交通事故生還者の臨死体験

喜びを忘れずに生きていこう(下)

私は未来まで見えず、また創世話も見ていないが、ただ自分の一生を見た。私の生活に起きた全てのこと、美しいこと、苦痛なこと、すべてを見た。私はただ無条件のを見た――ジェフ・オルセン

ジェフの瀕死体験を証明した人

ジェフさんが転院すると、以前の病院の医者と看護婦が彼を見舞いに来た。看護婦は、「あなたが病院に搬送されてきた時、初めてあなたの病室に入った時、あなたを包囲していた愛と光を感じました」と語った。それは妻と別れの言葉を交わした時だとジェフさんは思った。看護婦は引き続き言った。「実は、私は彼女を見ました。他界したはずの奥様は、あなたのそばに立っていた。私は自分の目を疑ったわ」

そして、医者も言った。「私は奥さんを見ていないが、彼女の存在は感じました。必ず夫の命を救ってくださいと、彼女は私に頼みました。私は5人の外科医を集め、16時間の緊急措置を取り、あなたの命を救ったのです」と語った。それは妻に別れを告げ、自分の体の中に帰ることを決めた瞬間だと、ジェフさんは思った。医者の言葉はジェフさんの臨死体験を証明していた。ジェフさんは頭がおかしくなったと周囲に思われないために、瀕死状態で体験したことをあまり口にしたことがない。医者はジェフさんの親しい友人となり、今は2カ月に一度、昼食を共にしている。

ジェフの回復

5カ月ほどの治療を経て、退院も間近となったある日、ジェフさんは深い眠りに入った。彼は夢の中で、かつて交通事故現場の上空で飛び上がった時に入った愛と光に満ちた世界に、もう一度入った。その境界では、ジェフさんは落ち着いていて、楽しく自由にあちこちと走り回っていた。美しい光を追って走っているうちに、廊下の突き当たりに1台のベビーカーがあるのを見た。ベビーカーの中で熟睡しているのは、交通事故で亡くなった生後14カ月の次男・グリフィン(Griffin)だった。グリフィンの寝顔はとても可愛く、事故が起きる前にジェフがバックミラーから見た寝顔と同じだった。

「私はグリフィンを抱いて、彼の体温、呼吸する時の胸の鼓動、私の首に吹かれた彼の吐息、私の頬についた彼の髪の毛を感じた。そのリアルさに私は驚いた。その境界にいる時に感じたことは、現実世界で感じたことよりもリアルだった」。その境界にいる時、ジェフさんはいくつかのことを悟った。

すべての精神は即ち物質でもある

「ある声が私に『あなたがここにいるのは一時的なことだ』と教えた。それは本当なのかと思ったら、その声は『すべての精神は即ち物質そのものであり、すべてのエネルギーは手で触ることができるが、ただ異なる周波数、異なる層にあるだけだ。あなたはとても高い層にいるから、何かを感知する時、とてもリアルに感じられるのだ』と教えてくれた。私はグリフィンを抱きながら泣いていた。やっと彼と一緒になれたのだが、もうすぐ別れなければならない。その時、私は後ろから巨大なエネルギーを感じた。それは知恵と親切、そして慈悲に満ちた力だった。私が私の子供を抱く時、あの聖なる生命は後ろから私を抱擁した。私は振り返って見る勇気さえなかったが、無条件の愛を強く感じた。私はただそこに立って、涙を流していた。私が息子を抱くと同様の愛を以って、神様は私を抱擁していることが私には分かった」

私は自分の一生を体験した

「その後、灌頂(download)が始まった。あれは大きくて比類のない『灌頂』で、言葉ではなかなか言い表しにくい感覚だ。すべてが無くなったようで、私は溶けてすべての物事の一部分になったようだ。……グリフィンは私の中に溶け込んで、一方、私は先ほど言った『神様』の中に溶け込んで、私たちは実は一体になった。私には自分の生涯が見えた。美しいこと、苦痛なこと、私に間違いと判定されたこと……しかしその愛の中に判定などは存在せず、私が感じたのは無条件の愛だけだった。宇宙全体は私に『私たちはあなたを愛している、あなたを応援している。あなたに名誉を贈り、あなたを前へ進ませ、勉強させ、成長させる……』と言った。それはまさに美しいことではないだろうか」

