死体溢れる被災地、一家53人が犠牲 甘粛省土石流、5年前にも警告
【大紀元日本8月12日】中国甘粛省の甘南チベット族自治州舟曲県で今月8日に起きた土石流災害で、現地当局は11日夜、死者は1117人に上り、627人が行方不明となっていると発表。9日に発表された死者の数を大きく上回る数となった。一方、香港や海外メディアの報道では、死者と行方不明者の数ともに政府発表の数倍であり、死者は8000人以上との見方を示している。
現地入りした香港「明報」の記者の現場からの報道によると、県政府のある街では、すぐ目に付くところに死体がころがっており、悪臭が漂い、目を覆いたくなるような光景がいたるところに見られるという。マスクなどの医療品の不足は深刻で、救援現場でも、多数の人がマスクなしで遺体の発掘を行っていたという。
月圓村:一家53人が亡くなった
明報の記者の報道によると、県政府に一番近い月圓村は、300世帯で人口は2000人だったが、助かった人はほんのわずかだった。生存者の一人、劉吉琴さんは、両親、兄弟、子供を含めて、3世代53人の家族を亡くした。
両親、兄、息子の遺体はすでに見つかった。父は、体の一部を失いながらも、孫を守るような姿勢で
8月11日、巨大な土石流に見舞われた舟曲県で、子供の遺体を抱えて泣き崩れる母(Getty Images)
亡くなっていた。2年前の四川大地震で、劉さん一家が住んでいた家は倒壊したため、父親は自分の貯金をはたき、銀行でも40万元のローンを組んで、新しい家を立ててくれた。「新築の家と一緒に父も亡くしてしまった」と劉さんは泣き崩れた。
月圓村のほかに、三眼村と春場村も、ほぼ全域が土砂に埋まった。中国国土資源専門家チームの調査によると、土石流により流された土砂と石は180万立方メートルで、突然、村を襲い、丸ごと呑み込んだという。
明報の記者は、現地の救援に関わった被災者の話を取材し、死者は8000人以上に上ると報道している。
食糧・飲用水が不足 高額の火葬費に不満の被災者
中国政府によると、被災者数は約4万7000人で、このうち約2万人が
救援物資の分配を待つ長蛇の列(AFP)
避難生活を強いられている。
県の救済部門によると、給水システムが破壊され、商店もほとんど土砂に埋まったため、現在飲用水と食糧の不足が深刻な状況。土石流で道路が遮断されたため、救援物資が現地にタイムリーに届かない。物資の分配に当たって、争いも起きているという。
また、火葬費も高額で、火葬場に送った一部の死体は、家族が費用を払えないため、外に放置されたままである。当局は死者で金儲けをしている、と不満の声も高まっている。
5年前に警告された危険 当局は報道規制
一方、国内メディアによる「マイナス報道」を警戒する当局は、海外メディアや、国内地方紙、大衆紙の取材を禁じ、新華社の報道に準じるよう規定した。
中国国土資源専門家チームは11日、北京での記者会見で、舟曲県が土砂災害頻発地帯で、重点的に監視すべき地域だったことを明らかにした。
甘粛省地方紙「蘭州朝刊」は2005年、舟曲県の水土流失問題を取り上げ、同県に土石流の危険がある場所は86ヶ所存在し、現地住民の安全を深刻に脅かしていると警告した。同報道は、今回の事件発生後、ネット利用者の間で転載され話題となったが、現在、ネット上から削除された。
蘭州大学都市計画専門家の陳懐録氏によると、2008年の四川大地震後、被災地であった同県は「居住に不適切」との判断を専門家が下し、住民の移住を当局に勧めたという。
県史によると、かつて森林や水資源が豊富であった同県は、甘粛
土石流が発生する前の舟曲県。県政府のある街を囲む山は金鉱採掘地であり、森林伐採によりほぼ破壊された(ブログ写真よりスクリーンショット)
省の「桃源郷」と呼ばれていた。50年代から大量の森林が破壊されたため、土砂流失が深刻化していた。
チベット族の著名作家・唯色氏は今回の土石流事件について、ツイッターで討論を行い、現地の情報を収集した。同県の地質調査報告などに基づいて、ダム建設や鉱山採掘などによる森林の破壊が今回の土石流につながったと指摘している。