日中首脳、緊急会談 中国国内報道、尖閣問題への言及に触れず
【大紀元日本11月14日】菅直人首相は13日夕、アジア太平洋経済協力会議(APEC)の首脳会議が開かれている横浜で、中国の胡錦濤主席と会談した。10分前に緊急に発表され、通訳を入れて22分の短い会談だが、9月初めに起きた尖閣諸島沖の中国漁船衝突事件以降、両国首脳が正式に会談するのは初めてであった。
10月末のハノイでの首脳会談が直前にキャンセルされたことを受けて、今回の会談に日本国内で高い関心が寄せられている。会談内容のほか、発表のタイミングや、胡主席の表情などについて、各メディアが盛んに報道している。
日本側の報道によると、両首脳は▼長期的に安定した戦略的互恵関係は両国民の利益に合致し地域と世界の平和と発展にとって重要▼政府間や民間での交流協力を促進▼経済分野を含むグローバルな課題での協力を強化する、などで一致したという。そのほか、尖閣問題について、菅首相は日本領土であるという「確固たる立場」を中国に伝え、胡主席も中国側の立場を主張したという。
中国の報道、尖閣への言及に触れず 「日本、中国への友好姿勢に積極的」
一方、中国国内でも会談の当日に報道されたが、新華社通信の「胡錦濤が菅直人と会見 中日関係の正しい方向の把握を強調」との記事の転載一色であった。
会談内容について、新華社の報道は、「胡主席は、中日両国は平和、友好、協力的な道を歩むことは両国と両国人民の根本的利益に符号する正しい選択であると強調した」と伝えているが、日本国内の報道で言及された尖閣問題に関する両首脳の主張には触れていない。
同報道によると、胡主席は「民間での文化面の交流を通して、両国人民の相互理解と友好感情を増進させる」、「中日は互いに主要な経済貿易の協力パートナーである。双方は両国間の協力関係を深め、国際問題において対話と協調を強めるべきであり、共にアジアの発展に極力力を尽くし、グローバルな挑戦に対応していくべきである」と指摘し、菅首相は胡主席の指摘に完全に同意したという。今回の会談では中国側が主導しているとのメッセージを読者に与えようとしているものと見受けられる。
また、新華社の記事を転載した各ニュースサイトやポータルサイトでは、記事についての読者の発言を一切禁じる体制を取っている。報道記事について読者の発言を大量掲載することで読者の人気を得ている「網易」サイトも、この記事のみ発言を禁じている。
14日、中国国内の一部報道は、「中国への友好姿勢に日本は積極的」とのスタンスで、中国漁船衝突事件後の日中間の関係を振り返って、「管直人はこれ以上中日関係に失敗する余地がなく、APEC会議で胡錦濤に会うために大変な工夫をしていた」と報道した。その工夫の一つが、各国の首脳たちに民族衣装を着用してもらうというAPECでの慣習をやめ、着物ではなくカジュアルな服装を提供しているとする。中日首脳会談の実現で緊張する国際関係や国内の圧力を緩和し、支持率の回復を図る狙いがあると分析している。
こわばっていた胡主席の表情
会談中、胡主席は「終始こわばった表情」と日本国内メディアは報じている。
胡主席の表情について、中国問題研究家で、横浜市立大学の矢吹晋名誉教授はBBC中国語サイトの取材に、次のように分析している。「面会しないと、日中首脳が国際会議で会談するチャンスは今後半年間もないし、サミット会議の開催国にも失礼なことで、両国国民の目に関係が悪化しているように映る。しかし面会したら、中国国内の輿論や国民感情が非常に心配なのだろう。結局、あのような表情を選んで短い会見を実現させたのだろう」
同氏はまた、会談の実現で日中関係は悪化する結果を避けることができたが、期待できるほどの進展ではないと見ている。中国側も民主党政権の外交に困惑しているのであろうという。