米シスコ社、提訴される 「中国当局の法輪功弾圧に協力」で
コンピュータネットワーク機器開発大手のシスコシステムズ社は19日、米国で気功団体法輪功の学習者により提訴された。代理側の米国の大手弁護士事務所と人権団体「人権法律基金」(Human Rights Law Foundation)が米カリフォルニア州の連邦裁判所に提出した訴訟によると、シスコ社は中国当局のインターネット検閲・監視システム「金盾工程」の開発に積極的に協力して、中国当局による法輪功メンバーの追跡および弾圧を助けたという。
52ページに及ぶ同訴状によると、シスコ社は中国政府の監視システム「金盾工程」の設計に関わり、ネット検閲・監視に必要な特殊機器とサービスを提供、システム運営中の技術支援も行っている。シスコ社は当初から「金盾工程」のシステム設計について、中国公安部に積極的にアドバイスを行っており、それは最も有効的に異見者を割り出すためだという。
また、同訴状によると、インターネットを利用する法輪功学習者はある特定のサイトによくアクセスするため、「金盾工程」の監視機能は彼らを特定できてしまう。その結果、5千人以上の学習者が逮捕されて拷問などを受けている。一部は死亡した。
「金盾工程」は中国の国家プロジェクトであり、中国国内のインターネット利用者に対して、政府にとって都合の悪い情報にアクセスできないように情報を検閲・封鎖するほか、全国民の個人情報の管理、個人のアクセス情報の監視などを行っている。2003年9月から一部稼動を始め、その開発費用は8億ドルに達すると伝えられている。
この現状に対してシスコ社は責任を逃れられないと同訴状は主張し、シスコ社とともに、会長兼CEOのジョン・チェンバース氏と他の経営陣2人も告訴した。
同訴状が取り上げた証拠の一つは、シスコ社内部の中国語営業資料である。同資料では、「法輪功と闘争する」という激しい文言を用いて、中国当局に対して、自社のネットワーク機器の優れた効用をアピールしているという。
一方、今回の訴訟について、シスコ社は20日、「非常に真剣に」弁明していくと表明し、「中国またはいかなる他の地区においても、インターネット運営に関与していない。自社製品に改変を加えてネット検閲と弾圧に協力したりはしていない」としている。
この訴訟に技術コンサルティングを提供している世界インターネット自由協会(GIFC)のメンバー李淵氏は、メディアの取材で、「私たちが把握したシスコ社内部資料によると、シスコ社は中国当局の意図をはっきり理解した上で協力に加わった」と話した。
代理側の「人権法律基金」のマッシュ弁護士は、同基金会は「金盾工程」におけるシスコ社の非常に不名誉な役割を証明する資料を入手していると述べ、法廷審理の過程でこれらの証拠を開示していくと話した。
シスコ社が中国当局に協力してネット検閲システムを構築したとの情報は、2008年に米国議会の公聴会ですでに明らかになっていた。当時、シスコ社内部のあるPowerPoint報告書は、自社のネットワーク・テクノロジーは異見者団体を追跡できると記していた。そのうちの1ページは、「金盾工程」の目標は「法輪功および他の敵対者を取り締まること」と明記していた。
同社内報告書の内容が明らかになってから、シスコ社はすぐに、社内の現場社員が作成したものであり、会社とは関連がないと説明した。
法輪功(ファルンゴン)は、中国伝統文化の一つである気功の心身健康法で、約20年前から一般に公開普及してきた。心身の健康に効果が高いことから、一般庶民から政府高官や軍の関係者も含めて、中国社会の各層で学ぶ人が爆発的に増え、1999年7月に中国で弾圧されるまでに、愛好者は1億人に上ったと推定されている。法輪功の公式サイトは、12年間に及ぶ弾圧によって3400人以上が拷問などで死亡、数十万人が投獄されていると発表している。