式市場に投資しようと思えば、まず中国で株取引のブローカーを探さなければなりません。海外投資家は中国の株取引ブローカーを通じて株取引を行ないます。だから、株式市場の暴騰をもたらしたのはやはり中国国内の投資家だと思います。しかも、最大の投資家は中国の各銀行と他の金融機関だと思います。もちろん、中国政府はこれを認めないでしょう。なぜなら、銀行が直接に株式市場に投資することは違法行為で、金融関連規定に違反しているのです。銀行が国民の預金で投機活動を行なっているので、もしある日株価が突然暴落すれば、苦労してようやく貯めた国民の預金は一瞬にして完全に無くなります。

記者:もし株価がいきなり暴落したら、たとえばある銀行に預けているお金をもう取り出すことができなくなる、ということですか。

程編集長:もし民間の個人経営の銀行であれば、このような状況が起こりうるのです。以前、台湾にはこれと似た状況が起きたことがあります。しかし、中国の銀行が株式市場で敢えて投機活動を行なうことができたのは、国営の銀行だからです。もし株価が暴落したら、政府当局が国家財政でその莫大な損失を補っていくでしょう。これは中国国営銀行の特徴で、なぜなら、銀行管理層の幹部は皆国家公務員だからです。

記者:では、これらの銀行は責任を取らないということでしょうか。

程編集長:責任を取ることはほとんどありません。これも中国の銀行があんなに膨大な不良債権を抱えてしまった原因です。民間の個人経営銀行ならば、もうすでに破産しているでしょう。しかし、中国の銀行を管理している政府官僚たちは国家としての信用を利用して、莫大な利益は自らのものにして、出た損失は政府或いは国民に被らせるのです。

膨大な不良債権の原因は、中国の銀行制度

記者:このような現象の根本原因を分析していただけますか。

程編集長:中国の銀行制度が今のような結果をもたらしたのです。中国政府は国営銀行だけに金融市場の独占権利を与えました。中国は社会主義を強調していますね。社会主義の所謂「優越性」の一つは公有制度であります。このようなイデオロギーからいえば、間違えていないです。だから、銀行でも公有でなければならないです。公有である限り、銀行管理層によって生じた不良債権問題が自然に政府に負わせなければならないです。

記者:もしそうであれば、中国国民にとって公平なのでしょうか。

程編集長:社会主義というのは従来国民に幸せな生活を送らせるような制度ではないからです。

選択の余地がない中国国民

記者:欧米の民主主義国家でも、中国と同じような事情が起きるのでしょうか。

程編集長:一般的に、民主主義国家の有権者たちは彼たちが必要とする政治家を選出することができます。また、政治家たちも有権者の意思で経済政治制度を制定します。したがって、中国のような事はないでしょう。しかし、中国の今現在の制度は中国国民が自ら選択したわけではなく、武力で無理やりに押し付けられたものです。

記者:欧米諸国や先進国でバブル経済が起きるとしたら、政府はどのような経済政策で調整し景気回復をはかるのでしょうか。

程編集長:もしバブル経済が起きて膨大な不良債権が生じた場合、まずダメな企業や銀行を破産させるのです。これにより、多くの人々が失業し、収入が減ってしまいます。このような痛みが伴う調整が長く続くでしょう。そのメリットというのは、欧米諸国は自由経済を行なっているため、企業が経営不振でだめになったら、政府は政治的な責任を負わなくて済むというところに在ります。つまり、人々が、経済景気が後退し停滞したのは政府或いは制度のせいだとあまり思わないのです。たとえば、当時経済危機に直面した日本では、日本の国民は企業の経営者と政府官僚との関係が一連の問題を起こしたと非難しましたが、基本的な経済政治制度に対して批判しませんでした。しかし、中国はそうではないです。

記者:では、その違いはどこにあるのでしょうか。

程編集長:政府を信頼している中国の国民は非常に少ないです。政府もこれを認識しています。だから、一旦経済的な危機が起きれば、まず政府の信用度と政府の立場が挑まれるでしょう。中国政府は簡単にそれらの経済政治危機などを認めようとしませんので、真実を隠し続けています。これは非常に深刻な問題になるでしょう。なぜなら、最後に被害者となるのは一般国民ですから。

矛盾する中国政府

記者:先ほど、中国政府は住宅市場を調整することよって、現在のような経済的危機から抜け出したいとおっしゃいました。では、中国政府は現在の状況を把握していると認識すればいいでしょうか。

程編集長:もちろんです。中国政府は非常に矛盾しています。彼たちは経済繁栄というバーチャル的な現象を作り、国民の人心を安定させて、または外国からの投資を引きつけようとしています。同時に、中国政府はこのような虚像がもたらす悪結果を非常に恐れています。だから、中国政府が矛盾しているといえます。

記者:では、このような状況をどのように回避すればいいのですか。或いは損失を最小限に留める措置はあるのでしょうか。

程編集長:中央政府は最終的な責任者となるので、慎重に金融危機を避けようとしています。しかし、地方政府や金融機関の幹部たちはそう考えていないようです。彼らは住宅市場及び株式市場でのバブルを利用して、地方の財政を増やし、金融機関の不良債権を補おうとし、また幹部個人が儲けようと投機活動を続けているのです。また、もし損失が出れば中央政府に肩代わりさせ、処理すればいいと考えています。中央政府の政策が厳しくなれば、きっと地方政府或いは金融機関からの反発を招くし、また経済全体に大きな打撃を与えてしまいます。これは、中央政府が回避したいことです。だから、この一年間、中国政府は住宅市場の過熱化問題を処理するにおいて、非常に緩慢な「沈静化政策」を採ったのです。このような状況の下では、中央政府の反応は遅く、対処の効果も低いのです。中央政府にしても、地方政府にしても、誰も「損失を最小限にする」という原則を念頭に置いていないのです。

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