昔、ある読書好きな学者がいた。ある夜、雨が止み明るい月が出ると、彼は若い下僕を一人連れて、大瓶の酒と共に墓地へ向かった。墓地に着くと、草むらに向かって呼びかけた。「こんな良夜に独りで飲むのは寂しいものだ。冥土にいる者たちよ、一緒に酒を飲まないか?」しばらくすると、燐火が草むらの中で瞬いた。再び彼が呼びかけると、諸々の鬼たちが「ウーン」と低い唸り声をあげながら、よろよろと現れ、学者のところまであと1丈というところでピタリと止まった。
影を数えると、およそ10余りの鬼がいる。学者が大盃で酒を地面にまき散らすと、すべての鬼が頭を下げ、酒のにおいをかいだ。「この酒はたいそううまいですな。もっといただけますかな」と鬼がつぶやいた。学者は鬼たちに尋ねた。「あなた達は、どうして輪廻して人間に生まれ変わらないのですか?」すると、一匹の鬼が答えた。「善行があった者たちは全員、すでに転生した。悪行を積んだ者たちは、すべて地獄に落ち、懲罰を受けた。我々13人のうち、輪廻を待つ者は4人で、悪業により輪廻に入らない者は9人だ」と言った。
「それでは、あなた達はなぜ、懺悔をして解脱を求めないのですか?」と学者が聞くと、鬼はうなだれて言った。「懺悔は必ず死ぬ前にしなければならないのだ。死後に懺悔しても無駄なことだよ」。そして、酒を飲んで満足した鬼たちは、立ち去る時に学者に言った。「餓鬼が美酒を頂いたお返しに、この言葉を送ろう。懺悔は、生きている時だけに有効なのだ」
(『閲微草堂筆記』より)
(明慧ネットより)
ご利用上の不明点は ヘルプセンター にお問い合わせください。