中国の人権状況「嘆かわしい」 今後もつづく米中人権対立

【大紀元日本5月13日】「アメリカがこれほども中国の人権問題を非難したことはない」。米VOAが、ワシントンで開かれた第3回「米中戦略・経済対話」についてこう評した。9日から始まった同会合の冒頭から閉幕後の記者会見まで、米側は終始、中国の人権問題について厳しい批判を展開し、一方、中国側は米側の批判を交わしながらも歩み寄る姿勢は見せなかった。人権問題をめぐり、米側が強い攻勢に出たのは初めてのことで、今後もその対立がつづくと専門家は見ている。

今までにない攻勢

開幕式早々、バイデン米副大統領は中国当局による人権活動家弾圧に懸念を表明し、「誤った土台の上に真の関係は築けない」と強い口調で警告した。また、「基本的権利の保護は中国の国際公約。憲法にも書いてある」とけん制した。クリントン米国務長官は「公的な場でも私的な場でも、米国はすでに人権問題への関心を明確にしている」と述べ、「歴史は教えてくれている。人権を尊重する社会はさらなる繁栄と安定と成功を手にすることができる」と中国に忠告した。さらに、クリントン長官は「米国内政治や中国、地域の安定への影響を懸念している」と人権問題の広範な悪影響にも言及した。

同日夜、オバマ大統領は中国の王岐山・副首相らに弾圧への懸念を伝え、「言論や宗教の自由、情報アクセスや政治活動参加の自由といった普遍的価値を支持する」という自らの理念を強調した。

さらに会合が閉幕した11日に発行された米総合評論月刊誌「ザ・アトランティック」は、会合前の週に行ったクリントン長官へのインタビュー記事を掲載した。インタビューの中で、クリントン長官は中国の人権状況は「嘆かわしい」と非難し、公の場での発言よりも率直で鋭い口調で、中国政府はジャスミン革命を恐れ、歴史の前進を阻もうとしているが、それらの行為は「徒労に終わるだろう」と厳しく追究した。

人権団体ヒューマン・ライツ・ウォッチ(ニューヨーク)のアジア問題研究員、フィリム・カイン氏は米VOAの取材に、今回の米政府の発言は、米国が今後、「真剣に中国の人権問題に対処する」というポーズを示した、と指摘した。これまでの両国対話では、中国の人権問題は個別懸案として扱われており、重要政策問題と分けて討議してきた。しかし今回、米政府高官は、中国の人権状況が「両国間のカギとなる問題の1つ」という位置づけを明確にした。「(米高官の)発言は実に喜ばしい。中国の悪化し続けている人権状況は、米中関係の中のいくつかの重要な問題に直接悪影響を及ぼしていることを、米政府はやっと認識したのだ」とカイン氏は歓迎の姿勢を示した。

ひたすら批判を交わす中国

米国の批判に対し、中国側の共同議長の一人、戴秉国・国務委員(副首相級)は、訪中すれば「人権が大きく改善していることがすぐに分かる」と反論した。王岐山・副首相は米ブルームバーグテレビで、「アラブ諸国で起きた革命は中国で起きるとは思わない」と語り、「真の中国を知ることは容易なことではない。それは中国には長い文明の歴史があり、東方の文化を有するからだ」と中国政府の常套句で人権への批判を交わした上で、「アメリカ人民は非常に単純だ」と冷やかした。

さらに閉幕後の記者会見で、中国外交部(省)の崔天凱・外務次官は、中国の人権状況が改善しているのは「客観的事実」であり、「人権問題で中国に対して批判があるが、それは中国の人権に問題があるのではなく、(批判する人に)政治的意図がある可能性がある」と米政府を暗に非難した。崔次官はさらに米側に、「チベット問題での慎重な対応」を要請し、米国をけん制した。

人権団体「中国人権」(ニューヨーク)の顧問・高文謙氏はVOAに、今回の対話の中で中国は「人権問題は内政問題」といういつもの盾こそ使わなかったが、依然として今までの主張を繰り返しており、米中の人権問題をめぐる攻防は実質的な進展はなかった、との見解を示した。しかし、米国が人権問題を公開化、透明化したことは良いスタートであり、今後は政府間対話に加え、「あらゆるルートで中国の民間社会、独立派知識人、人権弁護士などと繫がりをもち、包囲態勢を作るべきだ」と助言した。

ヒューマン・ライツ・ウォッチのカイン氏は、今回の米中戦略・経済対話で米国は明確なメッセージを伝えたと指摘する。それはつまり「中国の人権問題は今後の米中関係の主役になる」ということだ。

(翻訳編集・張凛音)
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