日中「尖閣密約」あったか 中国側「中傷と悪だくみ」 炎上の反日感情に亀裂

【大紀元日本10月22日】各都市で1万人規模の反日デモ、日本企業襲撃、日本車破壊……中国で反日感情が再び拡大している。そんななか、尖閣諸島の領有権争いについて日本と中国の間で「密かな約束」が結ばれていたのだが、それを無知な現民主党政権が知らずに破ってしまい、今回の日中間の対立につながった可能性があると、日本のメディアが伝えている。前自民党政権を含め日本政府に対する民衆からの批判を招きうる週刊誌AERAのスクープは、中国にとっても予想外の重い一撃となっている。

中国で波紋

この密約によれば、日本側は原則的に中国人が尖閣諸島に上陸しないよう事前に押さえる。重大事案に発展しないかぎり日本側は勾留しない。一方中国側は、抗議船団の出航を控えさせることになっていた。

19日、密約に関するこの報道が海外中国語系メディアでも流された結果、一気に中国のインターネット上で広まり、国営報道機関を除き中国国内の多くのニュースサイトで掲載された。密約を先に破り中国の船長を拘束した日本側には悪意があるとのメディア側の論調とは裏腹に、愛国感情に炎上した中国民衆は、「中国は放出しない(抗議船団の出航を控えさせる)」というあまり目立たない一行を敏感に感じとった。日中関係の問題に関する発言は厳しい監視下に置かれているにもかかわらず、インターネットの掲示板での発言に、「信じたくない」との否定論のほか、騙されたという怒りや、共産党政権は売国奴だとの罵言が9割以上となった。

20日朝の時点で、転載された報道や発言はネット上から一掃された。

香港紙社説:北京当局は説明せよ

同日、同密約に関する報道は香港でも大きな話題となった。明報など数社の香港メディアが20日朝、社説を発表、密約の有無について「国民の疑念を晴らすために、北京当局は説明せよ」と促した。

社説では、「密約の内容は明らかに中国の釣魚島(尖閣諸島の中国名)の主権獲得に不利となっている」「中国政府は絶えず、釣魚島は中国の神聖な領土であり侵害されることは許さないと口にしているのだが、密約が真実であれば、領土争議において中国政府は日本を助けている疑いがある。中国政府は公に説明し、国民に知らせなければならない」と求めた。

密約の存在について、香港保釣(釣魚島保護)団体の陳妙徳主席は海外中国語放送RFAの取材に、「密約の存在が本当かどうか分からないが、今までの私たち(抗議船団)に対する弾圧は事実である。香港(抗議船団)はひどく圧制されている。船が出ることさえも許されない」「北京当局から香港政府に圧力があったと思う」などと話した。

香港メディアの批判を受けたためか、同日午後、国営通信社の中国新聞社が密約に関する正式な報道を出した。「日台の間に釣魚島密約があった」との題で、本文でも、日本と台湾の間で秘密の合意が交わされたことだけを報道し、台湾当局の否定発言や、「台独分子」の李登輝元大統領の尖閣諸島領土に関する発言への批判などが内容だった。中国関連の内容には全く言及しなかった。

中国外務省は、19日と20日の定例記者会見で同問題について沈黙を続けた。21日になって、馬朝旭報道官が記者の質問に、密約は存在しないと答えた。また、「まったくのデマで、中傷と悪だくみであり、民意を誤った方向に導くだけでなく、両国の政治的な信頼を損なうものだ。これによって生じる一切の結果は日本側が負わなければならない」と日本メディアを厳しく批判した。

中国民意:存在の可能性高い

「今まで中国側の行動パターンからみると、密約は本当であろう」「自民党にせよ、民主党にせよ、日本軍国主義は恐れることはない。最も憎むべきなのは、我が政府の売国奴だ」。当局への怒りが、中国国内のインターネット上への書き込みに溢れていた。

大陸の民間保釣連合会の李義強さんはRFAの取材に、密約が存在する可能性は極めて高いとの見解を示した。「05、06年ごろにも密約の存在を噂で聞いたことがある。確証はなかったが、その後の情勢の発展はそれに沿ったものだった。日本側は05年に灯台の管理権を右翼団体から国に移譲させ、島には右翼が出入りすることもなくなったようだ。大陸側はもっと厳しく封鎖している。04年以降は出航が難しく、ほとんど身動きができない状態となった。この流れから見ても密約の存在はほぼ確実だ」と語った。

李さんはさらに、「密約は我々をターゲットとしている。政府が保釣活動を支持しないのはかまわないが、密約という形で我々の行動を阻止するのは、売国行為も同然だ。実質上日本が占有している釣魚島に抗議船を行かせないということは、日本の占有を認めることになるのではないか」と、密約は中国政府による売国行為だと批判した。

16日の反日デモに続き、ほかの都市でもデモが計画され拡大の可能性があると伝えられているが、噂の「密約」がもとで、李さんのような愛国主義者や反日宣伝に洗脳された若者が当局に翻弄(ほんろう)されることに怒りを覚える。両刃である民族主義の剣は、知らぬまに当局自身に向けられてしまうことになるだろう。

(趙莫迦、張凜音)
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