中国人民解放軍建軍80周年からみた上層部内部の激烈な権力闘争

【大紀元日本8月3日】中国人民解放の設立記念日8月1日、北京市で慶祝セレモニーが行われ、軍のトップを兼任する胡錦濤・主席は、共産党による軍への「絶対指導権」を再度強調した。最近、軍の大規模な人事刷新が行われたことや、江沢民・元主席の腹心が相次ぎ政権から退けられたこと、10月初めに開く予定の第17回人民代表大会(略称・全人代)は、同月下旬に延期するなどから、中共最高指導部内部で、江沢民派と胡錦濤派による権力抗争は白熱化している。

香港メディア:少壮派が全面的に軍を支配

中国共産党は設立してから、「銃口から政権が誕生」と唱え続けてきた。そのため、軍の指導権を握った者は、絶対的な権力を有する。2004年、江沢民・元主席が軍のトップを退任し、胡錦濤・主席が軍のトップの座に就いた。その後、胡主席は少壮派の軍幹部を大量に抜擢、軍における支配システムを構築してきた。

香港紙「南華早報」は7月初め、中国軍の幹部の起用には若返りの動きを見せ、中央委員や、候補委員などの重要ポストにつく可能性のある重職は、すべて59歳未満であると伝えた。

軍副主席3人のうち、2人が胡錦濤擁護に転じる

また、香港紙「林檎日報」の報道は、「胡錦濤と江沢民が軍の支配権を争う過程において、最も影響力ある中央軍事委員会の副主席3人のうち、すでに2人は胡錦濤側に転んだ」と報じた。

国防部長を兼任する中央軍事委員会副主席・曹剛川は様々な公の場で、断固として胡主席の命令に従うなどの胡錦濤擁護の発言を繰り返し、立場を鮮明に表明してきた。

もう1人の中央軍事委員会副主席・郭伯雄は今年6月、胡錦濤・主席が共産党中央学校で重要談話を発表した後、軍の内部で、胡・主席のこの談話をハイテンションに讃え続けた。外部は、この行動は、胡錦濤・主席への忠誠を誓った証とみている。

残されたもう1人、中央軍事委員会副主席・徐才厚はこれまでに、態度を明確にしていない。

軍の人事刷新、胡が指導権を握る

今秋の第17回全国人民代表大会(略称、全人代)を前に、胡錦濤・主席は2回にわたり、軍の人事を大々的に刷新した。

また、江沢民や、張萬年と遅浩田など軍最高指令部の元メンバーらは、今回軍の代表として再選されず、江沢民の側近、中央警衛局の局長の由喜貴も代表にならなかった。

米国防省のある報告書は、第17回人民代表大会を前に、胡錦涛・主席が軍への制御を強化するための動きである可能性を指摘した。

一方、江沢民の側近、中央警衛局の局長・由喜貴の人事問題に、胡錦濤は挫折に遭った。ロイター通信は、胡錦濤が由喜貴を更迭する計画だったが、江沢民が由喜貴の続投を極力に求めたため、結局、由喜貴は局長に留任と報じている。

大紀元のコラム作家・王一峰氏は、「胡錦濤による軍での権力システムの構築に、江沢民は大変危機感を感じ、中央警衛局は自分の最後の陣地として、頑として譲れなかったのでは」と分析。

江沢民の残存勢力の排除

軍への制御を強化すると同時に、胡錦濤は一連の方策を取り、江沢民の残存勢力の排除を続けている。以下にて、実例を上げ、説明する。

香港の「中国人権民主運動信息中心」によると、江沢民の側近で、中国軍事委員会の元副主席・張萬年の姉の息子、山東省の副省長・杜世成は、汚職問題で今年4月に共産党から除名された。

香港紙「争鳴」は、「2002年11月13日、第16回全人代の主席団常務委員会第4次会議の席で、張萬年は攻めに転じた。彼は『特別動議』を提出、江沢民が軍のトップを続投すべきであると提案した。そのため、胡錦濤がその場で意見表明をせざるを得なく、江沢民は軍事委員会の主席を続投できた」と報じた。いわば、張萬年のこの作戦が功を奏し、江沢民はその後の2年間、軍のトップの座に居座れた。

また、昨年5月初めに、胡錦濤が山東省青島の軍視察で、乗っていた軍艦がほかの軍艦に「誤射され」、胡は危機一髪で難を逃れ、同乗の兵士は死傷したという。激怒した胡錦濤が視察を中止し、調査を命じた。後に、その「誤射事件」の裏幕は江沢民で、当時の青島市書記・杜世成は協力者との説が流れている。

同年12月23日、杜世成は汚職容疑で解任され、取調べを受け始め、一族9人も巻き込まれた。

外部は、「胡錦濤のこの方策は、江沢民の側近である張萬年を打撃するとともに、政権内部に残存する江沢民の側近への見せしめでもある」と分析。

また、「青島誤射事件」発生後、去年9月、江沢民が率いる「上海派閥」の中心メンバーである上海市トップの陳良宇は汚職容疑で政権の座から退けられた。

世論の変化から読み取る権力闘争

今年第7期の中国当局機関誌「炎黄子孫」は、江沢民の政敵・趙紫陽(注、中国の元総理、1999年の天安門事件での大学生への虐殺を反対したため、政権から退けられ、昨年亡くなるまでに、自宅に軟禁された)を讃える文章を掲載した。1999年、趙紫陽が軟禁されてから、中国政府メディアが彼を讃える文章を掲載したのは、これが初めである。

また、7月20日、胡錦濤は楊尚昆(中国元主席)の生誕100周年を盛大に祝賀、江沢民の政敵である楊尚昆を高く讃える、彼を見習うべきとの談話を発表した。

香港の「南華早報」は7月30日、10月上旬に開く予定の中共第17回全人代は同月下旬に延期されたと報じた。それについて、「胡錦濤と江沢民の権力闘争はさらに熾烈化、最高機構である政治局常務委員9人の選定に意見統一ができないでいる」との説が浮上。

また、少し前までに、中国のインターネットサイトでは、胡錦濤が江沢民の逮捕を計画しているとの噂が飛び散っていた。

ある中国問題の専門家は、「中国共産党政権がいま、まさに嵐の前夜に瀕している」と分析した。

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