福島レベル7 懸念される風評被害 IAEA「チェルノブイリと異なる」

【大紀元日本4月13日】経産省原子力安全・保安院は12日、東京電力福島原発の事故の深刻さは、国際原子力放射線事象評価尺度(INES)を適用し、「レベル7」と発表した。突然のレベル2段階引き上げに、日本の産業界への風評被害に拍車がかかるのではないかと懸念されている。一方で、国連科学委員やIAEA、東電幹部などからは、同レベルにある旧ソ連のチェルノブイリ原発事故との類似性を否定している。

東電の発表によると、これまでに福島の事故で外部に放出された放射性物質の量は、放射性核種をヨウ素に換算して、保安院は37京ベクレル、原子力安全委員会は63京ベクレルと推定した。INESの基準では、レベル7は数京ベクレルとされており、福島はそれに該当するとして、今回、政府はこれまでのレベル5から2段階引き上げた。テラベクレルは1兆ベクレル。1万テラベクレルは1京ベクレル。

事故から1カ月経った後のレベル2段階引き上げについて、風評被害への懸念から、日本産業界から世界の「日本離れ」を危惧する声が高まっている。現在まですでに27の国と地域が日本の農産物や加工食品の輸入停止や安全証明書を要求するなどの規制を掛けており、正確な情報発信や風評被害対策が急がれている。

全国農業協同組合連合会(JA)はレベル7の発表を受けて、出荷停止対象以外の農畜産物については、「卸売市場での受託拒否など連鎖的な風評被害を防止するため、正確な情報を徹底して提供し、周知していく」と発表している。

観光庁によると、福島原発事故の深刻化を受けて、日本で開催予定だった国際会議が計60件、延期・中止となった。外国人観光客の訪日取りやめや国内旅行の自粛のため、宿泊施設の予約キャンセルは56万人分超に達するという。大手旅行社は、「レベル7はショック。政府の安全宣言がないと、海外からの訪日旅行者数は回復しないだろう」と、毎日新聞の取材に対して答えた。

「配達業者が退避地域に入れないため、伝票や請求書さえ届かない」と、日本橋のアパレル商社の役員(56)はため息を漏らす。業界紙の繊維経済新聞によると、東北地方には縫製工場が集中しており、中国やバングラデシュなど海外での縫製が拡大し、「日本の縫製」市場が狭まっていた中、最後の砦とされていたところだ。質の高さが売りの国内縫製業者のダメージに、関連メーカーは「代わりになる縫製の技術者はいない」と、今後の製品作りに頭を抱えている。

産経新聞は事故から1カ月経った後のレベル2段階引き上げについて、「誰しも事態の急な悪化を想像してしまう。あるいは、何か深刻な状況を隠しているのではないかと疑心暗鬼にかられかねない」と指摘し、「最も深刻な後遺症は、被災者の心的外傷後ストレス障害(PTSD)で、その予防も不用意のまま、日本国民の不安を肥大させた」と、批判した。

猪瀬直樹東京都副知事は、ツイッターで「原発から何キロならわかるが、福島、茨城、栃木、群馬のホウレンソウの県名を列挙して出荷停止としたが、これでは風評被害を助長し東京に野菜が入らなくなる。牛乳も福島県全部とするのはおかしい」と誤解を招く規制を避けるよう訴えている。

「チェルノブイリとは完全に別物」

福島原発事故の深刻さの「レベル7」発表は、日本国内メディアのみならず、海外メディアも速報を出し、世界中の人々にショックを与えた。一方で、「核の番人」と呼ばれる国際原子力機関(IAEA)や、国連科学委員会の関係者は、福島と同レベルのチェルノブイリとの差異を強調している。

IAEAのフローリー事務次長は12日、福島原発事故のレベル引き上げについて、「チェルノブイリとは、構造や規模の面で全く異なる」との見解を示した。フローリー氏は、チェルノブイリでは原子炉が爆発したが、福島は自動停止していると指摘し、放射性物質の拡散量についても、「福島のケースはチェルノブイリの14分の1」と違いを述べ、両事故の規模のレベルは「完全に別物」とした。

また拡散した放射能の量の差について、国連放射線影響科学委員会の関係者は、「福島原発から放出されている放射能は、チェルノブイリ原発から漏れた放射能の10%に過ぎない」とロシア・イルナー通信の取材に対し答えた。事故の規模については、同原発を管理する東京電力の武藤副社長は、「チェルノブイリでは原子炉全体が暴走し、大量の放射性物質が短時間で一気に放出された。福島原発とは相当な違い」と反論している。

東京電力によると、事故から1カ月経った11日の時点で、福島第一原発にあると推定される放射性物質の拡散量は、外部に放出されていないと仮定した場合、100分の1以下にまで減っているという。

しかし政府は同日、東北地方を中心に東日本で震度5~6の強い余震が続いているのと、福島原発の放射能漏れの長期的な影響への懸念が高まっているため、半径20キロメートル以上で積算の放射線量が高い地域を「計画的避難区域」に設定した。

13日現在まで、東電を含め、IAEAや国連放射線影響科学委員会などの国際機関も、福島原発事故の影響力の長期化を否定していない。収束のメドの付かない今回の事故について、菅総理は12日の記者会見で 「大震災から1カ月、いよいよ人命救済・救援から、社会の復旧・復興に歩みを進めていかなければならない」と災害復興対策に本腰を入れていく姿勢を強調し、「死力を尽くして取り組む」と力強く述べた。

(佐渡道世)
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