内モンゴルデモが続く 当局、収束に必死 天安門事件弾圧の野戦軍も派遣
【大紀元日本6月1日】中国の内モンゴル自治区の区都フフホトで5月30日、モンゴル族による1000人規模の抗議デモがあらたに発生し、地元当局が数10人を拘束した。相次ぎ発生する抗議活動について、当局は軍隊や武装警官を増強して広範の地域で厳戒態勢を敷いている。当局は抗議活動の連鎖が、中東地区のジャスミン革命に変化していくことを危惧して警戒態勢を強める一方、ことの発端となる殺害事件の犯人を逮捕するなどで事件の沈静化を図っている。
米VOAによると、5月30日に起きた抗議デモは、同27日のデモで逮捕された40数人の釈放を求めたもの。27日のデモでは、シリンゴル盟の正藍旗と西ウジュムチン旗の両地区において数千人のモンゴル人が参加し、当局によるモンゴル草原への環境破壊や現地遊牧民の権益への侵害を訴えた。その際に、武装警官は故意に車を走らせ、少なくとも4人のモンゴル族女子学生がはねられ、40人以上が逮捕された。直後から、一部の地域で戒厳令が発動された。
30日のデモはそんな中で行われた。「南モンゴル人権情報センター」の代表エンフバト氏によれば、約1000人のモンゴル人が午前11時ごろにスローガンを掲げ、市の中心部で抗議活動を敢行した。抗議活動は1時間近く続き、数10人があらたに拘束された。
抗議活動への封じ込め
中国語情報サイト「世界新聞ネット」によると、内モンゴル自治区政府は
内モンゴル師範大学に貼られた「重要通知」。「5月30日、フフホト市すべての大学は閉鎖とし、教師・学生はキャンパスから出ることを禁止する」と書かれている(ネット写真)
先週、省都フフホト市の各大学と高校のトップを召集して会議を開いた。5月30日から6月上旬までに、学生の街頭集会を全力で阻止することや、モンゴル人学生を校内に閉じ込めることなどを命じ、執行を徹底しない学校について、幹部の責任を追及すると通達した。
また、ネットユーザーは、省都フフホト市内で大量のパトカーと武装警官が街頭巡回していると伝えている。公園では警戒線が張られて、人々の集まりが禁止されている。一部では携帯電話の通信制限も敷かれているという。AFP通信も現地住民の証言として、政府ビルの付近で多数の警察官が警備にあたっていると報じている。
香港アップル・デイリー紙によると、当局は情勢を制圧するために、「解放軍第38軍」を現地に派遣したという。同部隊は1989年6月4日、天安門広場で学生民主運動を弾圧した部隊であり、中国軍の中で装備がもっとも先鋭的な野戦軍である。
インターネットでの情報封鎖も行われている。中国国内の検索サイトでは、「モンゴル」「フフホト」などの関連キーワードで検索しても、関連の情報がリストアップされなくなっている。
一方、VOAの報道によると、同自治区シリンゴル盟のスポークスマン鮑文東氏はその取材に対して、抗議活動の発生と戒厳令の実施は全部デマであり、一部の人が流した虚偽情報である、と答えている。
「飴と鞭」併用
広範の地域に武装警察官を多数配置し、モンゴル人の抗議を制圧すると同時に、当局は、事件の発端となるモンゴル人殺害事件の犯人を厳罰すると表明し、被害者家族に対し、住宅や60万元(約750万円)の補償金もすばやく支給した。さらに、事件が起きた西ウジュムチン旗の共産党トップを懲戒免職し、内モンゴル地方で中学高校の「学費免除・教材費免除」の範囲を広めることも約束した。「飴と鞭」を併用して必死に抗議活動を収束させようとする当局の焦りが窺える。
南モンゴル人権情報センターのエンフバト代表はこれについて、「モンゴル人の怒りと不満は長年に蓄積されたものである。彼らは北京政府による経済的略奪と文化の侵略を長期にわたり受けており、自分たちの土地で長い間圧制で苦しめられてきた」と述べ、当局の飴と鞭併用の手法は問題の解決に繋がらないとの見方を示した。
内モンゴル自治区は中国最大の石炭採掘地である。人口は約2400万人、うちモンゴル人は現在、およそ20%に止まり、漢民族が中心となっている。
世界各地で声援活動
ドイツのラジオ局ドイチェ・ヴェレ(中国語版)によると、民間団体「モンゴル人権保護同盟」は5月30日、世界各地で声援集会を召集し、中国当局によるモンゴル人への制圧に抗議した。モンゴルの首都ウランバートルのほか、ワシントンの中国大使館前とニューヨークの中国総領事館前、東京の中国大使館前でも、現地在住のモンゴル人による抗議・声援活動が行われた。
一連の抗議活動の発端は、5月上旬に発生した、漢民族によるモンゴル人故意殺害事件である。5月10日、自治区内の西ウジュムチン旗では、モンゴル人男性・莫日根さんは、自家の草原を無断で走行する漢族の炭鉱への運搬トラックは草原を破壊しているとして阻止したところ、トラックの運転手は故意にトラックを莫さんにぶつけて死亡させた。その5日後、別の炭鉱では、周辺住民のモンゴル人が炭鉱労働者の漢族人と衝突し、モンゴル人1人が死亡する事件が発生した。中国国営新華社は、二つの事件の犯人はすでに逮捕されている、と報じた。