「電波の壁を超えて 世界自由に貢献した無名の中国人聖徒」=米政治誌

【大紀元日本12月13日】中国の次期主席とみられる習近平副主席が、私的な場で米国大使に、自分を含めて中国の高官らが訪米で最も恐れているのは、法輪功学習者に刑事告訴されることだと話した。米大使の北京の自宅に食事に招待された際、2006年の米国訪問についての感想を聞かれ、酒の力に誘われて腹を割って話した本音だった。

話題中のウィキリークスによりリークされた中国の「最大の国家機密」。近年、法輪功迫害に加わった中国最高指導層に対して、海外の法輪功学習者が各国で次々にジェノサイドの容疑で法的訴訟を起こしている。その中でも弾圧を発起した江沢民・元国家主席や、陣頭指揮を取ったとされる指導部の高官に対する訴訟は、一部の国で順調に進められている。

習氏が法輪功学習者に刑事訴訟を起こされる標的にされたのは、2003年に中国で知れ渡っていたある事件の関係だ。浙江省のある都市で起きた16人のホームレスが毒殺された事件で、当時浙江省の共産党委員会書記だった習氏は、精神異常者だった殺人者を法輪功学習者であると報道するよう指示したため、新華社を含む中国のメディアのこの捏造報道が全国に広まり、法輪功学習者への迫害に利用された。

賛否両論のウィキリークスの行動により、どんな代価を払ってもインターネットの情報自由を守るというクリントン国務長官の今年1月のスピーチを思い出す。習次期主席が漏らした中国の国家機密から、敵とされる対象を妖魔化する中国の国家宣伝部のネット封鎖を打破しようとする先駆者たちに脱帽する。ワシントンは毎年5千万ドルの援助金をインターネット封鎖を突破するソフトウェア開発に使っているが、米保守系政治週刊誌The Weekly Standard12月6日の記事によると、「政治的動機の検閲をかいくぐって、人々に言論の自由の権利を実現させたソフトの開発ができた唯一の団体は、法輪功である」という。

独裁者のネット封鎖を突破したGIFC

The Weekly Standardが言及したこの団体は、GIFC(グローバル・インターネット・フリードム・コンソーシアム)。法輪功を学習するIT専門家を中心とするネット封鎖を突破するソフトウェアの開発団体。ニューヨーク・タイムズは、彼らの技術により、多くの中国民衆が当局のネット封鎖を突破して検閲のない情報にアクセスすることができたと報道している。

それだけではない。昨年イランで弾圧された民主運動で、多くのイラン人が、GIFCが開発した「自由の門」を利用してネット封鎖を突破し、改革派の民衆に対する武力弾圧の映像を世界中に送信した。

GIFCの世界のウェブの自由への貢献に対して、インターネットの自由を支援する米政府関係者、国会議員、人権団体やインターネットの専門家が3年間、国務省にGIFCを支援するよう働きかけてきた。その結果、今年5月、国務省は、GIFCに150万ドルの支援金を提供する意向を示したという。

北京側の激しい反発に配慮して、これまで法輪功への直接支援を控えてきた「ワシントンのタブー」を破った行動であった。「奇跡に、(北京政権の)激怒が初めて功を奏しなかった」と、The Weekly Standardが指摘する。

独裁者の電波の壁を越えよう

米政府のこの決定に関する報道が出される数日前、GIFCの努力に拍車をかけていた一人の男性が中国で亡くなった。「ノーベル賞に無縁の彼がなし遂げたことは本物だった」とThe Weekly Standard誌が、12月6日の記事で8年前に中国で起きたある事件の主人公に注目した。

彼の名前は梁振興さん。法輪功が最初に中国で伝え始められた東北部の長春市市民。ITの技術も経験もないこの主人公は、2002年3月に中国長春で、当局に弾圧されている法輪功の無実を伝える映像をケーブルテレビの電波に乗せて放映した。「当局の電波の壁を突破して真相を伝える法輪功学習者の努力に、新たな扉を開いた」とThe Weekly Standardの記事は指摘する。

1999年に中国で始まった法輪功への集団弾圧。弾圧を正当化するために、当局は法輪功学習者に「精神異常者」「殺人鬼」など様々な汚名をかぶせ、法輪功を妖魔化するプロパガンダを国中の報道機関を総動員して流し続けてきた。それにより、中国国民に、法輪功に対して嫌悪感や怨恨感情を抱かせるように仕向けた。2003年に浙江省で起きた16人のホームレス毒殺事件に対して、習近平副主席が法輪功弾圧に利用するために、その罪を法輪功に被せるよう指示したことと同様の状況が中国全土で起きていた。

法輪功学習者たちを最もひどい状況にさせたのは、2001年1月23日、天安門広場で起きた5人の焼身自殺事件。法輪功学習者と自称するこれらの人たちが焼身した悲惨な映像を中国中央テレビを通して全国で連日昼夜放送して、民衆に法輪功に対する敵視感情を植え付けるのに功を奏した。

