薬用植物 ヒガンバナ

ヒガンバナ(彼岸花)は中国では石蒜(セキサン)、曼珠沙華(マンジュシャゲ )と呼ばれます。秋分の日の前後7日間を秋の彼岸と言いますが、ヒガンバナは見事にこの時期に合わせ、花を咲かせます。日本でよく見られる赤いヒガンバナは三倍体植物で、遺伝的に種子が出来ない品種です。しかし種子ができることも稀にあり、記者も見つけたことがあります。種子から芽が出る可能性は低く、発芽率が良くありません。多くのヒガンバナは、親と同じ遺伝子を持つ鱗茎の分裂によって株を増やし続けてきたのでしょう。

鱗茎を叩くと刺激のある独特の匂いがしますが、これはリコリンやホモリコリンなどのアルカロイド成分が含まれているためです。毒の他にデンプンも含まれるため、飢饉の時には鱗茎を叩いて有毒成分を流水に晒して除き、沈殿したデンプンだけを取り出して食べたそうです。毒を含む鱗茎をモグラが嫌がって近寄らないため、ヒガンバナを稲田の畦に植えると土留となり、土が流れにくくなります。

足の裏にヒガンバナの鱗茎を砕いたものを貼り付ける民間療法があります。また、膝の痛みや腫れ、腹水を取る療法も伝承されています。有毒植物なので服用すると粘膜を刺激し、吐き気を起こすため注意が必要です。

上海科学技術出版社が発刊した『中薬大辞典』にも、同じような使用法が書かれているのは興味深いところです。

(吉本 悟)

関連記事
耳や顔、手に現れるサインが心血管疾患のリスクを示すことがあります。中医学に基づく健康チェックと予防法を解説。健康管理に役立つ情報が満載です。
都市開発で失われた故郷の村を、母と息子が裏庭に再現。20年以上かけて築かれた小さな村は、今や訪れる人々に安らぎをもたらす癒しの空間となっている。
コレステロールは健康維持に不可欠な物質であり、摂取量よりも体内での処理と管理が重要です。炎症や肝機能、生活習慣の改善が鍵を握ります。
糖尿病の方や低糖質食実践者でも楽しめる、血糖値に優しい7種のおやつを紹介。食べ方や選び方のコツを押さえれば、おやつは我慢せず賢く楽しめます。
印刷物の読書は、スクリーン読書と異なり、脳の深い処理を促進し、記憶力や理解力、情緒や社会性の発達に良い影響を与えることが、神経科学の研究で明らかになっています。