ファンタジー:個人タクシー「金遁雲」の冒険独白(1)
私の名は張帰山、出身は中国の四川省だ。生まれは唐代なので1200歳位か・・・峨眉山の洞穴でひたすら座禅し、「精」「気」「神」を守り、「炁(き)」「性」「霊」に還すことに成功し、諸仙人の認める中で「自分なりに」得道し、「そろそろ三界を出ようかな?」と目算している内に、猿居士の悟空が「いいものがあるから・・・」と耳打ちしてきた。
悟空は、「実は、カカ仙女の万物を生み出す珠を見つけたのじゃ。これをせしめれば、世界の王になれるぞ」。実はもう三界には興味がなかったのだが、「まてよ・・・十方世界の宝かもしれん・・・これで一気に弥勒さまと比肩されようかもしれんな・・」とふと考えた。
悟空の乗る金遁雲の端をつかみ、ひとしきり中国神仙界を渡ると大勢の竜神に守られたカカ仙女の天空御殿が見えてきた。護衛の竜神たちに軽く会釈して「先天三宝」の札を出すとサッと通された。中では仙女は「昼寝」に興じていた。
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私がここ東京で個人タクシーなる人間稼業をするようになり、早数日が過ぎた。季節は蒸し暑い夏を迎えようとしている。午前中の陽気が満ち溢れ、油蝉がジィージィーと泣き始める頃、私はいつものように天空の雲の裂け目から金遁雲号に乗って降りてきて、明治神宮外苑のあたりでこれを物質化した。すると、表の大通りからいい白湯の匂いがしてきた。ふと日本人たちが好む柳麺などを食してみたくなった。
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