【大紀元日本11月7日】中国四川省に、人の髪の毛を使って精巧な肖像画を作る人がいる。その人は張徳センさん、今年66歳。彼は、世界中を探しても自分の妙技を真似できる人物はいないと胸を張る。華西都市報が伝えた。
城東に住む張さんは、自分で作った簡単な道具を作業台の上に取り出し、髪の毛を編み始める。片方の手に30倍の拡大鏡を持ち、もう片方の手にはピンセットを持って、一本一本の髪の毛を整理し、並べていく。
張さんの頭はほとんど、自分で作った作業用のフレームに埋まっている。しかし、手は震えることなく、目はまばたきすらしていない。彼は息で作品が乱れることを恐れ、呼吸を止めていた。彼はそっと「髪の毛を編むのは細かい仕事で、心を落ち着かせないといけません。まぶたは一本の髪の毛でできているので、その置き場所が少しでもずれると、作品上の人の目の表情が完全に変わってしまいます」と話した。
張さんはこの髪の毛を編むという妙技を「髪編」と名付けた。本当に細かい作業で、根気のいる仕事だ。客間には張さんが作った2メートルの観音菩薩のグラフ画があり、その絵は数え切れない点によって構成されている。40日あまりの間に、張さんは毎日十数時間をかけてグラフ画と照らし合わせて髪の毛を編み、食事やトイレも忘れて没頭した。出来あがったのは2×4センチの作品で、グラフ画の観音菩薩の笑顔にそっくりだった。
張さんの妙技の話を聞いたある老夫婦は彼の家を訪れ、彼らの髪の毛で自分たちの結婚式の写真を編んでほしいと頼んだ。写真はとても古い白黒の写真で、夫の襟には継ぎはぎしたところが一カ所あった。老夫婦は、その縫ったところもよく分かるようにと依頼した。海外にいる娘に、当時の両親の苦労を分からせるためだった。
張さんは老夫婦の依頼を快く受け、二人に髪の毛を切ってもらってから30日あまりで作品を完成させた。2センチ×3センチの大きさの作品は、老夫婦の表情と継ぎはぎの部分もはっきりと表現しており、老夫婦はとても喜んだという。
「髪の毛は自らの遺伝子を持っていて、千年たっても腐らずにその人の思いを保ちます。これは、すばらしい記念作品になります」と語る張さん。彼はすでに自分の髪の毛で自分の肖像画を編み込み、下記のように遺言を残した。「将来、自分の遺灰は長江に撒き、後世の人には『髪編』の肖像画だけを残す」
昨年、張さんはこの妙技の「髪編」と散骨の提案書を国家特許局に郵送した。現在すでに審査を通り、公示を待っている。
張さんによると、若者の髪の毛の直径は普通0.07ミリで年寄りは0.05ミリ。このように細い髪の毛で編む「髪編」は三代に渡り、1人だけに受け継がれてきた技能であり、彼は54年間技術の向上を図ってきたという。
張さんは12歳の時、祖母が父親に伝授した髪の毛の編み方が非常に独特であると感じ、これを学び始めた。その時、張さんはいかにして人の肖像を編めるのかを考えていたという。30歳になって初めて、一枚の肖像画が完成した。
50年あまり、張さんの妙技についてはまわりの親戚だけが知っていた。張さんは、取るに足らない技能であると思い、公表していなかった。2008年、西安美術学院のある教授がこの作品に関心を示したのをきっかけに、張さんはその技法を伝授しようと思いたった。
しばらくして、張さんの作品を買いたいという人が出てきた。小さな作品は数千元、大きな作品は1万元以上で売れた。ある人は、張さんを教師として招き、教室を開いてお金を稼ごうとしたが、張さんは良く知らない人とはビジネス関係を結ぼうとしなかった。張さんの息子は長年学んできたが、まだ彼の技法を習得してない。張さんは故郷に行って、若者を探し出し彼らに自分の技法を伝授しようとしたが、結果は失敗だった。
普通の息遣いでも髪の毛の配列を乱す可能性があり、さらに、一本一本の髪の毛を選び、きれいにしなければならない。張さんの技術は心を静め、一心不乱に作業をすすめなければならないため、普通の若者にはこの作業に耐えられないだろう。張さんはますます年を取っていくため、この特技は将来なくなるかもしれない。
張さんは、「私は『髪編』を命としているが、妻は私を『髪編』で狂ったと思っている。人々は髪編を世界的な特技であると賞賛しているが、髪編はいつかこの世から消えるのではないだろうか」と話した。
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