巨額の不良債権や地方債務 中国経済、景気刺激政策の後遺症が現れる
【大紀元日本7月28日】2008年の金融危機発生後、中国政府が8%の成長率を保つために打ち出した4兆元の景気刺激政策は、2年後の現在、そのネガティブな影響が現れ始めた。一番顕著な問題は不良債権の急増で、中国の銀行には2000億ドルあまりの不良債権が顕在化しつつある、と一部の専門家が指摘した。
10兆元にも達する地方債務
その一例が、蘇州の工業開発区の発展。米放送局VOAの中国語サイトが26日、この問題を取り上げた。
「景気刺激政策が実施された当初、蘇州市政府は銀行から大規模な融資を受け、その後蘇州の土地などの国有資源を担保にし、更に大規模な融資を受けた。債務の償還はあまり考えられていなかったみたいだ」と開発区の幹部がVOA記者に語った。
このような例は全国随所に見られる現象である。過去2年間、4000ヶ所の蘇州のような都市の融資総額はすでに7.7兆元に達しており、2011年には、地方負債はおそらく10兆元に達し、3年以内にこの数字は倍になるだろう、と中国社会科学院の専門家である劉煜輝氏が予測している。中国の地方負債はすでに12兆元に達していると予測している研究機関もある。
イギリスのベテラン中国経済学者マーク・ウイリアムズ(Mark Williams)氏はVOAに、「過去18ヶ月、巨額の銀行融資が地方に流れ、しかも大部分はインフラ整備に用いられた。これらの融資は回収しにくいものであり、最終的に不良債権になりかねない」とコメントした。
2280億ドルの不良債権
アメリカの有名な中国経済理論家ゴードン・チャン(Gordon Chang)氏によると、昨年1年間の中国の銀行の融資額は95%増加した。「これらの融資は経済の需要に合わせて出したものではなく、経済を刺激するために政府が強制的に銀行に出させたものである。これらの融資の大部分は地方に流れたため、不良債権が急増してもおかしくない」と同氏は指摘した。
不良債権の比率に関して、現在様々な説が飛び交っている。ブルームバーグプレスは、地方に流れた7.7兆元の融資の中、不良債権率は23%に達する可能性があるという。香港バーンスタイン(Bernstein)研究機構のベテランアナリストであるマイク・ワーナー(Mike Werner)氏の予測は25%。ブルームバーグプレスのある内部アナリストは、匿名を条件に、回収できる資金は全融資の27%しかなく、不良債権はおよそ7割との驚きの数字を予測した。
フィナンシャルタイムズ26日付けの記事で、「中国の銀行は現在、2280億ドルの資金が回収リスクを伴っており、不良債権になりかねない」と報道した。
ゴードン・チャン氏によると、「中国の不良債権率は20世紀の90年代より低いが、この比率が急速に拡大していることは間違いない。融資スピードを下げなければ、90年代の不良債権率に追いつくのは時間の問題だ。不動産市場の不振と株式市場の弱気が、銀行融資の回収にとっては泣き面に蜂である」
一方、このような悲観的な見方と異なり、マーク・ウイリアムズ氏は「北京は不良債権対処に経験があり、しかも不良債権の影響は徐々に現れるため、将来のある一定期間、中国銀行システムの世界経済に与えるネガティブな影響は限られているだろう」と楽観的な見方を示している。