命と引き換えの発展 土地強制収用をめぐる死傷事件が増加
【大紀元日本1月12日】中国国土資源部・徐紹史部長(大臣級)は7日、北京で開かれた全国国土資源工作会議の中で、現行の土地分配制度について「問題がある」と発言した。
徐部長は会議の中で、2010年度の全国の土地譲渡による収入は前年比で70.4%増の2.7兆人民元に達したことを明らかにした。しかし中国では、大幅な国益増加と平行して、土地の強制収用をめぐる死傷事件も年々増加している。これについて徐部長は、「不合理な利益配分が、社会格差による衝突を深刻化させている」と述べた。
当局の強制土地収用に対して、住民たちがとる陳情手段は、書簡の送付から焼身自殺へと年々エスカレートしている。社会階層の底辺に位置する民衆たちの絶望感が表面化した結果だ。2009年11月、四川省成都市の住民唐福珍さんは強制立ち退きを阻止するため、自宅のベランダで焼身自殺を図り、死亡した。2010年9月、江西省撫順市宜黄県で起きた土地収用をめぐる衝突の中で、3人が焼身自殺を図り、1人が死亡、2人が重傷を負った。2010年12月、土地を強制収用された浙江省楽清県の銭雲会さんがトラックの下敷きとなり、轢死した。銭さんの死体現場には不自然な点が多いため、土地強制収用をめぐる殺人事件の可能性が疑われている。
2010年10月、中国のあるネットユーザーが「中国血房地図」を作成し、メディアに報道された土地の強制収用による死亡事件の発生地を地図に記し、公開した。地図にある「火」のマークは焼身自殺事件、「ベッド」のマークは死亡事件、「火山」マークは集団暴動事件をそれぞれ意味する。
作成者はこれまでに、82件の死亡事件を地図に記録してきた。事件のマークはほぼ中国全土に残されているが、特に東部沿岸地域に件数が集中している。作成者は、「命を落とした人の土地に、高層ビルがそびえ立つ」と無念さを口にした。作成者は、地図の公開と同時に不動産の不買運動を呼びかけている。
2010年12月15日、地方紙・南方都市報は「命と引き換えてまでの発展など要らない」と題する社説を掲載し、「権力の濫用を自粛せよ」と批判の矛先を政府と既得権益層に向けた。同紙は、「立ち退き法が通過するまで、土地の強制収用を中止すべきだ。命と引き換えてまでの発展など要らない」と厳しい口調で批判した。
米在住の中国経済学者・何清漣氏は、06年に発表された浙江師範大学の王景新教授の調査データを引用して、中国では少なくとも1.2億人の農民が土地を失っていると自身のブログで明らかにした。「彼らの最大の問題は就職が見つからないこと。中国社会科学院の調査によると、広東省など経済が発展している地区で土地を失った農民の68%は職が見つかっていないという。全国レベルでみても、30~40%の農民は働き口がない」と述べた。都市化という名目で土地を失った農民は「土地も職もなく、行き場を失っている」と同氏はその窮地を代弁した。
中国の社会学者で人民大学の周孝正教授は、現在、地方政府の財政収入の半分は土地譲渡によるもので、今の土地財政によって支えられた成長は持続可能なものではないと、独メディア「ドイツの声」に語った。地方政府は「世紀末を迎える気で土地開発を進めている」と批判し、「このやり方を止めないと、いつか大変な事が起こる」と警鐘を鳴らした。