重金属汚染問題 深刻化する耕地汚染と増加する癌村

【大紀元日本10月26日】重金属による汚染が深刻な中国では、食糧安全に対する危機や村人の多くが癌に苦しむ癌村の増加が大きな問題となっている。

健康に関する話題を扱う中国のポータルサイト「39健康網」によると、中国では毎年新たに200万人が癌と診断されており、癌による死亡者数は140万人にのぼる。多くの大都市では悪性腫瘍が心脳血管疾病を追い越し、死因のトップとなった。

また、広州紙・新快報の報道によれば、中国工程院の羅錫文氏は10日、中国の耕地3億畝(1畝は6.667アール)での重金属汚染は深刻であり、農田全体の6分の1を占めていると語り、経済発展に伴う土壌汚染の深刻さを指摘している。

「癌村」の増加

中国27省区でおよそ250の村が癌村として記録されている。これらの村では、水や土地は重金属に汚染され、村民の職業病の発症率や病死率が大幅に上昇し、死亡年齢が45歳前後に早まっているという。

今年2月、遼寧省の亜鉛工場で働く高さん(46)が肝臓癌で亡くなった。夫人の劉さんは、亜鉛工場の汚染に慣れてしまったと話した。「日本で放射能漏れ事故が起きた時、少しも怖いと思わなかった。ここの汚染の方がよっぽどひどい」という。

米ジョンズ・ホプキンス大学公衆衛生学院の6年前の報告は、中国5万キロの主要河川のうち4分の3以上がすでに魚類が生存できる環境ではないと発表している。汚染が最も深刻な水準に達している大遼河、海灤(らん)河、淮河、黄河の多くの区間では、当時すでに沿岸のガン発生率の上昇を確認したと記録している。

「淮河、沱河、海河、黄河、大運河など皆が知っている大河には、それぞれ大河を讃える多くの文学作品があるだろう。これらの河は中国人代々に恩恵を与えてきたが、今はどうだろう。沿岸の人々は魚米の郷ではなく死にゆく癌村に住んでいる。このような村が一体どれほどあるのか誰も知らない」と、汚染に関する資料を収集した人がインターネット上に書き込んでいる。

 

臨界点に達している汚染された中国の河川、湖(ネット写真)

深刻な土壌汚染

新快報の同報道によると、広東省では汚染を受けていない土壌はわずか11%しか存在しない。軽度の汚染が全耕地面積の77%を占め、重度に汚染された土壌は全体のおよそ12%。江蘇省と浙江省の境に位置する太湖流域では、耕地面積の3分の1が汚染を受け、湖北省では全省耕地面積の10%にあたる40万ヘクタールの農地が三廃(排ガス、工場廃水、固形廃棄物)の汚染を受けている。湖南省では冷水江の深刻な河水汚染のため省内37%の水田から基準値以上の重金属が検出され、遼寧省瀋陽市でも土壌のカドミウム汚染が原因で、生産された米からカドミウムが検出されている。

中国の国土資源部の発表によると、中国では毎年1200万トンの食糧が重金属に汚染され、200億元を超える直接経済損失が出ている。

広東省連南、広西地区南丹、湖南省の常寧、常德、郴(ちん)州などではヒ素が大量に投棄され、鉱区周辺の農作物には国家基準値を超えるヒ素が含まれているという。

水田土壌は畑に比べ、ヒ素や鉛の含有量が高い。これは水が重金属を吸着する能力が強いためで、稲など水田で栽培される農作物の重金属含有量はより高くなる可能性がある。

しかし、食糧主要生産地区が深刻な汚染を受けているという報告を、研究員が現地政府職員に送ったところ、「我々には処理管理する力がない。だからこの報告を見たことは誰にも話さないでほしい」との要請があったという(中国経済週刊)。

また、中国新聞週刊の報道によれば、食糧を監督管理する部門は重金属の測定法が分からないため、食糧の重金属汚染問題を公にしなかった。当局はいまだに、食糧安全問題とは食糧不足を指しているという認識しかないという。

このほか数ヶ月前に、雲南省曲靖市で六価クロム不法投棄問題が取り上げられている。問題の起きている同市陸良県の興隆村では、化学製品工場が創業当時の1989年から22年もの間、近くの河川周辺にクロム廃棄物を投棄しており、河川や水田の汚染などが深刻化している状態だ。

珠江デルタ地区

珠江デルタ地区の重金属汚染は特に深刻だ。世界の工場と呼ばれてはいるものの面積は広くないこの地区は、中国の対外貿易額の30%を製造する一方で、長い間、深刻な汚染を受けている。IT業による重金属汚染が同地区の特徴で、地場野菜に含まれる重金属が基準値を超えている。

「Ph5.6、化学的酸素要求量は基準値の96.9倍、浮遊物32.5倍、銅5199倍、亜鉛3.9倍、ニッケル9.6倍、総窒素8.6倍、アンモニア態窒素24.7倍、鉄178.2倍」2009年3月3日、広東省惠州市環境保護当局が惠州美鋭電子科技有限公司に対し調査を行った際、未処理のまま排水されていた一部生産排水のサンプルを測定した結果である。

珠江は、長江や黄河に続き中国で3番目の河流であり、広州、深セン、惠州、珠海、香港など10以上の都市4700万人の飲用水を供給している。

広東省の大宝山では、1970年から露天掘りで採掘を行っている。このため水土の流出が深刻で、水土に伴いながら重金属が付近の横石河に流れ込んでいる。河流はカドミウム、鉛、インジウム、亜鉛、その他の金属で汚染されており、下流の韶関市上壩(は)村では飲用水が深刻な重金属汚染を受けている。かつて2300畝以上の豊かな水田と350の養魚池を持ち、広東省北部の「魚米の郷」という美称を持っていた村は汚染が進むにつれ、水田や養魚地が荒れ、アヒルがこの水に入ると数時間で死んでしまうようになった。この村では、20年前から250人以上が癌で死亡しており、癌村として知られている。

世銀2007年研究報告によると、中国では毎年約46万人が空気と水が汚染された環境下で死亡しているという。

重金属汚染数は国家機密

重金属汚染が日増しに深刻化している中国だが、その汚染情報は国家機密とみなされている。同時に、共産党政権が唱える経済成長の追及という大前提のもとで、相応する法規と管理監督の効力が失われており、重金属汚染は長期にわたって中国大陸を蝕んでいる。80年代から学者らは重金属汚染対策の重要性を呼びかけ続けてきたが、共産党政府の主な関心はGDPの増長速度にあり、重金属汚染のハイリスク地区がどこであるかは公開しなかった。

環境保護部門の環境監視測定データには、最近10年間の大気と水体中重金属含有量と変化データも含まれているが、具体的な排出源がどこなのかは発表されていない。

GDPへの度を超えた追及が重金属汚染の主要原因であることは疑う余地もない。地方政府の商業誘致とGDPは政績につながり、汚染など気に留めることもない。環境保護部門も実質上、地方政府に属する部門であり、GDPを造り出す汚染企業を制限するすべはない。

民間環境保護活動家によると、中国の現状の管理体制は、企業が隠れて汚染物を廃棄すれば得になる体制だ。中国で1トンの汚水を処理するための費用は1.2から2.0元(約15円から24円)。ひとつの工場が1日に排出する汚水は十数万トンで、1日十数万元あるいは数十万元の処理費用がかかる。それに対し、不法に排出し発見されても、罰金は処理費用を下回るため、企業は汚水処理放棄の方を選択してしまうのが現状だ。

(翻訳編集・坂本)
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