人間世界に来た理由 家に戻る知恵を備えるため

「私の信仰体系の中で、神様は私のすべてを手配していると思う。神様は私の肉親をあの世に連れていき、私がどんな反応をするかを見ている。私は神様に救われるだけの価値があることを、証明しなければならない。しかし愛に満ちたこの空間には何も証明する必要がなくて、神様は完全に私を理解して愛して下さっている。宇宙全体が私を支えていて、私に『家に戻る』ための知恵を教えている」

亡くなった次男を神様に返して、心霊の解脱を遂げる

「選択すること」に関して、ジェフさんは言った。「神様から多くを教わった。言葉は使われておらず、神様との間の交流のほとんどは音声がなかった」

「自分は神様にすべてを奪われた被害者だと思う選択もできるし、自分を殴ることも選択できる――当時、車を運転していたのは私だったのだから。しかし、私にもう一つの選択肢がある。つまり、妻と次男を神様に返すこと。そうすると、妻と次男は永遠に奪われることがない。そう決めた時、私の心はこの上なく落ち着いて慰めを感じた。私は次男にさよならのキスをし、彼をベビーカーに戻した。その後私は目が覚めて、病院に戻った。痛み伴う手術に戻った」

こちらの世界での人生は続く 彼岸の世界と同じように美しい

ジェフさんが入院している間、生還した長男・スペンサーは叔父たちと一緒に暮らしていた。スペンサーにとって、壮健なお父さんは消えた。ジェフさんは家に帰る時、兄弟たちに体を持ち上げられて車から降り、そして車椅子に乗せられた。ジェフさんがスペンサーと目を合わせた時、スペンサーは無言でジェフさんのそばを通って門を出た。「片方の足まで切断された父親を受け止めることは、スペンサーにとって難しいのだ」とジェフさんの心は痛くなった。

しかし、門を出たスペンサーは隣近所の家を一軒一軒ノックして、言った。「見に来て、見に来て、パパが家に戻って来たよ」。「彼は私のことを決して恥ずかしく思っていたわけではない」とジェフは分かった。スペンサーはジェフさんの太ももの上に坐り、ジェフさんに抱き着いた。「歩けるようになるまで、まだ少し時間かかるよ」と言うと、「お父さんがどのように変わっても、僕はお父さんが好きだよ」とスペンサーは言った。スペンサーは今、24歳の立派な青年に成長した。

その後のジェフさんの人生には、たくさんのすばらしい出来事があった。ジェフさんは再婚して、2人の男の子を養子にもらった。彼らは実の兄弟のようだった。養子にもらった時、兄はちょうど生後14カ月で、弟はまだ生まれていなかった。彼らの実の母親の希望に応じ、ジェフ夫妻は産室に入り、母親に付き添って弟の誕生を一緒に迎えた。去年ジェフさんが講演をした時、弟はもう14歳になっていた。

「80マイル」の表示板を乗り越え 喜びと愛を選ぶ

自分のストーリーをテレビ番組で話し終わった後、ジェフさんは視聴者と共に、彼の人生について交流した。「第1、人間には絶対に神としての性質を持っている。その性質は容易に変えられるものではない。第2、すべては我々自身によって取り決められる。第3、無条件の愛。他のたくさんの臨死体験に比べて、私の体験はとても単純なものだ。しかし、その中にすべてを貫くものがあり、それはつまり無条件の愛である」

取材を受け、肉親を失った人々に何かアドバイスはないかと聞かれたジェフさんは言った。「私は死に対して恐怖感を持っていない。私は死を経験したことがある。1つの部屋からもう一つの部屋に移っただけのように、どちらも我が家のように愛に満ちている。生きることを苦しいと思うこともでき、面白くて喜ばしいと思うこともできる。どれを選ぶかは自分次第だ。臨死体験の中で、私が神様から授かったメッセージはただ二文字、『喜びを選ぶ(choose joy)』である。何かに遭遇する時に、断るより受け止める方向を選ぶと、人生はそれだけで美しくなる」。独特な経験から得た知恵に頼って、ジェフは非営利組織「at one(一体)」を創設し、カウンセリングや交流、講演会などを行っている。

(翻訳編集・陳櫻華)