レアアース禁輸、各国で波紋 米「多元的供給ルート確保」 豪「大きなチャンス」
【大紀元日本9月28日】尖閣諸島沖で起きた漁船衝突事件が原因で、中国によるレアアースの実質上の対日輸出禁止が、世界中で波紋を広げている。アメリカでは中国産レアアースに依存している現状の見直しが進められており、レアアース産出国のオーストラリアでは、中国の輸出制限は同国のレアアース産業にとって大きなチャンスだとの見方が広がっている。中国によるレアアースの寡占構造からの脱出が、世界中で急ピッチに進められている。
レアアース埋蔵量世界3位のオーストラリアでは、今回の中国の輸出制限を自国のレアアース産業のチャンスだと見ている。豪ウェブ経済誌ビジネス・スペクテイターは24日、「ライナス(Lynas )の中国からの贈り物」と題する記事を掲載し、中国のレアアース輸出制限は、探鉱大手ライナス社にとって吉報だと述べている。
昨年5月、中国有色工業集団はライナス社との間で、同社株式の51%を獲得することで合意していたが、豪州政府の外国投資審査委員会(FIRB)は9月、その投資比率を50%以下に抑えるよう求めた。これを受けて、中国有色はライナス社への買収を断念したという。豪州政府は中国企業の買収案による世界レアアースの寡占を強く警戒していた、と関係者は分析する。
ライナス社はその後市場から鉱山開発に必要な資金を調達し、同国の「マウント・ウェルド・レアアース・プロジェクト」の開発に着手した。11年には正式に操業開始し、精錬工程はマレーシアの加工工場で行うという。
今回の禁輸措置は、正に豪州政府が憂慮した事態であり、各国は今後、中国以外にレアアースの供給先を求めるだろうと同記事は分析する。ライナス社にとって、世界で戦略的な地位を築く大きなチャンスだと指摘している。
一方、米エネルギー省は今後数週間以内に、米国産レアアース生産量の拡大や代替材料の開発、効率的な利用法などを目指す戦略を打ち出す予定だという。英紙フィナンシャル・タイムズが27日に掲載した、「レアアースの恐怖はアメリカに政策再考を迫る」と題する記事によると、政策・国際問題担当のエネルギー次官補のデビッド・サンダロウ氏は、「レアアースを含む不可欠な原材料の多元的な供給ルートの確保が重要だ。最近の事件は特にこの点の教訓となった」と中国が仕掛けた輸出禁止を示唆しながら、アメリカの新たな戦略展開の必要性を明確にした。
「十分な供給を確保する行動に出ないと、国家の安全や経済的な安定が脅かされる事態になる」と米下院議員のキャシー・ダールケンパー氏は指摘し、5年以内にレアアースの自給自足を目指す法案を作成。今週内に米議会に提出するという。
さらに、米国防総省の産業問題担当のブレット・ラムバート氏は、同部門に所属するレアアース専門チームが、10月の議会で詳しい審議報告を提出する予定とした上で、米国の兵器製造に「必要なすべての材料を獲得できる」自信があると表明した。
27日付のニューズウィークに掲載された「学ばぬ中国、レアアース禁輸の愚」との記事のなかで、中国のこうした動きは、アメリカを含む世界のいたる所でレアアース生産を拡大するための補助金政策につながると、米タフツ大学のダニエル・ドレスナー教授は分析している。また、オーストラリア防衛アカデミーのキャリル・A・セアー氏の話として、「中国は自分の手で中国脅威論を復活させつつある」との論点も紹介されている。