なぜ中露朝は対日攻勢を強めるのか? 裏に潜む中国経済の危機

2026/08/18 更新: 2026/08/18

1 インド太平洋戦略の崩壊

8月12日午前6時ごろ、北朝鮮は弾道ミサイルを日本海に向けて発射した。北朝鮮は6日にも弾道ミサイルを日本海に向けて発射しているが、6日は言わずと知れた広島原爆の日だ。

つまり核武装を公言している北朝鮮は広島原爆の日に敢えて弾道ミサイルは発射して反日的姿勢を明確にしたわけだが、それでは12日発射の意図は何なのか? と怪しんでいるうちに真意が明らかになった。

12日、ロシアのプーチン大統領は極東サハリン州でロシア太平洋艦隊の演習を視察し、日本が返還を要求している北方領土について「第2次世界大戦の結果により生じた現実として国際文書で決着している」と述べた。

もちろん、これは虚言で、北方領土問題はいかなる国際文書でも決着していない。従って日本はこの問題を解決すべく返還を求めているわけだが、プーチンは返還交渉を否定して見せたわけだ。

さらに翌13日、ロシアが不法占拠している北方領土の中でも最大の択捉(えとろふ)島をプーチンは初めて訪問した。日本政府は駐日ロシア大使を呼び出して厳重に抗議したが、要するに北朝鮮は、このロシアの動きを事前に察知し、ロシアの反日的姿勢に同調すべく12日にミサイルを発射したのである。

しかも同13日、駐日中国大使はロシア大使と共同で「第2次世界大戦の勝利の成果を否定するあらゆる行為に断固反対する」との文書を発表し、中国としてロシアの反日姿勢を支持する旨を明確にした。

一方、米国国務省は日本の立場を支持し「インド太平洋地域の平和と安定を損なおうとするいかなる行動にも強く反対する」旨を表明したが、実のところ、第2次トランプ政権でインド太平洋戦略への言及は激減しており、この表明も単なるリップサービスの域を出ない。

要するにインド太平洋戦略は崩壊したのである。

インド太平洋戦略は崩壊した。イメージ画像(Shutterstock)

 

2 中露朝同盟の成立

中露朝の連携は以前からあったが、対日攻勢で緊密に連携するようになったのは最近のことである。

5月20日、中国の習近平は、北京でプーチンと会談し、「中露はファシズムと軍国主義を復活させる挑発行為に反対する」旨を述べた。その後、出された共同声明には「日本で加速する再軍事化が地域の平和と安定を深刻に脅かしている」「新型軍国主義」「残酷非道な侵略の歴史に基づき、第2次世界大戦のすべての結果を認める(ことを日本に求める)」など反日的な文言が散りばめられている。

6月9日に、習近平は北朝鮮で金正恩総書記と会談した。正確な会談内容は不明なのだが6月23日、朝鮮中央通信は「中央委員会拡大総会において金総書記が日本の軍事大国化に言及した」旨を報道した。

こうした経緯を見ると、中国が日本の軍国主義の脅威を煽り、露朝が従っている状況が伺えよう。

 

3 中国主導の対日攻勢

7月19日には、中国艦隊がロシアのフリゲート艦と合同パトロールと称して、日本の沖ノ鳥島の排他的経済水域で射撃訓練を行った。このとき射撃を行ったのは中国の駆逐艦だけでロシア艦は射撃をしていない。

その5日後の7月24日、中国の王毅外相はロシアのラブロフ外相とキルギスで会談した際に「日本が再び武装することを決して許してはならない」と述べたという。ところがこの発言は中国側の発表にあるだけで、ロシア側の発表にはない。

明らかに対日攻勢を主導しているのは中国なのである。

 

4 中国はなぜ対日攻勢を主導しているのか?

「日中関係は戦後最悪」などと言われている。その原因は昨年11月の「台湾有事は日本有事」という高市首相の国会答弁だったとされる。しかし、これは嘘だ。そもそも高市首相は昨年11月7日の衆議院予算委員会で「台湾有事は日本有事」と述べていない。彼女は「台湾有事は存立危機事態の可能性」があると述べたのだ。

この認識は2021年7月に当時の麻生太郎副総理兼財務相が示しており、何ら珍奇な発言ではない。しかも中国外務省が高市答弁の撤回を求めたのは答弁から6日も経った11月13日である。

そして、その翌日、中国外務省は中国国民に訪日自粛を呼びかけた。これは明らかに中国政府には中国人の訪日を阻止したい思惑が先にあり、高市答弁はその後付けに過ぎないことを示していよう。

 

5 対日攻勢の裏側

5月24日放送されたNHKスペシャル「潤日の肖像」は日本に移住する大量の中国人富裕層の実態を報道して各界に衝撃を与えた。日本に在留資格を持つ高度専門職の中国人はこの数年急増しており、2022年は11696人だったのが2025年には同年6月時点で21369人となっている。

中国経済の減速と富裕層の海外流出および下落トレンドのチャートのイメージ画像(Shutterstock)) 

この原因として番組の中で日本に帰化した元中国人が「中国の経済は毎年減速しています。今まで稼いできた資産がこれでなくなるんじゃないか、それが根本的な原因」の一つだと述べている。

これを裏付けるのが産経新聞8月1日付「実はマイナス成長の中国に騙されるな」(田村秀男記者)である。中国政府は4%以上の経済成長を喧伝しているが記事によると2025年以降マイナス成長だという。

中国はパスポートの発給を制限するなど、中国人の海外流出を止めようとしている。すなわち中国の対日攻勢の真の目的は中国の富裕層の流出を食い止めることなのである。

 

軍事ジャーナリスト。大学卒業後、航空自衛隊に幹部候補生として入隊、11年にわたり情報通信関係の将校として勤務。著作に「領土の常識」(角川新書)、「2023年 台湾封鎖」(宝島社、共著)など。 「鍛冶俊樹の公式ブログ(https://ameblo.jp/karasu0429/)」で情報発信も行う。
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