中国中央企業、四兆元を超す海外資産 巨額損失 国内経済紙:「氷山の一角だけ」
【大紀元日本12月12日】中国国務院に直属する大型国有企業(中央企業)が、海外で所有する資産額は四兆元(約50兆円)を超えている。しかし投資の失敗、横領・着服により巨額な損失を計上する事件が次々と発覚され、中央政府は国有資産の海外投資管理に警鐘を鳴らしている。
8月に発表された「国務院国有資産監督管理委員会2009年度 回顧」によると、中央企業の海外資産総額は4兆153億元(約52兆6,000億円)に達した。中央企業の総資産額の約20%にあたる。
しかし、中央企業の海外投資は、国有株の企業責任者が代理保有する形をとっており、民間形式の投資が多い。管理体制が未整備のままで巨額の海外投資が行われる中、不正操作、不当経営、横領・着服事件などが後を絶えない。巨額の海外投資による損失事件に対し、国務院の国有資産監督管理委員会(国資委)は海外資産の管理が急務だと警告している。
一方、国務院国有資産監督管理委員会・研究センターの内部研究の結果によると、公表された中央企業の海外投資損失事件は氷山の一角に過ぎない。国内経済紙「21世紀経済報道」12月8日の記事でを明らかにした。
国有株の流失ルート 個人保有による海外投資
「21世紀経済報道」によると、改革・開放の初期ごろから、対外進出を推進するため、民間形式による国有企業の海外投資が認められ、企業の責任者は国の肩替わりとなり国有株を保有する形で投資を行ってきた。しかし、近年このような投資行為は国有企業の海外資産流失のルートと化し、管理上、大きな問題が露呈するようになった。特に2008年の金融危機以来、中央企業による海外投資のペースが上がり、海外投資資産のリスク問題が表面化した。
2004年の国有資産監督管理委員会(国資委)の設立に伴い、国有企業も徐々に資産権を媒介していく形で管理するという関係が成立した。しかし国家監査署の監査報告によると、国有企業の海外投資案件の中で、国有株の個人代理保有に関する管理が十分整っておらず、国有資産の流出や資産所有権争議などのリスクが潜んでいたという。
現在のところ、国有企業の資産流失の主なルートは海外進出する国有企業である。個人代理として 保有する国有株は、内部統合、戦略的調整などの名目で企業グループ内の資産を海外進出企業経由で海外企業へ移転させる手法を取る、と国営大手の副総経理が実情を明らかにしている。
投資案件の失敗は氷山の一角 多様化した流失ルート
一方、公表された中央企業の海外投資損失事件は氷山の一角に過ぎないと、「21世紀経済報道」の記事は指摘している。
今年10月、中国の鉄道建設大手・中国鉄建は、サウジアラビアで受注したライトレール交通(LRT)建設の請負工事が約41億5300万元(約524億円)の赤字を計上したと発表した。
2008年10月、中国信託投資公司(CITIC)の投資目的の子会社である中信泰富は外国為替関連の商品取引で約150億香港ドル(約1620億円)の損失を計上したと発表。
また、2004年12月、中国航空油料集団が原油のデリバティブ取引により約5億5千万ドル(約462億円)の損失を出したと公表。
海外資産の流失ルートも多様化され、不正操作、不当経営、横領・着服、海外投資会社の登録個人名義の変更など様々である。このほか、商標、企業信用、特許などいわゆる企業の無形資産の損失状況もかなり深刻である。
監督管理措置の整備化が急務 管理依存の限界
巨額の海外資産の流失に歯止めをかけるために、国資委は中央企業の海外資産管理に関する政策法規の制定を急いでいる。「21世紀経済報道」が国資委の黄淑和副主任に対するインタビューで明らかにした。
国資委が公表した「回顧」の2008年版は、2007年末までの中央企業の海外資産総額を1兆元(12兆7000億円)としている。2年後の2009年末には、2年間で4倍近く膨れ上がる計算となる。
急速に拡大する中央企業の海外資産に管理が追いつかない現状の中、正常のビジネスによる損失と不正流失とを区別する必要はあるが、監督管理措置の整備だけで解決できるものではない。肝心なのは政策を実施する際の監督機能の健全である。不正流失に対して「人治」管理から「法治」管理に移行することが求められている。