「2010アジア競技大会」の反テロ演習、農民工を仮想の敵に=広州市
【大紀元日本1月3日】中国広州市公安当局はこのほど、給料の支払いを求める出稼ぎ労働者(農民工)たちが集団事件を起こしたと想定する「反テロ演習」を行っていた。それに対し、国内外の中国語メディアは「未払いの給料を求めるのは正当な行為。それをテロとみなすのはおかしい」と指摘、「行き過ぎた演習」と非難している。
毎年、中国の旧正月は民工が故郷へ帰る時期。民工の中には、一年分の給料が旧正月前にまとめて支払われることも多い。その時、雇い主からの給料支払いの遅延や、不払いなどのトラブルが発生するケースも多く、近年では深刻な社会問題となっている。
広州地元紙「信息時報」の報道によると、2010年11月に広州で開催される「2010アジア競技大会」に向けて、広州市公安局はセキュリティ向上の一環として「反テロ演習」を行った。演習内容の多くは、「民工が未払いとなっている給料を求め、集団事件を起こす」という想定で行われた。
これに対し、中国国内のメディアは、広州当局が民工を「テロリスト」とみなしていることを批判。「給料を求める労働者の行為は、テロ行為とは無縁。未払いとなった給料を求めるのは正当な訴えであり、労働者は自分の給料を求める権利がある。これまで、給料の支払いを求める労働者らが深刻な破壊や大量殺人などを行うといった事件は一回も起きていない」。
湖北省の「武漢夕刊」は、未払い給料を求める農民工を仮想の敵にすることは、却って農民工の権利主張行為を反政府の方向に変質させる危険性があると指摘した。
香港「東方日報」の評論記事では、「以前は、未払いの給料を求める農民工の行為を人民内部の矛盾と見なしていたが、現在は敵・味方のほうに転換してしまった。この変化は、共産党政権の執政基盤に重大な変化が現れている兆候である」と指摘する。
近年、各地方が制定した反テロ案は、ほとんど民衆を弾圧する措置ばかりで、当局がそのまま高圧的手段で民衆の不満を抑えると、民衆が爆発するリスクがますます増える、と東方日報は指摘する。
給料不払いなどのトラブルに巻き込まれた民工の中には、企業の経営者に雇われた暴力団から暴行を受ける被害者も多い。08年2月、山西省に出稼ぎに来ていた湖北省出身の十数名の農民工が、給料の支払いを求めた際に暴行を受け、6人が重傷、多数が負傷するという事件が発生している。また昨年11月、杭州市にある服飾会社の社長は、「俺は金を持っている。10万元(約130万円)払えば、お前たちの片手を買うことができる」と女性の民工を罵り、暴力を振るった事件もあった。