ところが、法輪功の教えに合わない彼らの話や動作や、現場で亡くなった女性・劉春玲が煙の中で、そばにいた警察の制服を着た男が投げた金属器により倒れた場面も映像の中にうっかり流されており、この悲劇は当局により演じられたパフォーマンスであるとも指摘された。ワシントン・ポストの記者はその後、劉春玲の実家を訪ねて調査してところ、近所の人たちは、彼女は法輪功学習者ではないと証言した。

しかし、真相に触れるチャンスに恵まれなかった中国の民衆は当時、法輪功学習者を敵視していた。どのようにして彼らに真相を知らせるべきか。1996年から法輪功を学習し始めた梁振興さんは、仲間の劉海波さんや劉成軍さんと一緒に方法を探り始めた。

劉成軍さんは、チラシ印刷を考えていた。梁振興さんは最初、録音テープをスピーカーで流そうと考えていたが、あるきっかけで、電話線の柱にケーブルを引くという方法を知り、電波ジャックを思いついた。

そこから梁振興さんは数人の仲間と準備に着手した。その後、26歳の雷明さんと32歳の候明凱さんも手伝いに来た。それに51歳の周潤君さん。

2002年2月16日夜、長春市の一部地区のケーブルテレビで天安門焼身自殺事件の真相を伝える映像が流された。

3月1日、梁振興さんは職場で警察に連行された。しかし、それでも仲間たちは諦めなかった。4日後の夜8時ごろ、長春市ケーブルテレビの8つのチャンネルで、法輪功が世界各地に広がっていることや、焼身自殺の疑問点を分析するビデオ映像が、約50分間一斉に放送された。数百万の市民が、法輪功の真相と法輪功弾圧の違法性を知ることにつながった。

江総書記が逮捕令

事件直後、当時の江沢民・総書記は激怒し、「全力を挙げて、参加者を1人残らず逮捕せよ」と命令した。現地では計5千人以上の法輪功学習者が一時身柄を拘束されることとなった。うち、7人が拷問によって死亡した。そのほか、15人は4年から20年の懲役刑を科せられた。

海外法輪功サイト・明慧サイトによると、2002年9月、梁振興さんは当局に身柄を拘束された。2、3日に1回、目隠しされたまま秘密の拷問施設に連行され、過酷な拷問を受けたことを、後になって本人が証言している。

1999年以前の梁振興さん

監禁中の梁振興さん

その後、梁振興さんには19年間の懲役刑が科せられ、吉林省の複数の監獄に転々と移され監禁された。死亡する前に、吉林監獄、鉄北監獄、四平監獄、公主嶺監獄で残酷な拷問を受けていた。

遺族の証言によると、2006年6月の真夏日に家族と面会できた梁振興さんは、冬着だが寒いと漏らしていた。亡くなる前の2010年4月12日の面会時には、梁振興さんは極度に痩せ、歩くのも話すのも困難な状態だったという。

今年4月25日、梁振興さんは危篤状態で病院に搬送されたが、警察の監視はずっと続けられていた。家族は治療のための一時出所を要求したが、監獄側に却下された。

5月1日午前10時ごろ、梁振興さんは病院で息を引き取った。享年46歳。

「ウェブ自由運動につながった奇才は、中国で亡くなった。彼の死はほかの亡くなった法輪功学習者と同様、歴史の1ページを刻んだ」「今は、米国で自由の門などのネット封鎖突破ソフトが開発され、人々は自由にウェブにアクセスできるようになったが、そこに至るための偉大な行動を起こしたのは、梁さんだった」とThe Weekly Standardの記事は述べた。

無名の中国人の聖徒たち

梁さんを手伝った当時の仲間5人も、今は誰もこの世に残っていない。

34歳の劉海波さんは、2002年3月11日、長春市公安分局に連行され、夜1時まで残酷な迫害を受けたため、直後に死亡した。

劉海波さん

劉海波さんの息子

35歳の候明凱さんは2002年8月21日に逮捕され、2日後拷問により死亡した。

候明凱さん

候明凱さんの妻と娘

劉成軍さんは2002年3月24日に逮捕された。明慧サイトによると、拘束された期間、拷問に使用する専門の電撃椅子で52日間虐待されていた。2003年12月26日、1年9カ月の迫害を受けた後、長春吉林大学中日聨誼病院で死亡した。目撃者によれば、彼は火葬される前、鼻の穴、耳の穴、太ももなどから出血していたという。

監禁中の劉成軍さん

最も若かった雷明さんは2002年3月15日に連行され、長春公安局で拷問を受けた。明慧サイトによると、そこで警官に電気ショックを加えられ、虐待された。二人の警官が、雷明さんの首、口、もも、胸、生殖器、肛門などをバッテリーが切れるまで電撃した。その後17年の判決を言い渡された。2006年8日6日に死亡した。

唯一の女性であった51歳の周潤君さんは、2002年9月20日、20年の懲役を言い渡され、その後監禁中に死亡した。

(注:写真はすべて明慧サイトとThe Weekly Standardより転載)

(趙莫迦 Zhao Mojia)
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