猛暑が欧州の食卓を脅かす 野菜・穀物減産 食品価格高騰の懸念

2026/08/05 更新: 2026/08/05

欧州で今夏、猛暑や干ばつ、山火事が農業を直撃している。フランスでは一部野菜の収穫量が半減する恐れがあり、スペインでは穀物生産量が500万トン超減少する見通しだ。オリーブオイル価格も今秋に再び上昇する可能性が指摘されている。

英紙ガーディアンによると、欧州各地の農業関係者は、異常気象による収穫量の減少と生産コストの上昇に警鐘を鳴らしている。経済学者は、今夏の熱波が今後数か月で食品価格に波及し、その影響はイラン紛争によるエネルギーや肥料価格の上昇を上回る可能性があるとみている。

フランスやスペインで減産深刻 ワインやオリーブにも打撃

フランス野菜生産者協会(Légumes de France)は、レタス類やニンジン、ポロネギ、ニンニク、タマネギなど数千トン、数千万ユーロ相当の農産物が被害を受けたと発表した。降雨不足により、一部作物の収穫量は半減する見込みだという。

猛暑はシャンパーニュやボルドー、ブルゴーニュなど主要ワイン産地にも影響を及ぼしている。シャンパーニュ地方ではブドウ収穫量が前年より約10%減少する見通しで、収穫開始は今月15日前後となり、過去最も早い収穫になる可能性がある。

スペイン農業省は、2026~27年度の穀物生産量を1850万トン強と予測した。前年の2400万トンから大幅な減少となる。この推計には山火事による追加被害は反映されていない。

欧州連合(EU)も収穫予測を下方修正した。ヒマワリは7%、穀物用トウモロコシは6%、ジャガイモと大豆はそれぞれ3%引き下げた。

ギリシャ、イタリア、ポルトガルではオリーブ農園が山火事の被害を受けた。火災を免れた地域でも灰の飛散や大気汚染に加え、高温による害虫の増加や病害の拡大、暴風雨などが果実の生育に悪影響を及ぼしている。

世界のオリーブオイル価格はここ数カ月で再び上昇している。英国ではエキストラバージンオリーブオイル1リットル当たりの平均価格が7ポンドを超える水準が続く。

オリーブオイル団体「Citizens of Soil」の創設者サラ・バション氏は「天候が改善しなければ、原料となるオリーブの供給減を背景に、秋には価格が上昇するだろう」との見方を示した。

また、オリーブオイルブランド「Filippo Berio」の英国事業責任者ウォルター・ザンレ氏は、最大生産国スペインでも干ばつによる落果が懸念されると指摘。「果実の減少と収穫時期の前倒しは、来年の生産量と市場価格を左右する重要な要因になる」と述べた。

英国は輸入拡大 一方で豊作の地域も

英国でも干ばつが続き、レタスやブロッコリーなどの調達先をスペインなど海外へ切り替える動きが広がっている。農家は一部食品の供給不足を懸念している。

英国の食品輸入会社ユーロスター・コモディティーズのジェイソン・ブル社長は、小麦など冬作物は熱波で登熟期間が短縮され、成熟と収穫が早まった結果、粒が十分育たず、品質と収量が低下していると説明した。

トウモロコシやヒマワリなど夏作物への影響はさらに深刻だ。開花期の高温と乾燥が受粉や生育を阻害し、大幅な減収につながる恐れがある。灌漑農地は比較的良好な状況にあるものの、水需要の増加や取水制限が新たなリスクとなっている。

一方、トルコでは春の低温多雨により冬作物は過去最高の収穫となった。夏作物も順調に推移している。

欧州委員会は、イタリアの軟質小麦生産が単収の改善で約10%増加すると予測。干ばつから回復したルーマニアでも農業生産が持ち直し、トウモロコシ生産量は820万トンと、昨年の政府推計775万トンを上回る見通しだ。

熱波が来年の食品インフレ押し上げ要因に

英オックスフォード・エコノミクスは、今夏の熱波による食品価格への影響は、イラン紛争によるエネルギー・肥料価格の高騰を上回る可能性があると分析した。

同社の上級エコノミスト、トマス・ドボルザーク氏は「今年の熱波は、来年の食品価格を戦争以上に押し上げる可能性がある」と指摘した。

同社は、原油や肥料、農産物価格の上昇が重なれば、今後1年間でユーロ圏の食品インフレ率を約0.5ポイント押し上げると試算。異常気象だけでも来年の食品インフレ率を最大1ポイント押し上げ、2027年には約3%に達する可能性があるとしている。

また、勢力を強めつつあるエルニーニョ現象が異常気象をさらに激化させ、農作物の供給不安を高める恐れがあると指摘。価格上昇圧力は2027年上半期に強まり、下半期には徐々に和らぐとの見通しを示した。

欧州中央銀行(ECB)も、気候温暖化の進行に伴い、同程度の熱波でも将来的には収穫減や食品価格上昇の影響が一段と大きくなる可能性があると分析している。

陳霆
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