世界銀行の上級責任者2人が退任 中国投資で内部から非難
世界銀行ジム・ヨン・キム総裁を支える上級管理責任者の2人が、退任することになっている。2015年前半、中国の「異例な」10億ドルの貸付をめぐって、銀行内から厳しい非難の声があがっていた。AFP通信が入手した内部メモを7日、報道した。
それによると、世界銀行の民間セクター開発に取り組んでいた蔡金勇・国際金融公社(IFC)長官は、4年の任期満了を待たずに2015年末に退任する。蔡氏は中国籍で、英ゴールドマン・サックス銀行出身。
世界銀行の最高財務責任者(CFO)バートランド・バトラー氏は、2016年3月に退く。バトラー氏はフランス国籍で、同国大手ソシエテ・ジェネラル銀行出身。2013年から世界銀行に加わった。内部メモによると、後任者はキム総裁からまもなく発表されるという。
支出削減を実施していたバトラー氏は2月、中国の「異例の10億ドルの貸付」にかかわったとして、調査を受けていた。蔡氏とともに、世界銀行の最貧国向け基金・国際開発協会(IDA)を通じて、中国に対する貸付けを増やすことを許可したと、AFP通信は伝えた。
人権侵害のある国へ融資 内部で強い非難
銀行内部では、人権侵害のある国へ融資することへ、強い非難が起きていたという。世界銀行の副総裁マデリン・アントンシック氏は2014年12月、この問題を提起した。まもなく、行内で深刻な対立が起きた。
しかし、外部監査する法律機関の調査では、IDAにもIFCにも、詐欺や不正の証拠は見つからなかったという。アントンシック氏は、7月に退任した。
蔡氏は、非常に複雑な商取引を管理することで知られていた。IFC長官に就任後も、組織全体の積極的な貸付と投資を後押しした。一方で、一部の投資、特に中国企業に対する姿勢には、株主の不安感を引き起こしているという。
IFCは最近、中国の事業展開30周年記念を祝った。これまでIFCは、中国で300以上のプロジェクトへ100億ドルを投資した。
2015年の資料によると、IFCの運用資産は504億ドル。184カ国の政府が株主で、トップ5カ国は米国(21%)、日本(6%)、ドイツ(5%)、英国(5%)とフランス(5%)。
(翻訳編集・佐渡 道世)