危篤状態の長江、待ったなしの水質汚染対策呼びかけ=専門家ら

【大紀元日本4月30日】長江保護に関する中国の最新の報告によると、長江において、水環境の悪化、生態系の劣化、資源の破壊などの問題が深刻化しており、専門家は、長江を救うには、一刻の猶予も許されないという。米国のVOAが伝えた。

長江は世界の3大河川であるとともに、中国第一の河川。上流は金沙江と呼ばれ、下流を揚子江という。中国科学院南京地理湖泊研究所、世界自然保護基金及び長江水利委員会などが、4月14日に長沙において発表した《長江保護及び発展報告2007》によると、中国の“母なる河”と称される長江の健康状態はすぐれず、一部河段の水質は取り返しがつかないほどに悪化しているという。

この報告は、現在のところ最も権威があり、データが最も精緻な“身体検査”であるが、これによると、将来の気候の温暖化の長江に与える影響はますます大きくなるとしており、三峡ダムは建設されたものの、長江の洪水防止体制の状況は依然として深刻であるという。また、長江流域における廃水の排出量は年々増加しており、水質は悪化の趨勢にある。このほか、非合理的な開発によって、長江産イルカ、チョウザメ等10数種類の魚類の生存が危機にさらされている。

過度の資源開発が生態系に影響

四川省地鉱局の地質探査技師である范暁同氏は、報告の結論に同意しており、人類の生産及び生活活動は、長江流域の汚染を増やす一方であり、管理措置が追いついていないほか、水利資源の過度の開発もまた、生態系に極めて大きな影響を与えているという。例えば、重慶から広元にかけての水域において、16の水利センターが建造されているが、これらは、乾季に沿岸の水不足の問題を引き起こすほか、長江の自浄能力の低下をももたらしている。

范氏は「現在、長江流域全体において、大規模な水利開発が行われており、多くのダムが建設されているほか、再建されているダムもある。一連の大型ダムの建設が始まって以来、多くの河段における水流が静止した状態になっている。流動する河流には自浄能力があるが、流速が減速すると、自浄能力は低下し、ダムにおける汚染が累積されていく」としている。”

取り返しのつかない水質汚染

中国政府の英文紙「チャイナ・デイリー」は、16日にこの報告を引用し、長江幹流の汚染は600キロにわたり、湘江,岷江、沱江及び黄浦などの30%の支流の汚染が深刻で、長江の大量の汚染物が、取り返しのつかない危機的な状況をもたらしていると述べている。

范氏によると、三峡ダムを建設した際、国家は汚水処理及び固体廃棄物処理のためのプロジェクトに大量の投資を行った。しかし、現在のところ、汚水処理網の整備が追いついていない。また、三峡ダム建設のために大量の失地農民と失業者が発生し、彼らの貧困問題が深刻化し、就業問題の解決が喫緊の課題となっている。このため、重慶や成都を含む長江沿岸の地方政府は、経済発展に一層注力し、新規の大型工業プロジェクトの誘致に励んでいる。

范氏は「政府は、地方の経済発展と経済成長を促進するため、三峡ダム地区を含め、一連の重化学工場を建設する準備をしており、三峡ダム地区を重化学工業の基地とする計画を改めて打ち出している。そうすると、環境への圧力は減少するどころか、かえって大きくなる」とみている。”

范氏によると、独立した法執行権を持つ環境保護部門がないため、政府の意思決定を制約できないという。なぜなら、環境保護部門が地方政府の指導に服しており、官員の任命もまた、地方政府の主要な指導者が決定しているからである。《中華人民共和国環境影響評価法》は存在するが、この法律の地方政府に対する拘束力は限定的であり、指導者らは科学的発展観を吹聴するものの、第一に追及する目標は、依然としてGDPの成長である。

一刻の猶予も許されない

長江は、中国18の省、市、自治区を流れ、中国の人口の3分の1である4億人を養っており、沿岸の省、市のGDPは全国の数字の54%を占めている。中国の多くの専門家、学者は、日増しに深刻化する長江の汚染について、一旦長江水系の生態系が崩壊すれば、想像に堪えない結果がもたらされることを声を大に呼びかけている。

中国の民間研究機関である中国発展研究院の章_qii_・院長は、故郷の江蘇省の長江下流部分で実施した調査によると、河岸の60キロにわたり製鉄所、化学工場、造紙所、造船所、船舶解体所など、重汚染をもたらす企業が立ち並んでおり、その工業廃水のほとんどが処理されずに長江に直接排出されている。2004年の数字によると、長江に排出される汚水の量は、毎年256トンで、60%の水が一定程度汚染されており、その害は沿岸の500余りの都市の用水に及んでいる。章院長らは、長江を救うには、一刻の猶予も許されないと呼びかけている。

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