医療ミスへの報復 北京市の名女医、メッタ刺しで重体 ネットでは犯人への同情も

【大紀元日本9月24日】北京市の名門・同仁病院でこのほど、患者が医者をメッタ刺しにし重傷を負わせる事件が発生した。犯人は逮捕されたが、同病院では今週、多くの医者がストライキを行い、安全な医療環境を求めた。

同事件は、中国国内で大きな反響を引き起こしている。ただ、インターネット上の書き込みは犯人を支持する内容が多い。中国国内情報サイト「財新ネット」の報道は、事件が発生するまでの経緯を詳細に分析し、中国の法律、医療の問題点を指摘した。

犯人の名前は王宝洛、元教師。5年前に同病院で早期の咽頭ガンと診断され、その後、彼は多額の謝礼金をつぎ込んで、同病院の名医・徐文氏に治療を託したという。

王容疑者のミニブログの書き込みによれば、徐文氏は当初彼に対して、簡単な顕微鏡手術でガン細胞を完全切除できると説明していた。財新ネットの報道によると、同病院の耳鼻咽喉科の責任者も公に、この種の手術は「傷口が小さく、出血もない。手術後数日で退院できる」と説明していた。

2006年10月19日、手術が行われた。しかし成功しなかった。王容疑者は術後、症状が急激に悪化して声を発することができなくなった。手術ミスによってガン細胞が拡散したと主張する王容疑者に対して、病院側は手術前に想定されるリスクを十分に説明したと反論しており、双方は完全に対立した。

3年前、王容疑者は訴訟を起こした。一方、裁判所は本件について、一度も法廷審理を行わず、そのような状況の中、王容疑者は15日同病院を訪れ、刃物で徐文氏を17回刺したという。

この事件について、中国国内総合情報サイト「財新ネット」は次のように詳しく報道・分析した。

「医者を切りつける。これは明らかに違法で非難されるべき行為である。しかし、この行為に至るまでの3年間、和解不可能となった双方の医療訴訟において、法律はなぜ機能しなかったのか。この事件は、当事者の医者と患者の両方にとって悲劇である。悲劇の根源はこの2人にあるのではなく、歪んだ医療体制と不備な法律システムにある」

「法治の角度からみると、医者に同情し、医者の保護を呼びかけるのは正しい。……理論上、いかなる手術でも予想外の状況になるかもしれない。もし、予期せぬことが発生するたびに報復されるならば、この職業はあまりにも危険すぎる。医者が萎縮して、堂々と医療行為ができなくなれば、最終的に損するのはやはり全体の民衆である」

「しかし、患者の角度からもみてみよう。王宝洛が犯行に及ぶまでの遭遇も、もちろんとても同情されるべきだ。いまでは医療業界では暗黙のルールだが、王宝洛は人脈と大金を駆使して、やっと国外留学経験のある名医・徐文氏に治療を依頼できた。……しかし、手術は成功しなかった。紆余曲折を経て、最終的に彼は声を発することができなくなり、教師としての人生が幕を閉じた。障害者になった彼の苦しみは想像し難いものであろう」

「王宝洛は徐文氏は手術ミスしたと認識している。彼にはもちろんこのように疑う権利がある。しかし、この種の疑いを解明するには、医者と患者の間の十分なコミュニケーションが重要不可欠。もし、それが不可能であれば、法律はこの種の対立を解決する最後の手段になる。……しかし中国では法律が医者と患者の対立に対して、本来発揮すべき役割を果たしていないのは明らかだ」

「本訴訟案は北京市朝陽区裁判所から東城区裁判所に移されたが、3年の歳月が経っても、一度も法廷審理が行われていない。……調べて分かったことだが、王宝洛は犯行当日、代理弁護士を通して、裁判所に早急に法廷審理するよう促した。しかし、それに対応した裁判官は依然として、開廷の日時について答えを出さなかった」

近年、中国では医者と患者の間に信頼感が欠けており、衝突事件が多発している。財新ネットの統計によると、報道されたものだけでも今年すでに9件発生している。

8月16日、広東省東莞市の長安病院で医者と患者の衝突事件が発生し、医者1人が死亡、1人が重傷を負った。また、1月31日、上海市新華医院で発生した衝突事件では、医者と看護師10人が負傷、うち6人の医者は重傷だった。一方、5月30日、江西省上饒市人民医院では、100人余りが病院を包囲して、医者に暴行を加える事件が発生、負傷者が多数出たもようである。

今回の事件について、ネット上に読者コメントがたくさん寄せられている。

「いまの医者は良識を完全に失っている。刺してよかった。庶民は皆拍手している。いまの病院は地獄の入り口だ。庶民はこのような手段で鬱憤を晴らすしかない。公正を守り、代弁してくれるところはどこにもない。政府は完全に信頼できない。もちろん庶民のために正義を守ることもない。だから、庶民はこのような手段を使うしかないのだ」

「教師は先生、医者は白衣の天使。しかし、今はその本質が完全に変わった。彼らは人の命を救うのでもなければ、生徒に道理を教えているのでもない。ビジネスをやっているのだ。処方箋の金額が高ければ高いほど、収入も多くなる」

「医者の皆さん、もし、あなたたちが法律をしっかりと遵守し、法外の謝礼金を要求せず、医薬品のマージンをも取らなければ、私はあなたたちの『安全をください、尊厳を守ってください』という訴えを支持する。しかし、現状はまったく違う。あなたたちの世界は真っ黒だ」

(翻訳編集・叶子)
関連記事
2023年5月25日に掲載した記事を再掲載 若者を中心に検挙者数が急増する「大麻」(マリファナ)。近日、カナダ […]
中国共産党が7月に反スパイ法を改正し、邦人の拘束が相次ぐなか、外務省が発表する渡航危険レベルは「ゼロ」のままだ。外交関係者は邦人の安全をどのように見ているのか。長年中国に携わってきたベテランの元外交官から話を伺った。
日中戦争の勝利は中華民国の歴史的功績であるが、これは連合国の支援を受けた辛勝であった。中華民国は単独で日本に勝利したのではなく、第二次世界大戦における連合国の一員として戦ったのである。このため、ソ連は中国で大きな利益を得、中共を支援して成長させた。これが1949年の中共建国の基礎となった。
香港では「国家安全法」を導入したことで、国際金融センターとしての地位は急速に他の都市に取って代わられつつある。一方、1980年代に「アジアの金融センター」の名声を得た日本は、現在の状況を「アジアの金融センター」の地位を取り戻す好機と捉えている。
米空母、台湾防衛態勢に 1月29日、沖縄周辺海域で日米共同訓練が挙行された。日本からはヘリコプター空母いせが参 […]