東電幹部「痛恨の極み」 会見で声詰まらせる 副社長ら現地駐在へ

【大紀元日本3月19日】東京電力は18日夜、福島県災害対策本部で会見を開き、福島第一原発の事故後、初の幹部謝罪した。また現地での対応作業を本格化させるため、幹部2人を県内に駐在させることを明らかにした。

小森明生常務は会見の中で、同原発の建屋水素爆発や放射性物質を飛散させた事故について、「痛恨の極み。福島県民にお詫びする」と、同社幹部として県民に初めて謝罪した。本部のあるビル内の同じ階にいた佐藤雄平・福島県知事との面会は、会見前には設定されておらず、「まず皆さんにお詫びしようと来た」と述べた。知事はほぼ同刻に、同県被災地視察に訪れた松本龍防災担当相と意見交換していた。

原発を冷却するための危険な放水作業に携わっている自衛隊員や警察官、消防士らについて、「多くの人が大事故に携わっていることに頭が下がる」と声を詰まらせた。自衛隊の消防車は17日から断続的に、原発3号機の使用済み核燃料プールへの放水を行っている。また東京消防庁は18日未明、ハイパーレスキュー隊139人と、放水能力の高い特別車両数台を、同原発に向けて出発させた。

会見中、これまでの原発の安全性PRの正誤や、今後の原発事業継続の可否、廃炉の可能性についてなど記者団から絶え間なく質問を浴びる小森常務は、何度も声を詰まらせ、目に涙を浮かべながら事態改善に「全力を尽くす」と繰り返した。会見終了後はたまらず号泣し、社員に抱えられて会場を後にした。

地元メディアの福島放送(KFB)は18日午前に、これまで地元トップの松井敏彦福島事務長さえ会見に姿を見せず、謝罪する様子を見せなかった東電の姿勢に対して、「県民を愚弄しているのではないか」と県民の声を取り上げて東電を厳しく批判していた。また佐藤知事は同日午後、対策本部内の会見で「県は40年間、首都圏に電力を供給してきた。日本中がこの事故に真摯に向き合うべき」と松本防災相に強く訴えた。

地元民らの声を受けてか、東電は連休明けの22日から、避難している県住民らの対応と原発安全化作業など現地の動きを本格化させるため、幹部2人を福島県内へ駐在させることを決めた。皷紀男副社長を福島市内に駐在させ、福島第一原発前所長だった小森常務を、第一・第二原発の総括担当として同県双葉郡の施設に派遣する。

福島第一原発 災害発生から一週間

18日、東日本大震災から1週間が経過した。福島第一原発は、記録的な大津波やM9.0の大揺れにより、二重三重にも敷いた「安全装置」が突破された。高濃度放射性物質の飛散、計3機で起きた原子炉建屋の水素爆発、燃料棒の溶融、使用済み核燃料プールの沸騰など、未曾有の事態に、日本の原発安全性に赤信号が点っている。

経済学者の大前研一氏は、現在の同原発の状況は、1985年の日航機123便に似ている、とネットTV講義番組で述べた。つまり原発は、すべての電源が切れた制御不能状態にあるという。そして、非常時の対処方法として、全部の電気が切れたケースを想定していない、と東電の対策不足を指摘した。

大前氏は、最悪のケースであるチェルノブイリ原発のようなメルトダウンの可能性を「ゼロではないが低い」とし、すでに廃炉を前提とした計画で強硬な冷却作業を実行するべきだ、との見解を述べた。

原発周辺 地震・事故直後の声

震災時、福島原発で働いていた職員らが、NHKの取材に対して「まさかあんなふうになるとは」と心境を語った。

5号機と6号機で、点検工事の足場の解体作業をしていた作業員は、地震発生時、立っていられない状態になり、みな慌てて身を屈めたという。「(原発の)建物は強いと思っていた。まさかあんなふうになると思っていなかった」と、現在の原発の事故状況に驚きを隠せない。この作業員は現在、福島県内の避難所で生活している。

また別の作業員によると、地震発生時、点検中で運行停止していた4号機の原子炉建屋では当時、200人ほどが作業していたという。「地震時、皆が作業をはっと止めて、それから一斉に逃げ出した」と語った。

福島第一原発から3キロ北にある双葉厚生病院勤務の薬剤師は、12日午後3時過ぎに1号機建屋で起きた水素爆発時の体験を、同じくNHKに対して語った。薬剤師は爆発当時、同病院内にいた。医師や職員らが寝たきりの患者などを避難させようとしていた最中だったという。

「『ボンッ』という強い風が起こり、体に当たった。これはみな避難所にいた誰もが感じたと思う。みな生きているから(原爆のような)熱風でないとすぐに分かったものの、その後、灰色の破片が空からヒラヒラと降ってきた。『死の灰だ』と思い、もう悲壮感に満ちていたが、断熱材だった。暫くして救助隊が来た。みな半分泣きながら、別な避難所への移動を始めた」

世界最大級M9.0を記録した東日本大地震から、1週間が過ぎ、日増しに甚大な被害が明らかになってきている。これまでの死者は東北を中心に6548人に達し、警察に届けのあった行方不明者は10354人。1995年1月に起きた阪神大震災を超える最悪の自然災害となった。NHKによると、県外に避難した人は約28万人とされており、救助された人は2万9千人だが、いまだに救助を待つ人は1万人以上とされている。

(佐渡道世)
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