「日中関係に構造的変化」 反日感情をあおり続ける中国共産党 

2026/09/19 更新: 2026/09/19

「九・一八事変」から95年となるのを前に、中国共産党(中共)は「反日」を大々的に宣伝している。中国では2年前の同じ日に日本人が襲撃される事件が起きており、在中国日本大使館はこのところ、中国に滞在する日本人に相次いで安全上の注意を呼びかけている。中共当局や中共系メディアによる日本への批判も強まっている。中国から日本を訪れる旅行者は最近、大幅に減少した。

こうした一連の動きを巡り、日本のシンクタンクは、中共による対日圧力が長期化、複合化する傾向にあり、日中関係が従来の「政経分離」、すなわち政治と経済を切り離して扱う方式から「政経均衡」へ移りつつあると分析している。日本は日米同盟を強化し、価値観を共有する国々との連携を深めるとともに、サプライチェーンの強靱化や経済的威圧への対処能力を高め、より包括的な対中戦略を再構築する必要があるとしている。

中国共産党系メディア、「九・一八」を利用して日本を批判

産経新聞は9月19日、「九・一八事変(日本では柳条湖事件)」から95年となるのに合わせ、中共中央政治局委員の李鴻忠が瀋陽で開かれた記念行事に出席し、日本の侵略者が世界を震撼させる事件を引き起こしたと非難したと報じた。

同紙によると、中共側は高市早苗首相が国会で台湾有事について行った答弁を理由に、日本への圧力を強め続けている。また、これを歴史問題と結び付け、日本を非難している。

中共機関紙「人民日報」は9月18日、評論を掲載し、高市首相の防衛政策について「新型軍国主義」へ一歩ずつ近づいていると批判。「病根を取り除かなければ、日本に未来はない」と警告した。中国外務省の報道官も記者会見で、日本軍国主義の復活を断じて許さないと述べた。

中国外務省は8月15日、高市首相が靖国神社に祭祀料を奉納し、一部の閣僚が参拝したことについて談話を発表し、こうした行動は「再軍備の加速に道を開くものだ」と非難した。

中国で日本人襲撃事件 在中国日本大使館が安全確保を呼びかけ

在中国日本大使館は8月28日、9月3日が中国のいわゆる「抗日戦争勝利記念日」に当たり、日中の歴史に関係する日には反日感情が高まる可能性があるとして、中国に滞在する日本人に安全への注意を呼びかけた。

同大使館は不測の事態を避けるため、外出時には不審者が近づいていないか、周囲の状況に特に注意し、できる限り単独での外出を控えるよう求めた。特に子どもを連れて外出する際には、十分な安全対策を取るよう促した。

日本大使館は9月11日にも、「九・一八」の記念日を前に改めて安全上の注意を発表した。人が集まる場所を避け、外出先では日本語を大声で話さず、日本人と分かりやすい服装を避けるなど、一目で日本人と識別されないよう勧告した。

日本大使館がこうした注意を呼びかける背景には、過去に同様の事件が繰り返し発生していることがある。

2024年9月18日、深セン日本人学校に通う日本国籍の男子児童(10)が、登校途中に学校付近で男に襲われ、翌日未明に負傷が原因で死亡した。

同年6月24日には、江蘇省蘇州市で刃物による襲撃事件が発生した。男が日本人学校のスクールバス乗り場付近で、日本人女性と未就学児を襲い、日本人2人が負傷した。

2012年9月には、釣魚島(日本名・尖閣諸島)を巡る問題を受け、中国各地で大規模な反日デモが発生した。日本外務省の資料によると、当時、日本大使館や総領事館、日系企業が破壊され、日本人が暴行を受けたほか、日本人の乗車やホテルへの宿泊を拒否するなどの嫌がらせが相次いだ。

中共当局が訪日自粛を呼びかけ 中国人旅行者が急減

日本政府観光局が9月16日に発表した統計によると、8月に中国から日本を訪れた旅行者は前年同月比59%減の41万8千人となった。1~8月では約290万5千人で、前年同期比56.7%減少した。

日本政府観光局は、中国人旅行者が減少した理由を明言していないが、中国に関する説明の中で、中共政権が国民に訪日を控えるよう呼びかけたことや、日中間の航空便が減少したことに言及した。

中共の「出入国管理に関する国務院規定」は9月15日に施行された。新規定は、中国国民の出国に伴う安全上のリスクへの対策を強化するもので、第2条では、危険度が最高水準にある国・地域や、人身の安全を著しく脅かす事件が突発的かつ頻繁に起きている国・地域へ渡航しようとする中国国民に対し、必要に応じて渡航を思いとどまるよう働きかけると定めている。

