人民日報社説 「現実離れ」の政治改革に警戒 矛先は温家宝首相か
【大紀元日本10月29日】中国共産党の機関紙・人民日報が27日、「正しい政治路線で積極的かつ穏当に政治体制改革を推進する」と題する社説を掲載した。記事は、「あらゆる政治改革は安定を土台にしなければならない」と主張したうえで、中国の政治改革が経済発展に遅れをとっているとの意見を否定し、「中国の特色ある社会主義的政治発展路線を堅持すべき」と強調した。今年8月に「政治体制の改革を推進しなければ経済改革によって得られた成果が再び失われる」と主張する温家宝首相の論調に真っ向から反論する形となった。
党指導部の「喉舌」である人民日報は、常に党と政府の政策や思想を宣伝し、反対派を叩き潰す役割を果たしてきた。かつての文化大革命や天安門事件で学生への弾圧も人民日報の社説からはじまった。ブルームバーグは専門家の話として、今回の社説は温家宝首相をターゲットとしたもので、「実質上、政治改革に反対する声明である」と指摘した。
同社説は、「政治体制の改革は、党のリーダーシップを弱めるのではなく、むしろその反対で、強めなければならない」とし、「現実離れで(発展)段階を無視したきれいごと」を唱えてはならないと、温首相の最近の言動への牽制とみられる論調を展開した。
シンガポール国立大学のHuang Jing教授はブルームバーグに対し、今回の社説は「アンチ温」のメッセージとして捉えるべきで、政治改革反対派が2012年に開催される中国共産党第18回全国代表大会までに党内で勢力を増すために、レールを敷いていると分析した。
さらに、ブルームバーグは社説の署名「鄭青原」にも注目した。「鄭」は中国語で「正」と同音で、青は清、原は源と同音異字である。中国に「正本清源」という四字熟語があり、根本から整頓、源から整理するということを意味する。つまり、この署名は今後は党内の「雑音」を根本から整理するとのメッセージとしても取られるという。
実際、そうした党内の「雑音」排除は、温家宝首相の政治改革への提言に対する封鎖から始まっており、習近平が軍事委員会副主席に就任して以来、党内の論調はいっそう保守的になったようだ。今年6月に人民日報系の環球時報は、朝鮮戦争に関し、これまでの米侵略論を覆して、それを起こしたのはソ連と北朝鮮だと主張する記事を掲載した。しかし、次期後継者に内定した習副主席は先日、朝鮮戦争60周年の記念行事で、「(朝鮮戦争は)平和を守り侵略に立ち向かった正義の戦争」と発言し、朝鮮戦争はアメリカと韓国が北朝鮮を侵略して引き起こし、中国はそんな北朝鮮を助けたとする中国の一貫した立場に逆戻りしたようだ。