世界のM&A、資金調達悪化の兆しにも07年は過去最高に
世界的な企業合併・買収(M&A)について、銀行関係者は、現在のブームを支えてきた容易な資金調達環境に陰りが出ているにもかかわらず、上半期が非常に活発だったことから、2007年は過去最高の年になると予想している。
調査会社ディーロジックが発表した暫定データによると、07年上期に発表されたM&Aは金額ベースで51%増の2兆8000億ドル。国境を越えた案件の増加により、4年ぶりに欧州が米国を上回った。
JPモルガン・チェースのM&A部門の幹部は「(今年は)間違いなくM&A市場の規模が最大になる」とみている。
ただ、07年が過去最高になったとしても、上期の実績が寄与している部分が大きいと言えそうだ。ここ1カ月の間には、買収資金調達のための債券の発行環境悪化、金利上昇懸念の高まり、サブプライムモーゲージ(信用度の低い借り手向け住宅融資)問題の広がり、プライベートエクイティに対する批判の強まりなど、M&Aの逆風となりかねない要因が浮上している。
ただ、銀行関係者の間で動揺している様子はあまりみられない。
ソシエテ・ジェネラルの資本市場部門幹部は、M&A市場の活況が少なくとも今年後半、おそらく08年も続くと予想。ブームの終えんが間近と思える兆しはでていない、としている。
しかし、近年のM&Aブームを支えてきた買収ファンドは環境が厳しくなっていると感じている。
米著名投資家カール・アイカーン氏は、投資家向けのコンファレンスで、レバレッジドバイアウト(LBO)のブームは「ピークに達した」との見解を示した。
モルガン・スタンレーのM&A部門幹部は、転換点に来ているかどうかが問題とみている。「今サイクルで、レバレッジ(借り入れ)が限界に達してしまい、銀行は融資をやや控えたいと考えているかもしれない。ただ、なお流動性は潤沢だ」と述べた。
M&Aがピークを迎えたかどうかは、銀行にとっても重要な問題だ。銀行が上期に稼いだ手数料収入のうち、買収に関連した起債や融資によるものは55%に上り、2000年のM&Aブームの28%に比べて大幅に拡大した。
上期にM&Aが活発(金額ベース)だったセクターは、金融サービス(5390億ドル)、不動産(3010億ドル)、公益事業(2550億ドル)。
買収の対象となった企業は、米国企業が最も多かった(9980億ドル)。欧州ではオランダ企業、英国企業、スペイン企業が目立った。