黄砂より深刻 有害金属含む「煤嵐」=中国

【大紀元日本4月19日】13日に北京で発表された国際環境保護組織グリーンピースの石炭燃料汚染に関する調査報告『石炭の本当の代償―風向き次第で来襲する「煤嵐」』によると、中国では石炭燃焼により作りだされた大量のヒ素・セレン・鉛などの有害金属物質を含む焼却飛灰は、砂嵐により巻き上げられ、容易に汚染範囲が拡大している。北京、上海、さらには香港にまで及び、その途中の東部や南部など広大な地区の大気を汚染し、人々の健康を脅かしている。現在、中国にはまだ焼却飛灰をコントロールする基準は無く、煤嵐に対する有効な対処はなされていない。

砂嵐が焼却飛灰を巻き込み、煤嵐を形成

ポータルサイト網易によると、中国の砂嵐は中央アジアや中国西北の干ばつ地区で形成され、大風がこれらの地区の砂塵を遠く離れた華北や華東に運ぶ。北方の主要石炭生産地区と火力発電所が集中して分布している山西、陝西、内モンゴルなどの区域は砂嵐の主要な通り道に位置する。

砂嵐がこれらの石炭を燃やす工業が密集する区域を通過する時、大気中や地表の汚染物質、特に露天に積み上げられている焼却飛灰を大量に巻き込む。これらの焼却飛灰は容易に大気の動きに乗って数千キロ先、華北や華東地区の一部、さらには香港、台湾にまで運ばれる。

露天に積み上げられている焼却飛灰(網易よりスクリーンショット)

内モンゴルの火力発電所の汚染排出口(網易よりスクリーンショット)

砂嵐の通り道と中国北方の石炭主要生産地区は交差している(網易よりスクリーンショット)

石炭を燃やすことにより出来るこれらの汚染物質は、ヒ素・セレン・鉛・水銀などの重金属およびラジウム・トリウム・ウラン等の放射性物質を含み、砂嵐の構成を変化させた。砂嵐は危害のさらに大きい煤嵐となり、北京や上海など中東部大都市の大気汚染レベルに深刻な影響をもたらし、その通り道に住む人々の健康への危害も大幅に増加させた。

焼却飛灰に含まれる有害重金属

煤嵐が運ぶこれらの重金属は体内に蓄積し、容易に体外へ排出されない物質だ。このため一定量が蓄積すると発病する可能性がある。

鉛はヒトの神経系統、特に児童の行動と知力の発育や知能指数に悪影響を及ぼすことで知られている。水銀、特に有機水銀(メチル水銀)は消化器官から吸収され、血液脳関門(毒物が脳に到達するのを防ぐためのバリアー)を通過し、脳に進入する。その結果、中枢神経系の言語障害、運動失調などの障害が生じる。またセレンは少量であれば抗がん物質として健康に有利であるが、適量を超えると有害物質となり中毒を起こす。主に神経系、肝臓などの内臓器官にダメージを与える。

焼却飛灰汚染に関する規制基準なし

(網易よりスクリーンショット)

(網易よりスクリーンショット)

焼却飛灰は火力発電所で石炭を燃やした際にできる副産物で、4トン燃やすごとに1トンの焼却飛灰が作り出される。中国では多くの石炭燃焼火力発電所の焼却飛灰は密封保存処理されておらず、露天に積み上げられている。そのため拡散しやすく、二次的な砂ぼこりを巻き上げる。現在、中国には焼却飛灰汚染に関する規制基準が設けられておらず、石灰濾液や二次的砂嵐に対する有効な対策は無いという。

焼却飛灰問題は石炭使用により引き起こされる多くの環境破壊の一部分である。石炭への過度の依頼は中国に大きな環境、社会と健康の代償をもたらす。焼却飛灰がもたらす汚染以外にも石炭の燃焼が引き起こす二酸化炭素の排出は、すでに中国の気候変化に対する最大の挑戦となっている。

(翻訳編集・坂本)
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