拡大する所得格差、中国経済発展を懸念する温家宝=米ギャラップ社『2006年中国調査』

【大紀元日本4月12日】先月28日米国ワシントンDCに本社を構える世界最大級の調査・コンサルティング会社のギャラップ(GALLUP)社が主催する『2006年度中国調査』(2006 China Survey)発表記者会見において、米国大手投資銀行モルガン・スタンレー社チーフエコノミストのスティーブン・ローチ(Stephen Roach)氏によると、3月下旬に同氏が中国温家宝首相と会談した際に、温首相は中国経済現状について「持続不可能、不安定、非協調的、不均衡」(unsustainable, unstable, uncoordinated, unbalanced)だと話した上、強い懸念を示した、という。

ローチ氏によると、モルガン・スタンレー社のリサーチでは、固定投資と輸出は国内総生産の8割を占めているとの中国現在の経済形態を明らかにしたという。同氏は、このような極めて不均衡な経済構成を見たことが無いとし、中国の経済成長は持続不可能と話した。

低下する安全感、上昇する貯蓄

46%、世界一高いとも言われる中国国民の貯蓄率に関して、『2006年度中国調査』では、1997年から2006年まで実施した4回の調査において毎回約7割の国民が貯蓄はまだ足りないと考えている、と中国国民の消極的な消費行動がこの9年間にはあまり変わっていないことを示した。ローチ氏は、この現象を「危惧から生じた貯蓄」と表現し、中国国民の教育、雇用、医療、老後の生活に対して非常に不安であると指摘した。

また、同氏は深刻化する環境汚染問題と過剰な自然資源消費問題の解決は中国経済にとって急務であると示した。また、ローチ氏は、 「世界大気汚染の最も深刻な十の都市には、中国の貴陽、重慶、太原をはじめとする七つの都市が占めており、同時に中国は世界で水質汚染が最も深刻化している国の一つでもある」と世界銀行の研究結果を引用し、中国環境汚染の深刻さを強調した。

2006年年末、四川省重慶の嘉陵江が有機水銀に汚染された様子(China Photos/Getty Images)

さらに拡大する所得格差

ギャラップ社の中国支社研究員ウ・タォー(Wu Tao)氏は記者会見で、中国所得格差がさらに拡大していると示した。また、ウ氏によれば、所得格差は都市部と農村部の間だけに限るのではなく、都市と都市、農村と農村との間でも格差が広がっているという。

ウ氏によれば、ギャラップ社が1997年にはじめて実施した調査では、中国都市部において、富裕層と貧困層との間の格差は約7・5倍で、2006年では、その格差が約10倍に拡大した。また、農村部において、富裕層と貧困層との間の格差は1997年約10・7倍で、2006年には14・2倍と急速に広がったという。

『2006年中国調査』では、3大都市(北京、上海、広州)と都市部と農村部別の消費者製品所有から見ると、その間に非常に大きな格差が存在すると明らかにした。たとえば、携帯電話の有無について、3大都市では約90%の市民が携帯電話を所有していると、都市部では82%で、農村部では50%となっている。また、パソコンの所有率に関しては、3大都市では約72%の市民が所有しているのに対し、都市部ではその半分以下の33%で、農村部での所有率はわずか4%。さらに、医療保険などの保有率にも大きな差が見られた。3大都市では68%の市民が医療保険を加入しているが、農村部ではその半分の34%にとどまる。

(注:ギャラップ社調べ、出所:http://www.gallupworldpoll.com/content/?ci=27058)

ギャラップ社研究員・呉濤(音訳)氏は「調査結果から見れば、中国経済発展の最大受益者となったのは都市部の住民で、農民ではない」と話した。2006年末に発表された世界銀行の貧困問題評価報告書によれば、2003年中国人口の10%を占める最も貧しい人々の所得は2001年と比べ、約2・5%減少した。中国経済が高度成長を遂げていると同時に、貧しい人がますます貧しくなっている。世界銀行は貧困に対して、毎日の所得が1ドルに満たない場合と定義している。

中国統計当局の関与

一方、記者会見では、中国政府当局は今回の調査に関与したかどうかについての本紙記者の質問に、ギャラップ社の責任者は「インタビューに関する全ての質問は中国統計関連部門に審査された。ギャラップ社としては(中国政府から)全国における調査許可をもらっているため、改めて地方政府に調査許可を申請する必要がない。しかし、リサーチプロセスにおいては、地方政府からの協力を得た。調査員については、全てギャラップ社の社員である」と話した。しかし、「中国政府当局は報道機関への規制が依然に厳しい。リサーチの実施において、このような報道を禁止される地区にも触れたのか」との記者らの質問に対して、ギャラップ社ははっきりと回答しなかった。ギャラップ社は昨年、中国全国22省と3直轄市と5自治区に約3750世帯に対してインタビューし、『2006年度中国調査』を作成したという。

(記者 呉ルイルイ・ワシントンDC)

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