四川大地震、愛国報道の裏に潜む親の叫び

【大紀元日本6月15日】四川大地震発生から1ヶ月の6月12日、中国当局が北京市で救援活動の「英雄と模範人物」の事跡報告会を開いた。内部情報筋によれば、校舎欠陥建築問題などの「負の報道」が全面的に禁止され、愛国精神を高揚させるため、救援活動での英雄の事跡報道が要求されている。また、現地では、警察の厳しい検問が敷かれ、外国メディアの関連取材が取り締まりを受けている。

中央宣伝部(注:メディアを監督・管理する最高政府機構)は地震発生直後、国内メディアに対し、地震救援活動における政府の重要な役割を突出・強調するための「いい影響力をもたらす報道」をするよう、内部通達した。

そのために、中国当局は被災地を開放し、国内外のメディア記者による現地での報道が実現された。これらの措置は国内外で評価されていた。

そのような状況の中、中国のメディアも日ごろ報道できない敏感な問題も伝え始めた。例えば、被災地で多くの校舎が全壊し、大勢の生徒が下敷きとなり死亡したことについて、メディアが校舎の欠陥建築問題を取り上げ、現地の幹部汚職との関連などを追及し始めた。

香港大学の中国メディア研究のHPによれば、広東省のトップ汪洋・書記長がこのほど、被災地で取材する同省の記者全員の召還を命じた。省内の新聞社「南方報業集団」が校舎の欠陥建築問題をシリーズで報道したため、社会で強い反響を起こした。そのことが強制召還の原因だという。

AFP通信によると、6月12日、被災地で十数人の外国メディア記者が警察の厳しい取り締まりに遭い、その際、撮影機材が壊された。あるベルギー人記者は、「我々が見たのはメディア代表者への全面的な捜査。警官と軍人が被災地に入る道を封鎖、すべての車両を検査する」と話した。

また、各方面からの内部情報によれば、中国宣伝部は国内メディアに、地震に関する「マイナス報道を全面禁止する」と内部通達した。関連のテーマは官製メディアの報道から消え、インターネットサイトでの書き込みも削除され続けている。

北京市在住の経済学者で、独立評論家の彭定鼎氏は米国VOAの取材に、「いま、被災地の校舎の欠陥建築問題は報道禁止となった。マイナス報道は一切禁止。救援活動での英雄と模範的事跡を大々的に取り上げ愛国精神を高揚する。これは中央宣伝部の内部命令。幾つかの情報ルートでこのことを確認できた…」と証言した。

現地からの情報によると、子どもを亡くした親たちは、欠陥建築問題の調査と責任追及などを求め、追悼と抗議活動を行っていたが、現在は全面禁止となった。倒壊した校舎は警察に封鎖され、現場への立ち入りはできない。追悼活動に参加し、6月12日に一時警察に連行された一人の母親はラジオ自由アジア(RFA)の取材で、親御さん同士の連絡も禁止されていることを明かし、「これは一体どういう社会なのか、亡くなったわが子を追悼することすらできない…」と無念さを表した。

(翻訳・編集/叶子)

関連記事
2023年5月25日に掲載した記事を再掲載 若者を中心に検挙者数が急増する「大麻」(マリファナ)。近日、カナダ […]
中国共産党が7月に反スパイ法を改正し、邦人の拘束が相次ぐなか、外務省が発表する渡航危険レベルは「ゼロ」のままだ。外交関係者は邦人の安全をどのように見ているのか。長年中国に携わってきたベテランの元外交官から話を伺った。
日中戦争の勝利は中華民国の歴史的功績であるが、これは連合国の支援を受けた辛勝であった。中華民国は単独で日本に勝利したのではなく、第二次世界大戦における連合国の一員として戦ったのである。このため、ソ連は中国で大きな利益を得、中共を支援して成長させた。これが1949年の中共建国の基礎となった。
香港では「国家安全法」を導入したことで、国際金融センターとしての地位は急速に他の都市に取って代わられつつある。一方、1980年代に「アジアの金融センター」の名声を得た日本は、現在の状況を「アジアの金融センター」の地位を取り戻す好機と捉えている。
米空母、台湾防衛態勢に 1月29日、沖縄周辺海域で日米共同訓練が挙行された。日本からはヘリコプター空母いせが参 […]