アルゼンチン江沢民訴訟案件、弁護士が詳細を語る

【大紀元日本12月25日】先週、アルゼンチン連邦裁判所のラマードリッド裁判官は、中国前国家主席・江沢民と前政法委員会書記・羅幹の両被告に、精神団体法輪功への集団弾圧を主導したことで、ジェノサイド(集団虐殺罪)と拷問の罪で刑事訴訟手続を起動し、逮捕状を発行すると裁定した。同国では「普遍的管轄権」や「引き渡し審理」を行使して人道に反する犯罪を追及する初のケース。本案件に関わる弁護士、Alejandro Cowes氏が本紙のインタビューを受け、その経過と進展などについて語った。

以下は、そのインタビュー内容。

裁定の過程、結果 

2006年、アルゼンチン法輪大法協会が、アルゼンチン連邦裁判所にこの訴訟を提起し、中国で発生している法輪功学習者への迫害を調査するよう求めた。Araoz de Lamadrid裁判官が勇敢にこの案件を受理した。Lamadrid裁判官は、人権保護の国際情勢に遵って反人類的犯罪の中で、司法による正義的な保護手段を被害者たちに提供している。

4年間にわたって調査、証拠収集を経て、12月17日、Araoz de Lamadrid裁判官は、刑事訴訟の手続を起動し、江沢民と羅幹を逮捕するよう裁決した。

法輪功学習者への迫害を続ける政党と組織が中国でなお存続しているため、被告らが中国で逮捕されることや、その身柄を引き渡すことができかねることを考え、裁判官は国際刑事警察機構に逮捕令を下したのである。二人の被告は外国を訪れたら、直ちに逮捕され単独に監禁されることになる。

身柄を引き渡せるのは、アルゼンチンと身柄引き渡し条約を結んでいる国に限られ、同条約未締結の国の場合は当該国が協力するか否かによる。

一旦、江沢民と羅幹両被告の身柄が引き渡されたら、裁判官はサインした陳述書が得られ、そして審判を行うのである。

未曽有の案件

アルゼンチンにおいて、治外法権の刑事訴訟が受理されたのは初めてである。世界的に見ても、この案件はきわめて特殊で、中共独裁者に裁判官が逮捕令を出すのは初めてのこと。本案件は「普遍的管轄権」を適用し、今もなお発生している犯罪である。

この案件でもっとも注意すべきなのは、犯罪数量の多さと深刻さを摘発したことであり、犯罪は今もなお発生していることである。

現時点では、ほとんどの人道に反する罪の案件は、10年~20年前ないし70年前の犯罪に対するものだが、われわれが取り扱っているのは、すでに発生した罪に対して譴責、正義を求めるものではない。

この案件に関して、Araoz de Lamadrid裁判官は、決定に十分足りる証拠に基づいて、今もなお発生している犯罪に責任を負うべき被告らに、刑事訴訟の手続きを起動することを決定した。この迫害によりすでに50万人が行方不明となっているが、裁判官の決定はこの迫害を終わらせる端緒になるかもしれない。

つい最近スペインでも似たような案件があった。裁判官Isamael Moreno氏はすでに外交ルートを通じて、被告らに調査文書を発行した。スペインでのこの案件は、現在被告の回答を待つ最後の段階にあり、期限が過ぎたら、被告らに逮捕令が発行されることになる。

本案件の証拠

十数人が証人として、北米、欧州、豪州などからアルゼンチンにやってきた。中共の邪悪な人権侵害について証言、証拠は具体的でかつ深刻なもの。録音と録画の資料、そして人権分野で広く認められる独立系団体組織が出版した調査報告なども数多くある。

これらの報告の中で、国連酷刑問題特別調査員Manfred Nowak氏が作成した国連人権委員会第62回会議の報告、カナダ前外務省アジア太平洋局長でベテラン国会議員Daved Kilgour氏と著名人権弁護士David Matas氏が2006年に出版した「生きている法輪功学習者への臓器狩り」などを含んでいる。

こういった証拠を前にして、この犯罪は確実に発生していると確信した際、Araoz de Lamadrid裁判官のような正義者は、真理のために戦って裁判するよりほかに選択の余地はない。

個人の立場からすれば、われわれはみな道徳によって善と悪を区別しているのだが、邪悪を前に、人々は違う選択をする。無視することを選択する人もいれば、適切な手段で被害者を助けようと選択する人もいる。わたしからすれば、法輪功迫害の犯罪者に対し裁定を行ったのは、裁判官が単に法律などに基づいて裁いただけではなく、道徳の法則にも従ったからにちがいない。

指標的な範例

より適切な言い方をすれば、この裁定は中国人にとって60年続く中共の独裁暴政を終わらせる端緒となることを意味している。

国家権力を乱用し、国民の思想と信仰の自由を抑圧する残酷な犯罪に対し、最も有効かつ精確な司法をもって行うべきであり、アルゼンチンはこの過程で重要な役割を果たしている。この案件をもって、我が国は実際、すでに国際法を実施し人権を守る世界の最先端に立つことになった。なおかつ、これは指標的な範例となり、これは今の世界においては、いかなる時よりも遵わなければならない方向性なのである。

少なくとも、Araoz de Lamadrid裁判官はすでにこういったレベルに達しており、これからは我が国が裁判官と同様にこのようなレベルに達することができかどうかである。

邪悪な政権に対し、勇気あるLamadrid裁判官は正義の裁定を行った。この裁定は、国際社会にとって、一つの警鐘ともなるのである。

ルーマニア駐アルゼンチン大使のかつての発言を思い出す。「共産主義独裁のもとで暮らしたことのない人々にとって、そこでの生活が何を意味するのかは知るすべもない」。2005年11月にベルリンの壁崩壊記念日の集会で言ったことばだが、大使の言葉は今も記憶に新しい。

独裁政権は、国民に、生まれた時から死ぬまであらゆる面で忍耐し切れないほどの制御・弾圧を強いてきたのだろうと思う。4年来、わたしは、関係の調査報告、参考文献、関連会議録および証人の証言などなどを読んできたが、それらを通して、少しずつ大使の言ったことを理解できるようになったと思う。

この共産主義の独裁政権は、国民の財産を大量に略奪し、国民への弾圧を維持するためのものであり、民主社会の有する信仰・結社・思想および自由がないのである。今回の案件に関わり、中共独裁政権の残酷さを暴く過程の中で、わたしは何の遺憾もないと感じている。

(記者・林琳、翻訳編集・小林)
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