鉄道部報道官が「異動」 「スケープゴートだ」と同情の声も=中国
【大紀元日本8月19日】「信じるかどうかは自由だが、私は信じる」。流行語ともなったこのセリフを発した中国鉄道部の王勇平・報道官が、このほど職場「異動」となった。新華社の英文通信は16日に同氏の「停職」を伝えたものの、17日の人民日報(ネット版)は一転、王氏は、ポーランドに本部を置く鉄道国際協力機構の中国側委員に就任すると報じた。つまり、王氏は「免職でも停職でもなく、正常な人事異動」(鉄道部幹部)だという。
「異動」にしても「処分」にしても、鉄道部そのものを代表した「無責任」発言を口にした王氏についてのこのニュースは、意外にも多くの人々の同情を得た。「スケープゴートにされただけだ」という意見がネット上で飛び交う。
「女官が身ごもったら、皇帝が宦官を処刑した」
「スケープゴート」を意味する中国のこの古くからのフレーズがこの2、3日、中国のインターネットを賑わせた。
王勇平は、7・23温州鉄道事故後の記者会見で、事故車両を埋めたことについて、「救助を円滑に進めるため。あなたが信じるかどうかは自由だが、私は信じる」と発言し、さらに、救助が打ち切られた後に女児が発見されたことについて「奇跡だ」と、傲慢な態度を見せたことで世間から猛反発を受けていた。
「この態度は鉄道部の日ごろの傲慢さを如実に表している」と、記者の勒克児(ハンドルネーム)は17日、網易のブログで指摘する。これらの言葉は、王氏が多くのメディアを前にして、焦ってもらした本音であり、プラス彼の幹部としてのイントネーションと表情で、思わず人々の反感を買ってしまったという。
鉄道部にしてみれば、王氏は「重大な事件で、重大なタイミングで、重大な間違い」を冒し、彼を処分するのは至極当然だと記事は分析しながら、彼のその「重大な間違い」である傲慢さは、ほかでもなく、鉄道部で8年間培ったものだと指摘する。
王氏の同僚である教育部の元報道官・王旭明氏はブログで、同氏の記者会見の様子を分析しつつ、鉄道部を批判した。「王さんの発言には、確かに適切ではないところ、いや、間違いさえある。しかし、本来なら、あのような重大な事故では、鉄道部のトップが会見を開くべきではなかろうか。一介の報道官にメディアに向かわせるのはそもそも間違いである」。さらに、同氏の異動を聞いた王旭明氏はミニブログで、「確かにあの記者会見はまずい。しかし、口を開かず黙っている人よりは何倍も良い」と、責任を取らない鉄道部の幹部らを批判した。
中央人民ラジオ放送の郎峰蔚エディターも、「多くの人が部屋の中に隠れている時に、王さんは嵐の中に放り出された。そして、嵐の後に現れたのは虹ではなく、中からのさらなる雷だった」と、異動はただ、鉄道部が王氏をスケープゴートとしたやり方だと批判した。
報道官らへの見せしめか
勒克児さんはブログで、このように綴った。「鉄道部はこの日に高速鉄道の減速を発表し、国民の事故調査結果への期待も高まった。こうした中、王勇平・報道官への処分が発表された。まさしく『女官が身ごもったら、皇帝が宦官を処刑した』ということだ。これは鉄道部が作ったもう1つの『奇跡』ではなかろうか」
記者でもある勒克児さんは、記者会見で「棒読み」する報道官や「ノーコメント」の報道官をたくさん見てきたという。人々の情報を知る権利は、このような「無表情」や「多くしゃべれば災いをもたらす」という雰囲気の中で抹消されていく。そして、今回の王氏への処分は、これらの報道官に見せしめの効果があるとして、今後はさらに多くの報道官が口をつぐみ、庶民はさらに情報から遠ざけられるのではないか、と勒克児さんは憂慮している。