中国人気映画の上映禁止、その背後を探る

【大紀元日本8月18日】中国国内では、これまで、多くの名監督が制作した映画が上演禁止になっている。中国当局にとって「敏感な内容」が含まれているのがその理由とみられている。いくつか実例を上げて、状況分析を行った。

中国国内で話題の映画「リンゴ」が今年11月に国内上映される予定だったが、上映が再び先送りされた。「リンゴ」の元のタイトルは「迷失北京」(北京を見失う)、北京市の足マッサージ店の店主が農村から出てきた出稼ぎ労働者の若い娘リンゴさんを強姦し、妊娠させた。リンゴの旦那はこれを理由に店主をゆするというストーリー。

映画評論家は、「同映画は、中国の高度経済発展の背後に隠されている道徳価値観の著しい低下と貧富階層の社会的対立を反映している」と分析している。

また、同映画のプロデューサーはAP通信の取材に対し、中国当局の映画審査機構から次のような説明があったと伝えた。「上映時期の11月は、中共の第17回人民代表大会の会期(10月)と近すぎる上、映画が反映する都市部と農村、金持ちと貧困者の貧富格差などの社会問題は、政府が唱えている『調和社会の構築』のテーマと相違する」。

同映画は今年2月、最優秀主演女優賞を競うために、ベルリンで開かれた第57回国際映画祭に参加した。参加に当たって、中国当局の映画審査機構が、天安門広場や北京市の不衛生な町風景、中国国旗などの5つのシーンの削除を命じた。理由は、中国のイメージにマイナスの印象をもたらすというもの。しかし、中国当局の要求通りに編集するには、時間が間に合わなかったとして、映画祭では完全版が放映された。

同映画は、これまでに中国当局の映画審査機構による5回の審査を受け、50カ所以上を修正し、ようやく放映許可が下りたが、上映は再三にわたって延期されている。

これまでにも、中国当局から上映禁止などを命じられた映画は数多くある。

1991年には、田壮壮監督の映画「藍風筝」(邦名:青い凧)が、東京映画祭などで受賞したものの、中国当局が同映画代表団に対し、東京映画祭を中退するよう命じた。田監督はその後10年間、映画監督の資格を剥奪された。同映画は1960年代の知識人を大規模に迫害する「文化大革命」に触れたことが理由とみられる。

1994年には、カンヌ映画祭で主演男優賞を受賞した著名監督・張芸謀氏の映画「活著」(邦名:活きる)が、1999年には、新鋭派映画監督・婁●(●=火+華)氏の作品で、タイム誌で「10大映画」にランクインした「蘇州河」も、国内では上演禁止になっている。

1989年の北京天安門広場で、政治改革を求め民主運動を起こした大学生を武力弾圧した「天安門事件」に触れたラブストーリー映画「頤和園」は、完成直後の2006年5月、中国当局の審査許可を得られないまま、カンヌ映画祭に参加した。後に婁監督とプロデューサーの耐安氏は、5年間映画製作禁止の処分を受けた。同映画には、汽車に乗り天安門広場に駆けつける3人の大学生や、車が焼かれるなどのシーンが20分ほどあった(映画の放映時間は150分)。

中国当局の処分に対し、婁監督は、「これは政治映画ではない。私はあの時代を生きた若者であり、我々は民主などを熱望しており、如何なることも実現可能だという理想を抱いていた。しかし、今になって、それは夢、幻覚であることが思い知らされた」と無念さを語った。

米国在住の中国問題研究者・伍凡氏は、「どんな映画であろうと、政治上正しくないとされれば、そのために内容が削除され、場合によっては上映禁止になる。このような異常なことは、中国においては、ごく普通であり、正常な現象である」と指摘し、「中共は映画を政治宣伝の道具として使い、おだて上げられるのを異様に好んでいる。もちろん、中共の悪口を言うなど許されるはずもない」として、中共の映画審査のあり方を非難した。

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