上昇続ける中国豚肉価格、民衆にインフレ懸念

【大紀元日本7月25日】中国における豚の藍耳病の流行により、すでに万単位の豚が死亡している。中国政府は、今夏は気温が高めになることから、藍耳病が大規模に流行し、豚肉価格が持続的に上昇すると警告している。中国の民衆の多くは、豚肉価格の上昇が、大規模なインフレを引き起こすことを懸念している。

40万匹の豚が死亡

AP通信の報道によると、今年5月に豚の藍耳病が大発生して以来、中国全国25の省・市、自治区に蔓延しており、39万4千頭余りの豚が死亡している。

中国政府の英字紙「チャイナ・デイリー」によると、中国農業部の声明として、夏季の気温上昇、湿度の増加により、藍耳病の発生が特定の地区において劇化する可能性を否定できないという。

中国メディアによると、致死性の高い藍耳病が、豚肉価格の上昇をもたらしている主な原因の一つとなっており、深刻な感染が豚の出荷に影響を与えているという。AP通信は、中国商務部部長補佐・黄海の話を引用し、需給関係が逼迫していることから、全国の豚肉価格は、今年下半期においても高い水準を維持し、一部地区においては、水災害の影響も相まって、引き続き上昇する趨勢にあると予測している。

豚肉価格の上昇がもたらすインフレ懸念

AP通信の報道によると、中国の指導者は、豚肉価格の上昇に大きな関心を持っているという。豚肉は、中国民衆にとって主要な肉類食品であるため、豚肉価格の上昇は、多くの民衆の生活に影響することになる。

北京晨報の報道によると、今年以来上昇を続けている豚肉価格は、過去1か月間、更に上昇する傾向を示している。国家発展改革委の最新の統計によると、需給関係の逼迫により、短期間のうちに状況を緩和することは困難であるという。また、今年6月において、全国36の大中都市の豚肉価格は大幅な上昇を続けており、新鮮なモモ肉500グラムの平均価格は9・78元で、対前月比で12・3%上昇している。

AP通信の報道によると、豚肉価格は、すでに昨年に比べて40%上昇している。一部のエコノミストは、豚肉価格の急騰が、他の生活必需品の価格を上昇させ、インフレをもたらすことを懸念している。国家発展改革委が調査した46の重要な商品、サービスの価格のうち、16の商品価格が上昇しており、その主なものに、食用油、牛乳などの食品価格や、住宅、水道、暖房、液化石油ガスなどの価格が含まれていた。

中国各階層が注視する豚肉価格

温家宝首相は今年5月、地方政府に対し、低収入者への食品援助を増加させるとともに、農民に補助金を支給し、より多くの豚を飼うことを奨励するよう求めた。中国関係当局によると、多くの農村が豚の伝染病の被害を受けたため、多くの農民が再び豚を飼いたがらないという。

AP通信の報道によると、国際獣疫事務局(OIE)の資料として、豚の藍耳病は、1987年に、米国において初めて発見されたもので、この病気は、人には伝染しないが、豚が罹患した場合、死に至らしめる可能性があるという。

一部民衆は、豚肉価格の上昇がインフレをもたらすことを懸念している。南方週末は「住宅価格、株価に続いて、この夏、中国全体の新たな焦点になるのは、豚肉価格である。上は総理、下は民衆に至るまで、これだけ多くの人々の関心が豚肉に向かったことはいまだかつてない」と報じている。

しかし、この記事によると、エコノミストの見解として、豚肉価格の上昇が、何らかの災いをもたらすことはまだなく、警戒すべきは、中国におけるインフレであるという。

中国各地で発生している今回の豚肉価格の上昇により、多くの中国人はインフレに対する懸念を持っている。北京最大の農副産品の卸売市場である新発地市場においては、豚肉価格が、20日余りで14回上昇し、前年同期の倍となった。6月12日に国家発展改革委が公表した数値によると、5月期の消費者物価指数(CPI)は、前年同期比で3・4%上昇し、銀行の預金利率3・06%、金利引き上げの警戒ラインである3%を上回った。

北京オリンピック前に更に大きな危機が発生か

前・プリンストン大学中国学友会会長で、著名な中国問題の評論家である陳奎徳博士によると、中国において最近、人々を憂慮させる一連の事件が発生しており、対応がうまくいかなければ、2008年のオリンピック前に更に大きな危機が発生するという。

陳氏は「現在、中国政府は、様々な問題について、その一部は相当に深刻な問題ではあるが、これらの一つ一つを解決または処理し、来年のオリンピック前に大きな、あるいは災難的な騒乱が発生しないことを保証しようとしていると思う。現在のところ、中国において、直ちに重大な危機が発生する状況が生じているようには見受けられない。しかし、私の推測、直感として、来年に到る前、すなわち2008年のオリンピックを前に、更に大きな事件、あるいは危機をもたらす事件が発生するだろう。したがって、私たちは状況を注視しておく必要がある」と警告している。”

中国における豚肉価格の上昇と、これがインフレをもたらしうるというニュースから、第17次全人大(以下「17大」)を前にした権力層の動向について、メディアは新たな分析を行った。香港明報が最近発表した評論によると、温家宝首相は、内地の経済情勢が心配でならず、国家発展改革委副主任・陳徳銘などの官員を招集して豚肉価格、水源汚染、不動産価格の暴騰、及び国際社会で「妖魔化」した輸出製品などの問題について議論を行ったという。

この評論では、「温家宝が直面しなければならないのは、政府内部からの攻撃だけでなく、民衆の不満、怒りであり、温家宝は、これらを妥当に処理しなければならない。民衆は、高住宅価格、高インフレ、高汚染に耐えなければならないため、当局に対する不満は自ずと高まっているが、こうした不満の矛先が温家宝の身の上に集中することは極めて容易である」としている。

今年秋の17大開幕を前に、多くの海外メディアは、温首相がその責務に力不足を感じており、3月の任期満了において再任を求めない意思であると報道した。中国外交部はこのニュースを否認したものの、中国において最近発生している一連の危機が、中共17大における人事の調整を引き起こすか否かという論点は、海外のチャイナ・ウォッチャーらの関心の的となっている。

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