原発 世界に広がる見直しの声 中国「決断と計画に変更ない」

【大紀元日本3月16日】東京電力福島第1原発での相次ぐ水素爆発や燃料棒の露出は、世界各国に衝撃を与え、原発を進めている国々では見直しの声が高まっている。一方、中国では、エネルギー局(省)のトップが原子力科学研究院を視察し、メディアに対して原発のメリットをアピールするなど、当局が促進している原子力発電への国民の懸念を払拭しようとする意図がうかがえる。

15日のフィナンシャル・タイムズは、「日本での大地震発生のわずか2日後に、中国エネルギー局の劉鉄男・局長は信じがたい宣伝をしている。その宣伝は『原発のメリット』についてだ」と報じた。それによると、劉局長は13日、中国の原子力科学研究院を視察し、「原発を安全かつ高速に発展させることは、クリーンエネルギーの実現への重要な道筋の1つである」と原発を促進する意志を新たに表明した。また、劉局長は視察のなかで日本の原発事故にも触れ、「日本の教訓を生かし、党と人民に対して高度な責任感をもって、わが国の原発事業の発展を確保する」ことを強調したという。劉局長の視察と発言について、国内メディア各社も詳しく伝えている。

また、中国の環境保護部(省)の張力軍・次官は12日の記者会見で、「原子力発電を発展させるという決断と計画に変更はない」と強調した。日本の原発事故の状況や中国への影響を注視しているとして、「日本の教訓を中国の原発発展戦略や計画に生かしていく」とも述べた。

一方、福島第1原発の冷却装置が機能しなかった点について、国内紙・第一財経日報は「中国の新型原発では冷却をめぐる問題は生じない」と報道している。同報道は原発専門家の話として、中国の新型原発は原子炉の上部に数千トンの水をためており、日本で起きたように電力が停止した場合でも、重力で水が落下して冷却する仕組みになっているため問題はないと説明している。

中国は今後5年以内に国内に新たな原子炉27基を建設する予定。また、2020年末に原発の発電能力を10年末の約8倍に拡大する方針。政府の発展計画に、国内の一部の専門家からは「発展目標が凄まじすぎる」と批判の声が上がっている。ドイツのラジオ局ドイチェ・ヴェレは、これらの多くの発電所に配置される専門家と技術者の確保や、中国全域の半分にあたる行政区域での発電所建設に対する安全監督などに疑念を示した。

世界に広がる見直しの声

原発促進政策に転換した米国では、複数の議員から原発見直しを求める声が上がっている。無所属のジョー・リーバーマン上院議員は、米国の原発計画は「急ブレーキを踏むべきだ」と語っている。米国では現在、104基の原子炉が稼働しており、総電力の2割をまかなっている。オバマ大統領が提案した360億ドル(2兆9520億円)に上る原発建設融資策を巡り、今後、議会で議論を呼ぶのは必至だ。

ロシアは1月に日本との原子力協定を批准したばかりで、今回の事故を受けて、日本の技術の安全性について再考する可能性も出てきそうだ。

インド原子力発電公社のシュレイヤンズ・クマル・ジャイン会長は「日本の事故はインドの原子力発電計画に重大な影響を与えることになるだろう。『巨大な緩衝装置』になりかねない」と語っている。インドは30年までに1750億ドルを投資して原子力発電所を建設する計画になっている。

スイス政府は日本の原発事故を受けて、新しい原発建設の認可を当面見送ると発表した。原発の安全性を改めて検討し、新しい安全規定を作ることも視野に入れているという。ドイツ政府も原発促進計画を停止する可能性を示唆している。イギリスは中断していた原発建設を再開しているが、今回の事故を機に、原発懐疑論がふたたび高まりそうだ。

なお、中東初のブシェール原発を近く稼働予定のイランは、計画を続行する方針だという。

(翻訳編集・張凛音)
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