「世界水の日」に特大干ばつ 深刻化する中国の水汚染問題
【大紀元日本3月25日】「世界水の日」の3月22日、四川省重慶市武隆県魚光村の村民劉碧霞さん(60代)は、バケツの水を前に涙を流した。3日間も飲む水がなくやっと手に入れた水だ。昨年9月から続く雨のない日々で、村のすべての水資源がなくなり、生まれてから初めての光景だと劉さんは話す。中国の西南部で、2千万人もの劉さんのような人々が、「世界水の日」を迎えた。
その日、中国各主要紙はトップで、西南部が遭遇する特大干ばつに関する報道を載せた。ほぼ、政府や軍部が全力を尽くして災害を救済していると謳歌する内容で一色だったが、中には本音を隠せず、中国全土の水危機に対して悲鳴を上げる声も聞こえる。政府報道機関紙の新華報業ネットは、「我が国の経済発展モデルは大きな成果を見せているが、資源の利用効率が低く、環境汚染が深刻で、すでに持続不可となっている。その中でも、水汚染は、深刻の中の深刻の問題だ」と警告する。
大干ばつに見舞われている中国では、2千万の人々の飲用水不足や数千万畝(1畝は6・667アール)の農地に撒くための水が無いと焦っているが、汚染問題が中国の水源の乏しさを招いた重要な要因の一つであると言っても良い。
川筋汚染により小村で癌患者が急増
米VOA放送のその日の報道は、河北省住民馮軍さん一家の水使用問題を伝えている。馮さんの住まいは北京の天安門広場から50キロの河北省廊坊地区にある。彼の家の付近にコールドローリング薄板工場ができた時、工場の食堂が彼の家から魚やアヒルを購入してくれたため非常に喜んだ。しかし、工場から排出される大量の汚水は、彼と彼の村の人々にひとつ、またひとつと悪いニュースを運んできた。
「地下水は全て汚染された。家の井戸からもヒ素とマンガンが検出された。工場が来てから毎年癌で多くの人が死んでいく。白血病、食道癌、胃癌や肝臓癌など、どんな部位の癌もある。一昨年、この村では5、60人がなくなったと報道されたが、昨年更に十数人が死んでいる」と馮さんは嘆く。
馮さんの娘の亜楠さんもこの被害者の一人だ。06年初め、亜楠さんは白血病と診断され、2年目にわずか17歳の若さでこの世を去っている。
4分の1の中国人は安全な水を飲めない
グリーンピースによると、中国では3・2億人の水が安全ではない。つまり中国人の4人に一人が安全な水を飲むことができないことを意味する。
公衆環境研究センター馬軍主任はVOAに対し、国家が公表しているデータからみると、06年に観測した通水断面の60%が比較的深刻な汚染を受けていた。この2年ほどは比較的良い状態になってきているが、それでも半分ほどの断面は深刻な汚染状態にあると話している。
北方の河流汚染が深刻
また、馬主任らの調査により、黄河、海河、淮河、遼河など北方の主要河流が深刻な汚染状態にあることが明らかになっている。
「たとえば海河流域だが、データから見ると60%前後の河流や河の区間が劣5類の状態であり飲用には使用できず、接触すべきではないうえ、工・農業にも使用できず、景観用としても使用できない、すでに価値の無い河流になってしまっている」
水資源の豊富な南方でも水汚染に頭を悩ませている。太湖、巣湖および西南地区の主要淡水湖である滇(てん)池は富栄養化によりアオコの被害が非常に深刻だ。アオコは水中の酸素を吸収し魚を酸欠死させ、水質も破壊している。アオコ自体も有毒であり、この毒素が含まれる水を長期間飲用すれば深刻な疾病を招くだろうと馬氏は指摘している。
「実際、東部の人口密集地区では、本当に正常できれいな河流を見つけだすことは非常に難しい」
農業源と生活汚染が汚染を深刻化
人々は水汚染が工業廃水によるものだと思いがちだが、実は農業の水に対する汚染はすでに工業を超えている。昨年行われた初の中国全国汚染源調査により、化学肥料や農薬の大量使用および家畜水産養殖場と屠殺場が排出する汚染が全国の河流や湖を深刻に汚染していることが明らかになった。
中国環境保護部の張力軍副部長は、昨年の農業源の化学的酸素要求量(COD, Chemical Oxygen Demand:水中の被酸化性物質量を酸化するために必要とする酸素量で示したもの)の排出量は1千324.09トン。これはCOD排出総量の43・7%を占める。農業源も窒素やリン排出の主要発生源だ。我が国の水汚染問題を根本から解決するには、農業源の汚染予防対策を環境保護の重要議事日程に入れる必要があると述べた。
CODは水汚染の度合いを判断するのによく使用される尺度だ。全国の汚染源調査結果もやはり第三次産業を含む生活汚染源排出のCODは農業源の次に並び、工業源をはるかに上回っている。生活汚染源はホテル業、飲食業、洗濯・染物業を含む都市農村住民の生活汚染等を指す。
水を守った一部干ばつ地区は水使用できず
深刻な水汚染により、大干ばつの年に水を守った地域も水を使用することができない状態だ。「南方都市報」によると、貴州省水成県は主要河流2本が通り、水不足になるということはなかった。しかし鉱業の盲目的発展により、水資源が深刻に破壊されたため、生活や生産の需要を全く満たせないという。
現地政府職員の話では地下水汚染が深刻で、一部下流の水源はもともと飲用には適さない。基準値以上の重金属を含んでいるため畑に撒くことも問題になっているという。
干ばつが水汚染を悪化
馬氏いわく、水汚染と水資源の間には悪循環な関係があるそうだ。
深刻な水不足は、川筋や湖に新しい水を常に補給することができない。どれほど汚水が流れ込んでも、いかなる希釈や自己清浄もできないため、ここの汚染はひどくなる一方だ。同時に、更に深刻なことに、これらの汚水は簡単に10倍、数10倍の汚染資源になるのだという。
部分的に改善、全体はさらに悪化
一部の環境保護活動家は政府が水汚染問題を重視し、一部の措置をとっているとはいえ、中国では現在、一部に改善が見られるが全体的には悪化しているという状態だと指摘している。活動家たちは当局に対し、更に力を入れ、構造上からの問題解決、特に法の執行実施と地方保護主義問題を克服する必要があると呼び掛けている。