七つの謎

秦の始皇帝陵

中国初の皇帝となった秦の始皇帝(紀元前259~210年)の墓「秦始皇帝陵」は、陝西省西安市から北東に30キロメートル離れた驪山(りざん)の北側にある。この墓は1974年に地元住民によって発見され、その後、墓を取り囲むように配置された8千数百体に及ぶ兵士や馬をかたどった兵馬俑(へいばよう)が発掘された。しかし、規模が大き過ぎる上に、発掘された文物を保護する技術が未熟なため、墓本体の地下宮殿は依然として埋もれたままである。未発掘のこの地下宮殿には七つの謎があるという言い伝えがある。

水銀の河川

「水銀を使って始皇帝陵に河川や海を作った」という記録が『史記』と『漢書』に見られるが、真実かどうかは謎のままである。大陸の地質学者、常勇氏と李同氏が始皇帝陵から土壌サンプルを採取して分析した結果、土壌の水銀含有量が異常に高いことが判明した。陵墓周辺で採取した土壌サンプルからは水銀が殆ど検出されなかったため、『史記』と『漢書』の記録は事実である可能性が高いと推測されている。

埋蔵されている珍宝の量

前漢時代の歴史家、司馬遷(しばせん)が著した『史記』には、陵墓内が「金雁、珠玉、翡翠など無数の珍宝で満ちている」と記されているが、果たして本当だろうか。1980年、始皇帝陵墳丘から20メートル離れた地点の地下7.8メートルで、2乗の銅車と8頭の銅馬、および2体の御者が出土した。この銅馬車は非常に精巧に作られており、金製や銀製の装飾品も多く発見された。地下宮殿の外苑にこれほどの副葬品が存在するのであれば、宮殿内の宝物は想像を絶するほど豊富なのかもしれない。

飛行する黄金の雁

清代の張澍が編集した『三輔故事』に、長安(今の西安)と長安近辺に存在した宮殿や名園等の資料が掲載されている。その中に、西楚覇王の項羽は長安を侵略した後、30万人を投入して始皇帝陵を発掘したが、その発掘の最中、一羽の金雁が突然墓から飛び出して南に向かって飛んで行ったという記録がある。司馬遷が著した史書にも、陵墓に「黄金で作った雁がある」との記載がある。春秋時期の職人、魯班が木で造った雁も空を飛ぶことができ、遠く宋国の城壁の上まで飛んで行ったという伝説もある。

始皇帝の棺の材質

始皇帝を納めている棺の材質に関して、古代文献には詳しい記載が無い。しかし、『史記』と『漢書』に記されている「精錬した銅で中を固め、漆を外に塗り付け、更に翡翠、真珠、玉を飾り付けた。その棺の美しさは語りきれない」という言葉から考えると、棺は木製である可能性が高い。

自動発射する大弓

始皇帝陵の盗掘防止設備の一つに大弓があると言われている。この説は『史記』の「(地下宮殿には)職人によって機械制御の大弓が設置され、勝手に中に入る者があれば自動的に発射される」という記載に由来する。2200年前に自動制御が可能な武器があったのだろうか。もし本当にこのような大弓があったのだとすれば、一体どういう仕組みで制御されていたのか、やはり謎が残る。

秦国にいた西洋人

兵馬俑を発掘した際、大量の人骨が発見された。骨のミトコンドリアから得られた遺伝子データを現代人のデータと照合してみたところ、一部分がヨーロッパおよびアジア西部のペルシア人の特徴と一致した。つまり、2200年前には既にペルシア人が中国の内陸に渡来していたことになる。これが事実ならば、西洋人がいつ、何のために中国に来たのか、興味深い謎の一つである。

頑丈な防水ダム

自然電界法と磁気共鳴法で測定した結果、地下宮殿と推測される範囲の地下に水溜まりはなかったが、地下宮殿以外のエリアで地下宮殿と同じ深さの地層に水溜まりが検知された。これは、頑丈な防水ダムが存在していた事を示している。この巨大な防水ダムは、底部が厚さ17メートルの強い防水性を持つ清膏泥で作られ、上部が厚さ84メートルの黄土で作られている。高部から低部へと浸透するはずの地下水がこのダムによって遮られ、墓室に水が浸入するのを防いでいる。現代式の測量機器など存在しない2000年前に、一体どうやってこのような素晴らしい設計が成されたのだろうか。

(翻訳編集・恵明)

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