1.東南アジアに二つの空母保有国
9月18日、インドネシアの首都ジャカルタ北部の港にイタリアの空母ジュゼッペ・ガリバリディが入港した。これは親善訪問ではない。この空母はイタリアからインドネシアに譲渡されたのだ。
空母ジュゼッペ・ガリバリディはイタリア海軍初の空母として1995年に就役した。ちなみに同時期、東南アジアのタイもスペイン製の空母を取得している。艦載する戦闘機は、ともに垂直離着陸機として有名なハリアーであった。
だが今やハリアーは老朽化し、イタリアを含め各国で退役している。ヘリコプター空母として使用することは可能だが、イタリアでは最新鋭戦闘機F35を搭載できる後継艦カブールが就役しており、ジュゼッペ・ガリバリディは2024年に退役に至った。
それにインドネシア海軍が関心を示し、今回譲渡されたわけだ。
かくてインドネシアはタイに続き東南アジアで2番目の空母保有国となったのである。
2.中国の海洋進出の脅威
だがインドネシアがなぜ空母保有に踏み切ったか? それは言わずと知れた中国の海洋進出への対抗措置である。実はタイが1990年代に空母を取得したのも、中国の南シナ海進出に対抗する狙いからだった。
1990年代と言えば、米軍がフィリピンから撤退し、南シナ海に巨大な力の真空が生じた時期だった。経済力の強かったタイは、空母取得に踏み切ったが、経済の脆弱なインドネシアにとって空母は高嶺の花だった。
タイとて1997年のアジア通貨危機で経済的に大打撃を受けたから空母と戦闘機を取得したものの、それらを十分に運用することはできなかった。
中国は、と言えば海洋進出を徐々に本格化させつつあったが、駆逐艦や潜水艦を近代化するのに精一杯で、空母を保有するなどとは考えられない状態だった。1998年にウクライナから建造途中で廃艦となった空母を購入した際も洋上ホテルに改造する計画だと喧伝されたのである。
しかし2012年、同艦は空母遼寧として就役し、その後、空母山東、空母福建が就役し、中国の海洋進出の脅威に日本を含むアジア諸国はさらされるに至ったわけだ。
3.戦闘機なき空母の使い道
しかしインドネシアが空母を入手してもそれに搭載する戦闘機がないのでは、戦闘力としては力不足では、ないかとの疑問の声が生じて当然だ。インドネシア側は中国を刺激しないように、ヘリコプター空母として運用するとしている。
しかし実は戦闘機に頼らない空母の運用方法は他にもある。ウクライナではもはやドローンが戦闘機を圧倒する能力を示している。インドネシアもタイも実のところ、ドローン空母としての運用を考えている。
インドネシアやタイの空母から発進したドローン編隊が中国の空母打撃群を壊滅させる可能性は将来的に十分あるのである。

4.インドネシア懐柔にでた中国
7月7日、インドのモディ首相はインドネシア大統領プラボウォとジャカルタで会談、インド製の巡航ミサイル「ブラモス」と空対空ミサイル「アストラ」の輸出で合意した。これが中国にとって脅威に映らないはずはあるまい。
しかも13日後の7月20日、インドネシア国防省は9月中旬にイタリアから空母が到着すると正式に発表したのである。これも中国を刺激しないはずはない。
それで中国は激怒したかと言えば、全く逆だ。8月12日、中国とインドネシア両海軍は台湾東方で合同航行訓練を実施した。8月21日にはジャカルタで両国の外相・国防相会談いわゆる2+2を実施した。
つまりインドネシアの軍拡に恐れをなした中国が懐柔策に出たわけだ。
5.追い詰められた中国
8月31日、南太平洋の島国パラオで開かれた太平洋諸島フォーラムには台湾の外相が参加した。これに激怒した中国の代表が退場。ところがこれが裏目に出て、首脳声明には7月6日に中国が南太平洋にミサイルを発射した試験を懸念する文言が盛り込まれてしまった。
中国の外交的失敗はこれにとどまらない。9月1日、アメリカ国務副長官ランドーは南太平洋のクック諸島で同島のブラウン首相、ニュージーランドのピーターズ外相と会談し、同島のペンリ環礁の深海港建設に5千万ドル拠出することで合意した。
ニュージーランドはクック諸島のEEZに軍事アクセス権を持っているから、これが完成すればニュージーランドの軍港として使用できることになる。
ここが中国の南太平洋進出の防波堤になることは明らかだ。
中国の海洋進出に南太平洋諸国が一斉にノーを突き付けているのである。

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