新唐人テレビが中国の関係者の話として伝えたところによると、日本と米国は今年、中共当局が渡航を重点的に思いとどまらせる対象国に指定された。「世界新聞網」によると、新規定の正式施行前から、旅券を没収されたり、ブラックリストに登録されたりしたため、出国できなくなった中国人もいるという。

報道は、インターネット上で明らかにされた事例として、日本に移住して13年になる中国系男性が家族と中国へ帰省した後、日本へ戻る直前に出国を制限され、2036年まで出国できないと告げられたケースも紹介した。男性によると、日本で20年以上にわたって企業を経営し、日本国内に約8千万元(人民元)の資産を持ち、40人余りの従業員を雇用している。日本へ戻れないため、会社経営にも影響が出ているという。

シンクタンク「中共の対日圧力、長期化・複合化」

緊張が続く日中関係について、日本国際問題研究所(JIIA)の政策提言は、高市首相が2025年11月に台湾有事へ言及した後、北京が訪日旅行への警告や輸出制限など、事実上の対抗措置を相次いで講じたと指摘した。中国側は外交やソーシャルメディアを通じ、日本や他国の世論に影響を与えようともしているという。

JIIAは、日本がより包括的な対中戦略を再構築する必要があるとした。具体的には、日米同盟を強化し、価値観を共有する国々との連携を深めるとともに、サプライチェーンの強靱性と経済的威圧への対処能力を高めるよう求めている。

JIIAは「戦略展望2026」で、中共政権が日本に対する外交・安全保障上の圧力を強め、現状変更を図っていると指摘した。その上で、日本はレアアースを含む経済的威圧に備えると同時に、誤算や偶発的な衝突を避けるため、戦略的な意思疎通を強化する必要があるとした。

JIIAの研究によると、中国で日本人の拘束や殺害事件が発生したことを受け、日本社会では中国への渡航に対する懸念が大きくなっている。さらに2025年11月以降、中共政府が国民に訪日を控えるよう呼びかけたため、日中の若者や研究者、地方自治体の交流、経済団体による訪中などが中止または延期されているという。

「戦略展望」は、日本の現行の国家安全保障戦略が前提とする安全保障環境は大きく変化しており、見直しが必要だと指摘した。同時に、誤算や偶発的な衝突を避けるため、戦略的な意思疎通の仕組みを構築する必要があるとしている。

「政経分離」は機能せず 経済そのものが戦略・安全保障上の問題に

日本地経学研究所(IOG)が2026年5月に発表した「『政経分離』から『政経均衡』へ」と題する研究は、従来の日中関係における「政経分離」の方式は、すでに維持することが難しくなったと指摘した。

これまで日本が中国問題に対応する際の基本的な考え方は、「政治は政治、経済は経済」とするものだった。歴史問題や領土問題、台湾問題で摩擦が生じても、日本は中国市場との関係や経済協力を維持しようとしてきた。

しかし、こうした「政経分離」は変化しつつある。その理由は、経済そのものが安全保障の一部となったためである。日中関係は「経済は政治を超越できる」という段階から、「経済そのものが戦略・安全保障上の問題である」という段階へ移行しつつある。

研究は、日中関係における「政経分離」の原則はかつて機能していたものの、政治と経済がますます切り離せなくなる中、日本政府と企業の双方が新たな均衡点を模索しなければならないと指摘している。経済的利益に配慮する一方で、政治的利益を過度に犠牲にしない均衡が求められるとしている。

日中関係に「構造的変化」

中曽根平和研究所(NPI)が2026年3月に公表した「2026年の対中施策と短期・長期設計」は、日中間の問題は単なる政治的摩擦ではなく、世界情勢と連動する構造的変化を含んでいると指摘した。

報告書は、日中両国が抱える問題を「短期」と「長期」に分類した。短期的に対処できる問題として、戦略的互恵関係の回復や対話の拡大、第三国市場での協力の模索といった外交上の摩擦を挙げた。

一方、長期的な問題には、防衛力、グレーゾーンでの活動、経済的威圧、サプライチェーン、軍民両用技術、台湾海峡の安全保障、両国間の戦略認識の相違などが含まれるとした。

中曽根平和研究所は、対中政策では硬軟両面の対応が必要だと提言した。防衛力と経済安全保障を強化する一方で、意思疎通を維持すべきだとしている。

東京大学の川島真教授が2026年5月、戸田記念国際平和研究所に発表した研究「外交的膠着下のパラレルワールド――日中関係の現状と課題」は、現在の日中関係が1972年の国交正常化以来、最悪の状態にあると指摘した。

川島氏は、2025~2026年の状況は、2012年の尖閣諸島国有化をきっかけに起きた日中関係の危機とは全く異なると分析した。2012年は領土問題による激しい外交危機だったが、現在は台湾海峡、安全保障、経済安全保障、米中競争が複合的に作用した結果だとしている。

編集責任者:孫芸

呈工
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